借金玉『発達障害サバイバルガイド』について

今日は借金玉『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社、2020年)を紹介したい。

「発達障害」というワードが目に飛びこんでくるが、実際は万人向けに書かれていると思う。

借金玉さんは、この本を読む人の同一性を何よりも重視する。

あなたがあなたである、ということには最大の価値をおくべきだと僕は心から思っています。

借金玉『発達障害サバイバルガイド』ダイヤモンド社、2020年、315頁。

この本が各章の始めに原則を提示してから各論に入るのは、このためだと思う。というのも、この工夫によって、読者は自分の実情に合わせて、ハックを考え出すことができるようになっているからだ。

この本が生きているという事実性に徹底的に寄り添っていることによって、読者は単なる技術としてハックを受け止めることができる。

逆に言うと、筆者には、この本が恐ろしく観念的な類書の向こうを張るものであるように見える。

筆者の印象に過ぎないが、昨今の自己啓発書は観念的すぎて、今身体をもって生きている事実性をないがしろにしている。現在性からかけ離れた理想像(もちろん単なる観念!)の前ではすべてが二次的だと豪語する言説には、食傷気味だった。そんな筆者にとって、本書は新鮮な体験だった。オススメです。

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