【エッセイ】万年筆
万年筆に興味を持ったのは、中学生の頃だ。
三度の飯より本が好きな文学少女だった私は、万年筆を、持っているだけで名作を生み出せるマストアイテムと勘違いしていたのである。
ドラえもんの秘密道具か何かと錯覚していたのだと思う。
鬼に金棒的なものというか。
作家を夢見ていた私は小遣いを握り締めて近所の文房具屋に走り、インクを補充する必要のない万年筆を買った。
『カクノ』に代表される入門万年筆がなかった頃の話だ(あったけど私が知らなかっただけなのかも知れない)。
人生初の万年筆だが、残念ながらメーカーなど細かい事は覚えていない。
ただ、初めての万年筆を持てた嬉しさで、勉強そっちのけで自己満足の塊というべき下手糞な小説を、夢中で書いた事だけは覚えている。
使い捨てタイプなので、あっという間にインクが切れて使えなくなってしまった。
机の引き出しにしまったそれを度々見ては、私はいつか10万円以上する万年筆で次々と傑作を生み出す作家になるのだと本気で思っていた。
当然だが、そんなに未来は来ていない。
万年筆と本を愛する気持ちだけは残った。
『カクノ』や無印良品で購入した万年筆で、日記や読んだ本の記録を日々綴っている。
10万円単位万年筆を握る日は、来ないだろう。
今、憧れているのはプラチナ万年筆のセンチュリーというモデルの万年筆だ。
べっこうときんぎょの2本が欲しいと思っている。
万年筆購入店で購入する日を望みに、節約と貯金にに励む日々を送っている。
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