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厚生労働省の不支給要件に風俗営業等関係者等が記載されている件について

問題になった支給要領

厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症による小学校休業対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)支給要領」の一部項目がセックスワーカー等への差別ということで問題になりました。

問題になったのは以下のpdfファイルです。

11 不支給要件
支援金は、上記の規定にかかわらず、次の(1)から(5)までのいずれかに該当する者に対しては支給しない。
(1) 風俗営業等関係者(次の①又は②に該当する者をいう。)
① 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第4項に規定する接待飲食等営業(同条第1項第1号に該当するものに限る。)同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業(同条第6項第1号、第2号若しくは第3号、第7項第1号、第9項又は第10項に該当するものに限る。)等を行っている事業所において、a.接客業務、b.異性の客に接触する役務に係る業務、c.性的な行為を表す場面若しくは衣服を脱いだ人の姿態を見せる業務又は性的好奇心を満たすための交際・会話を希望する者に対する音声による会話の業務に従事する者。
② 支援金の支給に係る発注者において、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第4項に規定する接待飲食等営業(同条第1項第1号に該当するものに限る。以下同じ。)、同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業又は同条第13項に規定する接客業務受託営業(接待飲食等営業又は同条6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む者の指揮命令を受ける場合を含む。)を内容とする営業に限る。)を行っている者。ただし、同条第4項に規定する接客飲食等営業又は同条第13項に規定する接客業受託営業(接待飲食等営業)を行っている事業主等であって雇用調整助成金の支給を受けようとする場合や、接客飲食等営業であって許可を得ているのみで接客営業が行われていない場合又は接客営業の規模が事業全体の一部である場合を除く。
(2) 暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)
(3) 破壊活動防止法の暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体等に所属している者
(4) 局長が審査に必要な事項についての確認を行う際に協力すること、支援金の不正受給が発生した場合、支給を受けた助成金の返還等について、承諾していない者
(5) 本支給要領に従うことについて、承諾していない者

つまり、個人事業主やフリーランス向けに支援金を出すけれど、保護者が風俗関係者や暴力団員であれば、小学生の子供がいても「新型コロナウイルス感染症による小学生休業対応支援金」が受けられないというものです。

行政の差別

さいたま市でマスク配布措置に朝鮮幼稚園が除外されて問題になった件は記憶に新しいと思いますが、今回のこの措置も、それと同様の問題を孕んでいます。

まず、この支援金は「新型コロナ感染症対策」であり、子供の世話を行い、契約した仕事が出来なくなっている子育て世代への支援というのが目的になっています。
この措置では風俗関係者等は除外されていますが、その場合、その子供はどうなるのでしょうか。仮に親御さんが収入がなく、蓄えもない場合は、新型コロナ感染症のリスクがあっても、それを押して働き続けなければならないのでしょうか。それは保護者の仕事で受けられる社会保障に差をつけ、新型コロナ感染症対策としての穴を作り、ひいては子供に対して不平等な取り扱いを是認するものになっているように思いました。明確な差別です。

同様に、さいたま市のマスク配布の問題では学校の区分が違うだけで特定の幼稚園にだけマスクを配らないというものでした。
感染症対策と銘打っていますが、全員にマスクを配らない感染症対策とは一体何なのでしょうか。当該幼稚園から感染者が出て広がるリスクを考慮すると、感染症対策として明らかに不備であり不手際だと私は考えます。

目的を見失った措置。
なんのための支援制度かと思わざるを得ません。

メディアや団体、個人の反応

この問題については各メディアや団体、個人でも問題視する声や、批判の声が上がりました。


一見すると分かりにくい間接差別

今回の行政による差別は、いわゆる間接差別と呼ばれるものです。
保障やセーフティネットが必要な人々をふるいにかけて、条件を満たさない人をその保障やセーフティネットの埒外にするというものです。

