わたし、堺くんに恋をしてた

人生にモテ期は三度訪れるらしい

高校3年の夏から秋にかけて
それはやってきた

私にとっては初めてのモテ期

相手は同じクラスで野球部
おまけに優等生の堺くん

体育祭や文化祭で
クラスみんなが一致団結！
そんなタイミングに便乗してか
携帯番号を交換した

いつものことなら番号交換したら
お相手には私からメールを入れる
それが私のマイルール

例外なくその夜もメールを作成したが
送信前に堺くんからメールが来た

異性からのアプローチ
未経験の私にとっては〝違和感〟

優等生の堺くんは
遅刻とは無縁

一方私は……
朝礼の出欠確認ではいつも息を切らし
「呼ばれる前に席についたんでセーフです！！」
ときには上履きだけ教室に投げ込んで
「滑り込んでます！！」

ある日をさかいに
自転車置き場から下駄箱まで
猛ダッシュ中に
堺くんから声をかけられるように

「おはよう！　今日もヤバいね」

いつしか毎日のことになり
一見すれば　二人が一緒に
登校してきたふうになる

優等生の堺くんが
ノートを取らなくなる

「昨日の数学のノート貸して」

居眠りなんてしてるところ
見たこともないのに　
違和感でしかない

家に帰ればメールがくる
今度の部活の試合相手や
背番号もらえたことなど

「応援よろしく！」

お、おぅ……

私が風邪で学校を休んだ日のこと

「あとで電話していい？」

こちらから何かあったのかと電話すると

「今日どうしたの？　風邪？
　明日は来れそう？　今日のノート貸すよ」

堺くんなりのアピールは
私の心を動かして
私から好きになった
と、言わせたい空気

戸惑った私は避けてしまった
10分早く登校するようになり
ノートも書き取れなかったからと
断るようになった

冬になり　堺くんは別の子と
登校するようになった
私と同じグループの親友と

その現実で初めて
私は恋をしていたと気付いたよ
察してもらおうなんてズルいんだよ
言葉にしてほしかったよ

だけどその気持ちを
私も言葉にできなかったから
私も堺くんと同じ

初めてのモテ期は　
ラブレターとは無縁だった

#ほしかったラブレター