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Tara Westoverさん自伝"Educated"を英語の原書で読んだ感想

アメリカで話題のTara Westoverさんの自伝"Educated: A Memoir"を読みました。まだ日本語版は出版されていないので、電子書籍Kindleで英語で読むことに挑戦しました。

ひとことで言うと、この本とても読み応えあります。チャプター数は40もあり、ボリュームもしっかりめ。内容も考えさせられるポイントが多かったです。

ただ、英語の文章は完結で、複雑で長い文が少なく、読みやすいです。難しい専門用語や特殊な用語も少ないです。例えば私はハリーポッターも好きなのですが、魔法用語(Muggle=マグル、魔法使いから見た人間を指す言葉、等)が出てくるので、意外と読みにくいなと感じました。この本にはそういったストレスはありません。

洋書を読むことにこれから挑戦してみたい方にもおすすめです。

この記事では、日本語訳がまだ出ていない"Educated"が気になっている方向けに、本の紹介と私の感想を書きます。

日本語訳が出たらぜひ多くの方に読んでいただきたいですし、洋書を読むことに挑戦してみたい方にはとてもおすすめなので、ぜひ読んでみてください。

なお、ネタバレを避けたい方は、「本の紹介」まで読んでいただき、「感想」からは読まないようにしてくださいね。


1.本の紹介

まず、読んだ本はEducated: A Memoir。
Tara Westoverというアメリカ人女性の自伝です。
Educated は「教育を受けた状態」のこと。A Memoirは、「回顧伝」「自伝」を指します。

アメリカ・アイダホ州の山あいの敬虔なモルモン教徒の家庭で生まれたTara。
彼女の両親はいわゆる「毒親」。
政府に頼らずに生きていくがモットーな父。子どもたちの出生届は出さず、命に関わるような怪我をしても病院には行かず、学校へは行かせない。サバイバリストで、世界の終わりに備えて銃を揃えている。
そんな父の言いなりな母は、免許を持たない助産師として働いていて、ハーブ療法で一旗揚げている。兄弟は7人。

家を出て大学へ行ったひとりの兄の影響で、Taraも教育を受けるべく17歳で大学へ行くことを決心する。教育を受けることで、新しい世界へ導かれ、博士号を取得するまでに。

彼女が自分自身の人生を振り返った回顧伝です。


Educated: A Memoir (by Tara Westover)

Kindle電子書籍なら950円で購入できます。(2021年5月3日現在)

こんな良質な洋書が1000円以下で購入できるなんて、嬉しい時代になりましたね。


2.感想(ネタバレあり)

Educatedを読んで私自身が感じたことや印象に残ったシーンの一部をご紹介します。

・毒親ストーリーがあまりにも壮絶
途中で少し読むのがつらくなるほどでした。
例えば、家族みんな、普通では考えられないほど何度も命に関わるような怪我に見舞われます。しかし、Taraのお父さんは病院へ行かず、家族も病院へ行かせない。「お母さんが手当てしてくれるから家へ連れて帰りなさい」などと指示します。


また、怪我の描写やお父さんの発言にいやな気持しがするだけでなく、Tara自身の行動ももどかしく感じました。お父さんの言いなりになってしまったり、大学進学後も休暇の度に実家に帰る(帰らなきゃいいのに…)。なぜこのTara自身の行動がもどかしいかというと、私自身もこの気持ちが良くわかるからです。

親というものは多かれ少なかれ「毒親」要素があると思いますが、私の親も毒親です。親はおかしいのでは、もはや自分とは価値観が違うのでは、と気づきつつ、それでも実家に帰って距離を縮めては失敗し、やはり関わらない方がいいと考え一定の距離を保ってみて、、、と、複雑な心境を繰り返しています。

なぜ実家に帰ってしまうのか、なぜ親と決別しないといけない心境なのか、痛いほどよくわかってしまい、歯がゆかったです。

・Taraが予防接種を予約するシーン
医療は受けずに育ったTaraですが、大学進学後に自分で予防接種を予約するシーンがあります。これまではなんでも親に判断やアドバイスを仰いでいたTara(兄弟が怪我をしたときでさえ、救急車呼ぶのではなく、まずお父さんに電話をしていた)。でも、このときは、自分で本で知識を得て、自分で考え、自分で行動しました。教育を受ける醍醐味は、だれかが言っているからこうする、ではなく、自分で情報収集し、自分の頭で考える力を身に着けることなのではないでしょうか。

・ホームスクーリングについて
Taraの親は「政府を信じない」という価値観であったため、Taraはホームスクーリング(学校へ行かず家庭で学習すること)で幼少期を過ごしています。主に勉強はお母さんが教えていたのでしょうか、そんなシーンが出てきます。

この本だけ読むとホームスクーリングは多様な価値観に触れることができない「悪」、のような印象を受けますが、アメリカのホームスクーリングについて調べてみると、実際にはポジティブな側面もあるようです。

まずは人数。2012年のNational Center for Education Statisticsによると、5歳から17歳の義務教育期間のこどもの総数53,446,000人に対し、ホームスクールを行っている子が177万人位います。3~4%程がホームスクーリングをしていることになります。近年ではもっと増えているというデータもあります。

また、知人によると、アメリカではホームスクーリングは割と一般的で、ホームスクーリングのためのサポート体制(相談窓口)や大学進学のための仕組み(検定試験合格すれば大学進学資格が持てる)等制度も整っているようです。

また、アメリカ在住の別の知人のお子さんは、状況に応じて学校とホームスクーリングの両輪で対応しています。かなり柔軟です。勉強したいこと(プログラミング)の時間を確保するためなんだそうです。ホームスクーリングの欠点のひとつになりうる「他人とのコミュニケーション」については、コミュニティに積極的に出向いたり、ボランティアに参加したりして、コミュニケーションの場を作っているのだとか。

学校教育と、ホームスクーリング、それぞれメリットデメリットがあると思いますが、こどもたちが複数の選択肢を持てて、自由に自分に合う方法を選べる社会になったら素敵だなと感じています。


3.最後に


洋書"Educated"の感想をつづりましたが、いかがでしたでしょうか。現時点で日本語版はまだありません。英語で原書に挑戦したい方はぜひ日本語版が出る前に英語で読むことに挑戦してみてください。(早く情報が得られることが、原書で読む醍醐味のひとつですね)

Educated: A Memoir (by Tara Westover)

日本語版が出ていました! (2021年7月追記)

Educatedを読まれた方、また、ご質問がある方は、感想や質問などコメント欄に頂けますと嬉しいです。




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