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【掌編小説】リレー小説⑤(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて(きたこさんよりの続きです)

きたこさんよりの続きをかかせていただきました。

 

【①~④あらすじ】
見知らぬ駅で佇む”俺”は、切符はおろか持ち物や記憶もない。
仕方なく歩いた道の先で待っていたのは、知っているはずの知らないような女性。

彼女が問うてくる。
「君、生きたいの? 死にたいの?」
その言葉は苦痛な毎日を蘇らせた。

会社で浴びせられる罵声。ある日を境に仕事へ行かなくなった。それからはぼんやりと過ごす日々。

ふと、ゴミの間に一枚の封筒を見つける。
ウチの会社の封筒だ。中に入っていたのは一枚の切符だった。

コンビニで偶然に出会った会社の同僚の山内。それからその機会を楽しんでいた”俺”
けど彼女は突然にいってしまった。その葬儀に彼女の実家に行った時の切符と同じだった。

 急にあの電車に乗りたくなった。 
目的はなにもない。
山内はもういないわけだし、会社だってもう行く気はない。

 ただ、乗れなかったあの電車は頭の中にずっと残っている。俺は乗りたかったんだよな、最初は。

 会社の封筒に入った一枚の切符。なぜ、会社からこの切符が送られてきたんだろう? 俺は暫くその切符を眺めたあと、洗面所へ行って歯を磨き、髭を剃った。適当な服を選んで着た。やっぱりいつものダボダボのTシャツとカーゴパンツを無意識に選んでいた。

 同じスニーカーを履いた。違うのはポケットに切符を入れたことだ。そして他には何も持たずに家を出た。あれからスマホも見ていない。煩わしいものをわざわざ持ち出す必要もない。財布は一応持っていく。すこし腹も減ってるし。

 家を出てただ風を感じながら歩く。眼に映るままの景色を背景にした自分の姿を俯瞰で感じていた。気が付くとコンビニの前にいた。山内の姿を探す。いるわけもないのに。

 店に入っていつかに山内がくれたブラックサンダーを3つ買った。ひとつを齧りながらまた歩く。行き交う人はいるにはいるけれど誰も俺を見とがめない。それは俺が一番望んでいることだったっけ。

 空がやけに高いと感じた。音がしないと気付く。何故か不安も感じない。俺は生きてるのか死んでるのか分からない。けれど何も不安じゃない。

 遠くから音がし始める。カラカラと水車が回る音だ。
笑顔で手を振る人が見える。この前のあの女性だ。

「おかえり、今度はすこし時間がたったね」
「ただいま、山内」

 俺はなぜか山内と呼んでいた。

「決めたのね、やっと」
「そうなのかな? 俺は何も決めてないと思ってるんだけど」
「でも切符持ってきたんでしょう?」
「ああ、ポケットにいれてあるよ」
「なら決めてるじゃん」

 山内のような女性はぷっと吹き出し、空を見上げた。

「空、高いね」
「そうだよな、さっき俺もそう思った」
「じゃ、行ってきな」
「ああ」
 俺は回れ右をして一本道を辿ろうとする。あの駅までの道だ。
「あ、そうだ」
 俺はさっき買ったブラックサンダーを1つ彼女に渡した。
「覚えててくれたんだ」
 彼女は嬉しそうに包を手のひらに乗せ俺に微笑む。

「じゃあな」
「うん、またね」
「ああ」

 俺は振り返らずに駅への道を歩く。ポケットの中の切符を指で確かめた。

 駅の改札にはあの時の駅員が待っていてくれたように改札に立って俺に目礼をくれた。

「電車にゆられたくなったんですよ」
「良い時間を」
 
 駅員は俺が手渡した切符に鋏をいれた。


逢いたくて いま MISIA


秋様の企画から

ひよこ師匠が立ち上げ①

日出詩歌さんが続き②

ひよこ師匠がまた続きを書かれ③

きたこさんが続かれ④

で、私が続きを取らせて頂きました。

皆さまありがとうございます。さてこれで終わるかな?続くかな?

別ルートもありますのでひよこ師匠の①をご参照ください。


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