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4日間でイタリアを、できるとこまで回ってみようか


憧れに見切りをつけたかった

2023年のある秋の日、台南からの帰途、思い立った。
そうだ、イタリアに行こう。

ただ漠然とヨーロッパに憧れていた、二十歳の頃。
初めて長期滞在したアイルランドは、驚きの連続だった。

水道水をガブガブ飲まない、傘を差さない、出勤は遅く退勤は早い。
そして、綺麗で歴史ある聖堂や建物。
でも、暮らし始めると分かった。
ここに在る生活もまた、日常だと。

バスは時間通り来ない、白人男性から野次を飛ばされる、曇り空が多い。
漠然とした憧れが、小さな失望に変わる瞬間。
ただ、憧れに見切りをつけることで、そこは生活の場=日常になった。

ヨーロッパの一見陽気で華やかな国の、生活を知りたい。
そんな気持ちに突き動かされたのかもしれない。

思い返せば、初日から嵐の予感

今年の2月、一番安い航空券を探した結果見つけたのは、
往路:台北(桃園)経由でミラノ(マルペンサ)
復路:ローマ(フィウミチーノ)からの直行便

機内食でseafoodを選んだら、嬉しい天丼!

トランジットの台北には16時過ぎに着き、次の出発は23時。優に7時間。
ベトナム旅行の長時間トランジットでヘトヘトになった経験から、
今回は初めて出国する(空港を出る)ことに決めた。

それが甘かった。
桃園空港から台北市街まではMRTで一時間近くかかる。

更に加えて、私の準備の悪さが露呈。具体的には

  • 入国カードを記入していない(事前にオンラインでできた)

  • 現金(NTD)を用意していない

  • 悠遊カード(台湾のpasmo)のチャージ不足

悠遊カードの購入はクレジットカードでできるけど、チャージは現金のみ。
そんなの知らなかったよ。
完全にリサーチ不足。敗北。

入国手続に時間がかかり、時刻はもう17時過ぎ。
台北市街で遊ぶ時間が、刻々と短くなっていく。

すっかり気が動転した私は、連れの冷静な発言
「もう空港で過ごせばいいんじゃない?」
を無視し、奇行に走った。

まず、海外キャッシング枠を設定していないのに、
ATMにクレジットカードを突っ込みキャッシングに走る。
できる訳がない。
現金は出てこないまま、クレジットカードだけが出てくる。
利用明細用紙をATMに投げつけた。(本当にごめんなさい)

次に、エスカレーターで到着階まで引き返す。
外貨両替のカウンターに走り、日本で両替したユーロ札を差し出した。

「これを両替したら幾らになる?」
「えーと(電卓ぽちぽち)、300NTD…」
「足りない!足りなそう…」
「まてまて、逆に何NTD欲しいんだ」
「えとえーと、台北との往復を2人分だから、600NTD!これで足りる!!」

手に入れた札束を駅員さんに渡し、切符代わりのコインを手にした。
もはや悠遊カードへのチャージは、どうでもよかった。

苦労も相まり、万福號の刈包が、最高の晩餐に思えた。

60NTD(日本円で約300円)の刈包。八角の効いたちまきも美味しかった

起きたら、そこは…Milano?

夜の機内食をスキップし、目を醒ますと朝を迎えていた。
目下には、ミラノの風景。…のはずだけど、どこか腑に落ちない。
田園風景が拡がっている。
そうか、空港が街中にあるはずないよな…

ミラノ・マルペンサ空港のバス会社のカウンターでチケットを買い、
バスに乗車する。
ここまで、入国審査の長い列に並んでいたら実は短い列でよかったり、
(日本やカナダなど特定の国は、パスポートをかざすだけで通過できる)
入国スタンプを貰い忘れて注意されたりと散々だった。

そして、バスの運転手にも怒られる。
係の人間が案内してから、バスに入れと言われた。もう疲労困憊に近い。

そんな気持ちは、ミラノに着いた瞬間、吹っ飛んだ。

ファサードの美しい、ミラノ中央駅。街中に漂うヨーロッパの空気。
地下鉄の一日券を購入し、時間の許す限り観光した。

最後の晩餐が展示されている、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会。
当日キャンセルにかけていたけど、やっぱり絵は見れなかった。
でも壮麗な教会で、来てよかった…

ミラノのドゥオーモもエマヌエーレ2世のガレリアも美し過ぎる。
連れが一言、
「ディズニーみたいで綺麗だね」
うん。こっちが先だと思うよ。

ジェラートも本当に美味しくて、味もスイーツ系からフルーツ系まで様々。
観光の中国人のおばさまたちは、お揃いでみんなマンゴーを食べてた。

プラダのショウウィンドウ前でジェラートを食す

夜のエノテカは寂しんぼが集まる

その日の午後には高速鉄道に乗り、ヴェネチアに向かう。

直前まで牧歌的な風景が続いていたのに、終点に差し掛かると、急に海が。
ヴェネチア・サンタ・ルチア駅。頭の中で歌が流れる。
サンタ~ル~チ~ア~♪サンタ~ル~チ~ア~~♪
さあ、30分歩いてホテルまで向かおう。

駅からは移動手段が、徒歩か水上バス・タクシーに限られる。
1日券を今使うと、明日まで有効か分からなかったので、歩くことにした。
(乗船から24時間有効みたいなので、実際には使っても大丈夫だった)

