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地域おこし協力隊はカオスサーチャーである

意味分かります?
分からないですよね。説明しますね。

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こんにちは。椎葉村の野良ファシリテーター、うちむらです。
地域おこし協力隊として椎葉村に移住して3年目になります。

ぼくが参加しているさとのば大学で、『zoomオンライン革命』を書いたことで有名になった田原真人さんの講義がありました。

本の影響で、ぼくは田原さんについて「めっちゃzoom使いこなしてる人」というイメージしか持ってなかったのですが、実は彼のバックグランドは粘菌の研究カオス理論だそうで。

今回の講義もカオス理論についてだったのですが、その内容がいい「揺さぶり」を自分に与えてくれる内容だったので、地域おこし協力隊という制度とカオス理論を絡めて振り返りたいと思います。


カオス。

なんか、中学2年生ぐらいまではカッコよくて使いたいけど、そこを超えてくると迂闊に使えないワードトップ3ぐらいに入りそうな、そんな魅惑的かつ危険な単語です。

地域コミュニティのことを学ぶさとのば大学で、なぜカオス理論についての講義があるのかというと、プロジェクトを進めていくにあたって、カオス理論の概念を知っているのと知らないのとでは、ものごとの捉え方に大きな違いが出てくるからです。

よく、「○○のこと知らないなんて人生損してるわ~」という言い方をしますが、そんな感じです。自分の人生に新しい視点や価値観を与えてくれるもの。

カオス理論については、田原さんがnote記事でも解説しているので、そちらもご参照ください。

https://note.com/masatotahara/n/n480d9e11dcf4

ここから、3時間の講義の内容を超短縮して説明してみます。
間違ってたら誰か教えてね。


カオス理論のポイント①未来なんて予想できるわけない

「将来のことが分からなくて不安」という漠然とした悩みを持っている人、大勢いると思います。

でも、安心してください。カオス理論的には、そもそも誰も未来のことなんて分からないのです。だから、将来のことが分からないのは当たり前で、もしそれが分かる人は預言者と呼ばれる人ぐらいです。笑

じゃあなんで未来が予測できないのかというと、それを示す「二重振り子」という実験があります。

▼二重振り子で観測されるカオス現象
https://www.youtube.com/watch?v=25feOUNQB2Y

1つ目の振り子は分かりやすく左右にリズミカルに揺れるんだけど、その先に連結された2つ目の振り子はぐるぐると回転したり、回る向きを途中で変えたりと、勝手気ままに動いています。この動きは予測することができませんよね。

そして、たとえ同じ二重振り子を再び同じように動かそうとしても、微妙な力加減の違いによって動き方は全く変わってきます。二重振り子の動きは毎回変化し、再現することができない=未来を予想することができない、ということです。

他には、バタフライ効果なんかは聞いたことある人もいますよね。あとはあれ、天気の週間予報。明日や明後日ぐらいならスパコンで計算してそこそこの的中率で天気予報を出せるんだけど、1週間後となるとまず当たらないですよね。1週間後の天気予報も予測できないのに、将来のことなんて分からなくて当然だと思いませんか?



カオス理論のポイント②単純化して分かったつもりになりがちだけど、社会って実際は複雑で割り切れない

「ほにゃららを3分で解説!」とか、「ナントカのポイント5つ!」とか、今の世の中って、スイッチを押せばポンとかえってくるような表現がありふれていて、わかりづらい複雑なものは敬遠されているんじゃないかなと思います。

でも、その分かりやすさって実は、複雑な全体像のほんの一部を切り取って近似しているだけで、現実は全体が相互に作用しているから割り切れるものじゃないよ、ということです。

イメージ図はこんな感じです。

コメント 2020-07-10 224743


学校ではこういう風に教わってきたけど、


2コメント 2020-07-10 224743

社会に出てみたら実はこうだった、みたいな。

「未来像はきちんと描いていないといけない」という一般的な価値観から「なんとなくわかったつもりになっている自分」に気付いて、世の中って実際は複雑だから分からなくて当たり前だよね、コントロールできるわけないよね、という視点を持てると、なんだか肩の力が抜けて楽になれる気がします。



カオス理論のポイント③ カオスな時期と秩序ある時期の両方がある

とはいえ、世の中は常にカオスで予想がつかない、というわけでもないそうです。

たとえば、ボールの中心に向かって落とした水滴。

ボールに当たったあとに水滴がどの方向へ移動するかは予想できませんが、ボールに当たるまでの水滴の軌道は容易に想像がつきますよね。落下するだけなので。

この場合の、「ボールに当たるまでの予測可能な水滴の軌道」が秩序ある時期、「ボールに当たってからの予測できない水滴の軌道」がカオスな時期です。

もうひとつ例を挙げると、江戸時代って250年以上続いたわけですよね。途中の200年ぐらいって、江戸時代まだまだ続くなー、というのが容易に想像できたんじゃないかと思います。これは「江戸時代が続くことが予測できる」秩序ある時期ですね。

でもそこから黒船がきて、明治維新が起こって、世の中が短期間で一気にグワーッと変わっていったわけです。いわゆる「動乱」の時代、これがカオスな時期ですね。

二重振り子についても、実際は「どっちに振れるか分からない」というカオスな時期は瞬間的なもので、あとは慣性に従って動いています。

こんな風に、「そこそこ予測できる期間」と「全く予測できない期間」が交互にくることで、全体として「未来は予想できない」という結果になります。

そして、「全く予測できない」カオスな時期には、色んなことが活発に試行錯誤されます。これをカオスサーチといいます。自分の可能性を模索する期間、誰にでもあると思います。ん?というかこれ、地域おこし協力隊のことじゃない?というのが今回お伝えしたい一番のポイント。


地域のカオス係、地域おこし協力隊

地方って、よっぽど活気があるところ以外は基本的に「秩序ある期間」であることが多いと思います。変わらない人間関係で、みんな同じような仕事をして、毎年同じ祭りをして。変化が得意じゃないために、日本全体の変化に対応できていない、というのが、今の衰退する地方の現状ではないかと。

そして、ここに一石を投じているのが、「地域おこし協力隊」という制度ではないかと思うわけです。

地域に人脈がなくて、だいたいお金もなくて、でも周りとは違うことをしたいと思っている協力隊諸君は、時にやらかしたり応援されたりしながら、最長3年という任期の中で色んな試行錯誤を行います

その結果として地域に新しい仕事=価値を生み出す人もいれば、途中で煙のように消えてしまう人もいるわけですが(笑)、これって変化が得意ではない地域において短期間でカオスサーチしているということで、協力隊はみんなカッコよく「カオスサーチャー」と名乗ってもいいのではないかと。

あとは、協力隊ってほぼ全員が地縁のない土地への移住者であり、ジョブチェンジもしています。これって、協力隊1人1人の人生においても、地域おこし協力隊の任期中は自分の可能性を広げるカオスな時期、ということですよね。なので、地域におけるカオスと自分の人生におけるカオスと、協力隊は二重の意味でカオスな役割を持っていて、もはや地域とわたし混沌隊という名前にした方がいいのでは(笑)なんか違うか(笑)


右足に秩序、左足にカオス

そんなわけで、地域おこし協力隊は地域の可能性を模索するカオスサーチャーとしての役割を担う、という共通認識が関係者の間でできれば、もっとお互いを活かし合える関係性が築けそうだなーと。みんなが片足にカオスを履いて、もう片足にはきちんと秩序も履いて、モードを切り替えながら歩んでいけるような、そんな地域を目指して。

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