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あなたがわたしにくれたもの

自己紹介が苦手な子供だった。
「女の子だから」「お姉ちゃんだから」「子供だから」「高校生だから」「新入社員だから」「30代だから」
言葉でカテゴライズされるのがとにかく嫌で、人とうまくコミュニケーションがとれず、他人になぞ解られてたまるか!という思想の捻くれていて可愛げのない子供はそのまますくすく成長し、案の定友達の少ない学生時代を過ごしていた。

思春期にKinKi Kidsと運命の出逢いを果たした私は「オタク」としての人生を歩み始めた。「KinKi Kidsのオタク」をするのに、特段他人とコミュニケーションをとる必要はなかった。
テレビや雑誌やコンサートで活躍する彼を、自分のペースで応援する。今ほどSNSが普及していない時代に、巨大組織のアイドルオタクをするのは難しいことではなかった。
やがて「オタク」ではない「一般人」にもSNSが当たり前の存在になっても、他人とコミュニケーションをとるためのツールであるSNSに全く魅力を感じていなかったし、私には一生縁が無いんだろうなとすら思っていた。


時は流れ「大人」になった私は、ひょんなきっかけからTwitterを始め暇つぶし程度に時々タイムラインを眺めるようになった。

2017年10月31日。
リツイートで流れてきた写真が目に留まった。
陽気な若者で溢れるハロウィンの渋谷で、ゴミに埋もれるカオナシ。
???
急いでアカウントを見に行くと、#禁断のハロウィン というタイトルで、仮装したメンバーを渋谷で見かけたら誰でも写真を撮れるイベントの告知だったようだ。
アカウント名は「新倉のあ」。
「禁断の多数決」というバンドをやっているらしい。めちゃくちゃ可愛い。なんだこれ。っていうか、なんでこんなに可愛いのにコスプレイベントで全く顔が見えないカオナシなんかやってるんだ??
頭の中が?でいっぱいになって、一気に食指が動いた。だって、「SNSで活動する女の子」って、私を見て欲しい!!んじゃないの??なのになんでイベントで全身隠したり、顔がよく見えない自撮りしてるの??こんなに可愛いのに??

偏見塗れなカテゴリーの概念をブチ壊された私は、その日から彼女のSNSを毎日チェックした。
(毎日チェックするのに、フォローもいいねもリプもしない捻くれぶりを遺憾なく発揮)
彼女は聡明でユーモアに溢れていて、ツイートを見るのが本当に楽しかった。どんな人なんだろう、早く会ってみたい。でも禁断の多数決はそんなに頻繁にライブをしていないようだった。もどかしい。

そしてついにやってきた、2018年3月13日、禁断の多数決第3期ラストライブ。
直前にミスiD2018を受賞したこともあり、彼女の特典会列はとんでもなく長かった。心が折れそうになったけれど、勇気を振り絞って1人でここまで来たのに今帰ったら絶対後悔するぞ!と己を奮い立たせ、待望の初接触。
Twitterでの尖ったキャラを想像して緊張していたけれど、実際の彼女は等身大の「新倉のあ」だった。声が小さくてほとんど目も合わず、あまり会話のキャッチボールが得意ではなさそうで、お互いギクシャクしながら何とか会話をした。ダンスを褒めたら驚きながらも喜んでくれた。
端から見たら大丈夫か?と思えるような光景だったと思うけれど、私はとても楽しかった。
満足して帰路についた。

2018年7月8日。
Twitterで突如発表されたMIGMA SHELTER加入。
ライブアイドルの知識が皆無な私には一体何が始まるのか未知の世界だったけれど、彼女自身が大好きなアイドルグループのメンバーになれると喜んでいて、私も嬉しかった。
しかし蓋を開けるとお世辞にもファンが多い現場とは言い難く、常にフロアもまばらだった。
どうやら彼女が加入したのは初期のメンバー1人を残して全員卒業したグループで、いわゆるグループの危機だったのだ。
そんなことを全く知らなかった私は、初めて触れる世界の全てが刺激的で、純粋に楽しかった。彼女はレイヴ毎に毎回成長した姿を見せてくれたし、何より生き生きとしていた。出来る曲が増える度に一緒に喜んだ。仕事で遅れて現場に到着した私を見つけてニッコリする彼女に、1人で現場に通っていた私はとても救われた。

この感動を、ときめきを、感謝を伝えたくて、私は生まれて初めてファンレターを書いた。
(なんと実は堂本光一さんにも書いたことがない)
渡した当日の帰宅中にあがったストーリーで、彼女がファンレターを泣いて喜んでくれたことを知った。驚いた。気持ちが真っ直ぐに届いた気がした。こんな私の気持ちを喜んでくれて、嬉しくて私も泣いた。
それからも事あるごとに手紙を書いた。私の拙い言葉では伝えきれないし、もしかしたら時には言わなくていいことも言ってしまったかもしれない。それでも伝えたかった。彼女のことを知りたかったし、私のことも知って欲しかった。あんなに自分を隠し続けて、伝えることも理解されることも拒否していたのに。

そう思えるようになったのは、ブラジルちゃん、あなたのおかげだよ。私の一方的な好意を、「優しさ」と受け取ってくれてありがとう。あなたがくれた言葉や表情のすべてが私を強くしてくれたよ。他人を理解したいと思えるようになったし、誤解を恐れずにコミュニケーションをとろうと思えるようになったよ。あなたが繋いでくれたご縁で大切な友達や仲間が出来たよ。「私」という存在を、私が否定しなくていいと思えるようになったよ。
あなたがわたしにくれたもののほんの少しでも、お返しできていたらいいな。










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