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名前を変えた話

2022年3月28日、戸籍上の名前を変更しました。(ヘッダー画像はそのお疲れ様会の時の辛味チキン)

戸籍上の名の変更ができるのは、「正当な事由」があって、「家庭裁判所の許可」を得られた場合に限られます。(※1)私の場合の「正当な事由」は性同一性障害であることです。(このことの問題は、あとに述べます。)まずは、家庭裁判所の許可を得て実際に名の変更の手続きをする過程を説明します。

名前変更まで① 性同一性障害の診断

戸籍の手続きは面倒です。「正当な事由」があると認められるためには、①性同一性障害の診断書②通称名の使用実績③申立書④戸籍謄本⑤収入印紙と切手 が必要でした。(①②は性同一性障害の場合、③④⑤は名の変更一般)まずは、私がこれらの書類をそろえるまでの流れを説明します。

私は中学生の頃から性別違和に気づいており、初めにカミングアウトした大人であるスクールカウンセラーからの紹介で、高校に上がるころから専門の精神科に通っていました。(これは決して「よかったね」という話ではなく、苦痛で仕方がなかったことですが、それは別の話。ところでこんなスムーズに事が進んだのは、カウンセラーと教員たちに助けを求めてカミングアウトした後、仕方なくそうした相手である両親が上辺だけでも理解を示したことと、公立の中高一貫校で受験がなかったことによるのでしょう。)

およそ1年が経過して、10回程度クリニックに通った後、「性同一性障害」の診断を受けることになります。本来は何も嬉しい話ではありません。私が女性であることはほかでもない私が一番知っていることで、わざわざお金と時間をかけて医者に教えてもらうことではありません。そもそも、性同一性障害というのは病名であり、トランスジェンダーであることと必ずしも一致しません。異なる概念です。(このことは後ろで述べます。)

しかし、この ①診断書 がなければ私は名前を変更することはできなかったので結果としては必要だったのかもしれません。

それから約3年後、私はついに通称名を決めます。ずっと名前を変えたいと思っていたのにも関わらず、両親が(家族を含めて)両親以外の親族にカミングアウトすることを許さなかったことなどが理由で、学校などで通称名を使うこともできなかったのですが、京都に逃げてきてできるようになったためです。(あるいは単に名前を考えるのが難しかったからです。)

2021年4月18日の「【ゆるぼ】 ファーストネーム」というツイートで、新しい名前を募集しました。数件の応募の中からひとつ選び、通称名/名前としました。(たくさんのご応募ありがとうございます。)

その後、②使用実績 をつくるため、amazonやpixivなどの通販でその名前を使用したり、メールや手紙のやり取りで使用したりしました。(こういう情報はインターネットにあふれています。)また、(これは時系列的には次の段落の後のことですが)学生寮に入っているため、そこでの在寮証明書を新しい名前で出してもらったりしました。(私の場合、使用実績は1年程度しかありませんでした。どの程度が十分かは一概には言えないでしょうが。)

名前変更まで② 2か月のスピード勝負

そして2022年2月10日、(名の変更の条件を満たしていることを思い出させてもらって)裁判所に申し出をする(直接的な)準備を始めます。(4月の授業開始までに大学での名前を新しいものにしたかったので、とても急いでいました。)具体的には、③申立書④戸籍謄本 の準備です。申立書は申し立ての内容と具体的な事情等を簡単に書くものです。裁判所のページ(本ページ下部にリンクあり)に様式があります。

戸籍謄本は、本籍のある市区町村の役所のみが発行します。私の本籍は東京にあったので、郵便で取り寄せることにしました。そのためには(私の場合は)戸籍証明書等郵送請求書、手数料(定額小為替450円)、返信用封筒、切手(84円+速達料金290円)が必要でした。戸籍謄本は予めゲットしておくのがよいと思います。

そして、戸籍謄本がそろった後、⑤収入印紙(800円)と切手(470円)を購入して、2月17日に京都市の家庭裁判所に行って窓口で書類を提出しました。この日はすぐに帰されて、のちに電話で「面談」の日を決めると言われるだけです。そわそわした日々を過ごしていたところ、2月27日に家裁から電話がかかってきます。面談の日程調整です。結果、3月16日に面談をすることになりました。(書類提出も面談も平日にしかできないのが厄介なところです。)

家裁の面談では、名前の確認があった後、いくつかのことを質問されました。周りの人は名前を知っているか、これまでも使用してきたかといったものや、犯罪歴を隠したり借金を逃れたりするための変更ではないか…といった事務的な質問など。割と形式的な部分が多い印象です。

そして3月25日、家裁が名の変更の審判結果を郵送してきました。この間、そわそわして毎日郵便受けを確認していました。この後は本籍のあるところの役所に名の変更を申請して、それをもとに学校・職場での名前や身分証明書の名前、口座名義などを変更していくことになります。私の場合は4月から大学における名前も新しいものにしたかったので、急いで変更の証拠を提出する必要がありました。

3月27日に役所に書類を郵送して、4月1日に郵送で(戸籍上の名の)変更の通知が来ました。(ここで失敗をしていて、ちゃんと予め電話で確認して証明書も同時に送ってもらえばよかったのでした。)そこから京都市の役所で住民票に変更が反映されるまでには時間があります。急いでいた私は、毎日ゼストの書類発行センターに行って、住民票上の名前が更新されているか確認しに行く羽目になりました。職員の人に顔を覚えられました。(戸籍は現住所のところにあると便利です。)

そして4月6日、住民票の名前が更新されました。そのまま総合人間学部の教務掛に新しい住民票をもって行って、教務のTさんに変更を依頼しました。(ありがたいことに、大学での改名届は事前に受け取ってくれていたのでした。Tさんに感謝)即日、KULASIS上で名前が変更され、その後PandAでも変更されました。大学のメールアドレスはメディアセンターに行って別で手続きする必要がありました。開講前日に、大学での名前は変更できましたとさ。ちゃんちゃん……ではないのです。

なぜ大学での通称名使用ではダメだったか

この問いが残ります。京都大学には、性同一性障害を理由として(このことにも問題があります)通称名を使用することを認める制度があります。もちろん、この存在自体は2021年夏には京都大学新聞社のホームページ(https://www.kyoto-up.org/archives/2227)で見て知っていたのですが、これを使用しなかった理由があります。ただ、今回は長くなってしまったので、それは後編に回すことにします。近日中に更新できますように。


※1 裁判所「名の変更許可」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_20/index.html#:~:text=%E6%88%B8%E7%B1%8D%E3%81%AB%E8%A8%98%E8%BC%89%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F,%E5%BD%B9%E5%A0%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E5%95%8F%E3%81%84%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82


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