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原点回帰 #04

コレクションと呼ぶにはおこがましいけど、昨年3月に逝去された坂本龍一氏のオリジナル・アルバムをCDで少しずつ買い集めている。セルフカバーやライブ盤を含めると結構な数の作品数になるので、先ずは録音スタジオで制作された、いわゆる〈スタジオ・アルバム〉に的を絞って。所有欲というより、坂本龍一氏のこれまでの音楽活動を振り返ってみたいと思ったことがきっかけ。

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これまでにリリースされた坂本龍一氏のオリジナル・アルバムは全部で19枚。何度かレコード会社を替わっていらっしゃるから発売元のレーベルは8社に上る。ご自身が設立に携わられたからなのか、最晩年の所属レーベル『 commmons 』やYMOの活動休止直後に所属されていた『MIDI』から発売のアルバムは今も新品を手に入れることができる。あとはYMOの活動と並行して出されたソロ・アルバムも同様。先日、仕事帰りに立ち寄った勤務先近くの〈タワレコ〉にも在庫が並んでいた。新しいアルバムから過去の作品へと順番に遡っていきたいので今回は買わなかったけど。

問題はそれ以外のレーベル4社からリリースされたオリジナル・アルバム10枚。その中には、最初に手に入れた『BTTB』も含まれているが、〈タワレコ〉のオンラインショップによると、半数以上が廃盤。新品として手に入れることのできるアルバムであっても、すでに廃業しているレコード会社からリリースされた作品もあるから注意が必要だ。今後は、中古CDを扱う通販サイトや、街の中古レコード店をこまめに巡るしかなさそうである。

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今は最後から二番目のアルバム『async 』を繰り返し聴いている。コレクションとしてはもう少し時代を遡ったところまでのアルバムを手に入れてはいるが、ただ単に音楽を消費するのでなく、ひとつひとつを深く味わいながら過去へと帰還したいから、他の作品は開封もせずラックにしまってある。本作のタイトル” async “とは日本語で「非同期」という意味。全てが同期されていく時代の流れにあえて背を向け、非同期を求めようという想いが込められている。

実際にこのアルバムの中では、いくつかの楽曲が非同期を体現していて、音楽を聴いているというよりも、窓を揺らす風の音や、明け方まで降り続く雨の音といった、自然界の音に触れている感覚に近い。何に対しても一定の規則性を見出そうする日常。それによって凝り固まった体と心。そんな緊張状態から少しずつ解放されてゆく時間の経過がとても心地よく、夕暮れ時から夜に聴くとより一層深く心に沁みる。さあ今宵も、事物そのものの音に想いを馳せよう。




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