360度どこを見渡しても、ヴェネチアの美しい光景。
水の都は、実在したんだなあ。
(天気も良くて、本当によかった)

夜はホテルの近くのエノテカへ。
ワインは3€~で、おつまみが1€~という破格さ。
海辺の街なので、魚介が美味しい。イタリアでせんべろができるなんて…
バカ―ロにも入りたかったけど、眠気が勝り、宿に帰ったとさ。

幻想的な夜のヴェネチア
夜のサン・マルコ広場 寂しんぼたちが、空に向かっておもちゃを投げてた

ムラーノ♪ブラーノ♪

翌朝起きると、相変わらず綺麗な空が拡がっていた。

その足で、船着き場へ。
目指すはヴェネチアンレースで有名な、ブラーノ島。
目的はレースじゃなくて、カラフルな街並み。

ここの住人には、どうしたらなれるんだろう?
そして、誰が家をカラフルに塗り始めたのか。
疑問の尽きないブラーノ島。

本島に戻りランチへ。場所はカフェ・フローリアン。
世界最古のカフェと言われていて、どうしても行きたかった。

この空間に入れることが嬉しくて、
フローリアン♪フローリアン♪
と歌っていたら、おばさまたちが私たちの写真を撮ってくれた。

世界最古のカフェ・フローリアン。フルーツタルトが絶品
歴史を感じる内装

すっかりカフェを堪能し、サンタ・ルチア駅へ。
…ん、何か忘れている気が。
スーツケース!!!

今回高速鉄道での移動は、事前に予約しておいたのだけど、
それが仇となり時間に追われるおわれる。
引き返してスーツケースを取り、そのまま船着き場へ。
乗ろうとしていた水上バスが、目の前で行ってしまった。
やばいヤバい、このままだと出発に間に合わない!!

事情を説明して、どうにか隣りの船着き場に移動できた。
係の人に何回話しても、
「ここの船着き場から駅に行けるから、問題ないよ!」
としか返されなくて、どうなるかt。

違うんだよおォォ列車に間に合わないんだよォォ

細かいニュアンスが伝えられなくて、意思の疎通ができないの辛い。
何で英語の勉強を続けてなかったんだろう…
そんな思いが、頭をぐるぐると駆け巡った。

高速・世界の車窓からRomaへ

それにしても、高速鉄道が異様に速く感じる。運転もどことなく荒い。

到着が遅れたからだろうか。
車内のモニターを見ると、250km/h近く出ている。新幹線か。
アイスの食べ過ぎに加えて、この速度で体調が殺られるかと戦々恐々。

夜も更けた頃、テルミニ駅に到着。
駅を出た瞬間に分かる、治安の悪さ。
地下鉄なんてゴッサム・シティそのもの。
駅の近くのホテルを取っておいて良かった)

ホテルの近くのリストランテで食事。
グラス並々のワインと前菜、それにパスタ。

前菜の野菜が美味しかった

メインの肉・魚料理は頼まなくてもOK。
もちろん、食後のドルチェもエスプレッソも。

リストランテ、トラットリアの境界も、すごく曖昧だった。
ここはリストランテだけど、価格は庶民的で、馴染みのお客さんが
気軽に入っている感じ。
そういう自由さが、好きだと思った。

映画「ローマの休日」でアン王女がアイスクリーム食べてた

翌日はローマの休日の聖地と、パンテオンを巡った。
雨がポツポツと降ってきて、天窓からの光が見れなかったのが残念。
次こそは!(いつ?)

パンテオン。大き過ぎて、全景は撮れず

何かを信じられるっていいな

午後からは、今回の旅・最初で最後のツアーに参加。
世界最小の独立国、ヴァチカン市国に入国。

ツアーじゃないと、何時間もの行列に並ぶ必要があると聞き、
日本から団体ツアーに申し込んだ。

サン・ピエトロ大聖堂のピエタ像

ヴァチカン美術館、サン・ピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂。
全てが美しく、素晴らしい空間体験だった。
写真じゃ何も収められず、途中から撮るのをやめた。

同時に、信仰があるって凄いことだと思った。
言葉にできないほど圧倒される空間を造り、守り続けている。
重要なのは、何を信じるかじゃなくて、どう信じるかなんだと思った。
(映画「天使と悪魔」でも、似たセリフがあったような)

私が旅を続ける理由

さてさて、ここまで色々とトラブルに見舞われたけれど、
一番酷かったのは最終日。

ホテル近くのスーパーにお土産のチョコを買いに行った帰り、
急な嵐が私たちを襲った。

そりゃ、褒められるようなことはしてきてないし、むしろ怒られることの方が多い人生だったけど。
そりゃないでしょってくらいの大雨と強風だった。

昨日、聖なる地に行ったのに。アーメン。
一方で、カトリックの総本山で「寛容な心を持とう」と誓ったばかりなのにお天気で一喜一憂する自分の卑小さに嫌気が差した。

計画を立てているときはワクワクしかないのだけれど、旅なんて、
一度始まればウンザリすることの連続だ。
そういう感情は幾ら意識しても、無くなるものではない。

そういう意味では、
自分のふがいなさを自覚するために、旅を続けるのかもしれない。

そのふがいなさの連続に見え隠れする、美しい景色が見たいのだ。

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