コトバンク 間接差別
表面上は差別がないが、運用に当たって差別を生じていること。例えば、全国転勤を条件にする、家族手当・住宅手当などの支給対象を世帯主に限るなど。
[補説]平成18年(2006)の男女雇用機会均等法の改正で、性差別の一つとして間接差別の禁止が規定されている。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
(https://kotobank.jp/word/%E9%96%93%E6%8E%A5%E5%B7%AE%E5%88%A5-183764)

これについては、金明秀さんが分かりやすく説明しています。

戦前からずっと、行政が差別をするときは、直接的に排除するのではなく、特定の条件を満たした人だけ対象にする(そして差別対象は誰もその基準を満たさない)という形で間接的に排除してきた。こういうのを「間接差別」といって、例えば英国では直接差別と同じく違法となっている。
でも日本では、行政がやる間接差別を、裁判所が合法だと追認してきた歴史があってね。だから、行政としては、「差別したいときは間接差別にしておけばオッケー」という文化みたいなものができあがってる。

この手法は往々にして女性や、風俗関係者(セックスワーカー)、外国人といった社会的に弱い立場にある方を雇用や社会保障や福祉から遠ざけてきました。

平等に職を得る機会があること。困窮していたり、何がしかの助けがいる誰もが平等に社会保障や福祉サービスにアクセスできること。支援から零れないこと。

それが何故かこういう形で不平等・不公正に運用されています。
現在の社会システムは是正されて然るべきです。

中には不正受給を「懸念」する人もいるかもしれませんが、元々そういった受給の手続きは煩雑かつ不正受給そのものが困難な仕様になっています。間接差別などで「ふるいにかける」ため、日本人すら時に社会保障や福祉サービスから零れ落ちる現状で懸念するのは非常にナンセンスなことだと私は思います。

これは在日コリアンへの差別でもある

「破壊活動防止法の暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体等に属している者」というのは、「朝鮮人は除外する」と正直に書けば差別だと騒がれてしまうから、こういう規定を持ち込むことで間接的に除外するという意味。職業差別を行う者は民族差別も行う。

厚生労働省のpdfファイルの「11 不支出要件」の「(3) 破壊活動防止法の暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体等に所属している者」という項目は、朝鮮総連もこれに当てはまります。
しかし、朝鮮総連は元々、日本にいる在日朝鮮人の互助会として朝鮮との往来や朝鮮語での生活サポートをするための組織であり、「破壊活動を行った疑いがあるもの」という曖昧な理由で破防法の対象に含まれており、不当なのもだと私は考えています。

衆議院議員河村たかし君提出公安調査庁に関する質問に対する答弁書
五の1について
 朝鮮総聯は、破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)に基づく調査対象団体である。

五の2について
 朝鮮総聯は、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)に基づく調査対象団体ではない。

五の3から5までについて
 公安調査庁としては、朝鮮総聯の前身組織である在日朝鮮統一民主戦線が、これまでにダイナマイト、火炎びん等を使用して傷害や放火を引き起こすなど暴力主義的破壊活動を行った疑いがあるものと認識しており、北朝鮮とも密接な関係を有していることから、今後の情勢いかんによっては、将来、暴力主義的破壊活動を行うおそれのあることを否定し得ないものと認識している。
(http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b166475.htm)

今回の厚生労働省の不支出要件において、この条件では在日コリアンの保護者も支給から除外される可能性があります。
セックスーカーの方と同様に、在日コリアンの方々にも支給して然るべきでしょう。

誰もがいざという時に、差別なく平等に、金銭の不安なく、子供の傍にいてあげられる。
そういう社会になって欲しいです。

声を届けよう

もしもこの問題について関心を持って、どうにかしたいと思って下さったならば、首相官邸や厚生労働省の意見フォームに、あなたの意見を届けて下さると嬉しいです。一緒に声を上げましょう!

首相官邸フォーム

厚生労働省フォーム


🍋参考



今まで頂いたサポート、嬉しすぎてまだ使えてません(笑) note記事を書く資料や外食レポに使えたらなと思っていますが、実際どう使うかは思案中です←