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子供のためのオルセー美術館(35)日傘をさして描く/モネ

ためしてみるよ、風景ふうけい


あ、あれはジャン 「こっちだよー」

あのむぎわらぼうし 
いつもの オレンジのリボンつき

マダムの日傘ひがさは、ブルーグレー

ひなげしのはなあかいの、ジャンはもうったんだね。


このまえのおやすみは
ちかくの丘のうえで みどりの日傘だったの。

ずっとながいことってたら、
みどりかさからお日様ひさまのひかりが、いっしゅん
とおりすぎた。

かぜだ!

あおいリボンが んでいきそう。
かさをちゃんとって!

日様ひさまくもがかわりばんこにくる。
そらくさもドレスも ダンスしてるみたい。


いそいでかなくちゃ!


Claude Monet
Essai de figure en plein-air, vers la droite
Essai de figure en plein-air, vers la gauche 1886
クロード・モネ
戸外の人物習作・左向き 
戸外の人物習作・右向き 1886

モネは風景画のために人物画を捨てた。だが彼はこの2枚の絵で人物画に回帰した。
モデルは、印象派コレクター、アーネスト・ホシェデの娘で、後にモネの娘婿となるシュザンヌ・ホシェデである。しかし、これらは肖像画ではない。
画家は、人物と風景の完全な融合を模索していた。
「私はかつてないほどの新しい試み、野外での人物を風景画のようにする作品に取り組んでいる.だけどそれはとても難しいんだ!」

musée d’orsay

モネが選んだ場所は、家から1キロほど離れたエプト川河口の洪水堤防に囲まれた牧草地まで畑を横切って行かなければならない。イル・オルティと呼ばれるこの場所はモネの所有地で、モネはそこに小屋を建ててボートを保管していた。
数日前、モネは閃いた。
シュザンヌが堤防の上にいて、アルジャントゥイユでローアングルでポーズをとる最初の妻カミーユと、その横にいる小さなジャンの姿が一瞬見えたのだ。
「明日また来て、ここでポーズを取るんだ!」
弟のジャン=ピエール・オシェデによると、彼はシュザンヌにこう話しかけたという。これは要求ではなく、紛れもない命令だった。
彼は、この絵の仕上がりに満足できず粘れば粘るほど、モデルのシュザンヌは疲れ切って気絶までした。隣人のペリー夫人の証言によると、彼は怒りにまかせて靴をキャンバスの真ん中に投げつけ、「ひどい傷」を残したという。
モネはこの2枚の絵を売ることはなかった。批判を恐れたのか、満足できなかったのかモネが生きている当時は、展示することさえためらった。

giverny news

お読みいただきありがとうございました。
この大胆な2枚の絵のフレーミングは、モデルは堤防の上に、画家は下から描き、空に向かってモデルを切り取るような配置になり、その効果でシュザンヌは雲の空に浮かび上がっているように見えます。
モネは、2枚の絵の右向きの肖像画(傘を手に持って日に向かっている方)から描き始めたと言われています。
強い風、動く雲やドレス、光の交差、モネの好んだ抜群の環境の中で人物画と風景画の融合をめざし格闘した実験だったのです。
モネの生きている当時は、展示することも拒んだと言うのですからこの絵に満足できなかったのでしょうか。
それでもこの作品は現在オルセー美術館の中でも珠玉の作品の一つになっています。



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