頭にくるぜツイギー

90年代の日本語ラップにヤラれ続けたアラサー男の回顧録

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90年代の日本語ラップにヤラれ続けたアラサー男の回顧録

最近の記事

ageHa閉鎖に思う

まずはコチラから。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000049856.html 2022年1月をもってageHaが閉館とのこと。ついに来てしまったかという気分だ。振り返れば、思い出のクラブの数々が、閉館に追い込まれてきた。代官山AIR、池袋BED、渋谷VUENOS…本当に時代というのは残酷なものだ。新型コロナは、確実にクラブカルチャーを死に追いやっている。私はナイトクラブは、好きではない。しかし、そこでしか生まれ得

    • 悲劇の天才 BES⑤

      2018年「CONVECTION」、 2019年「VIRIDIAN SHOOT」、(BES & ISSUGI名義) 2020年「Purple Ability」、BES & ISSUGI名義) 2020年「LIVE IN TOKYO」、 2020年「BES ILL LOUNGE Part 3 - Mixed by I-DeA 」 これまでの沈黙が嘘かのようなハードワーキングぶりである。盟友であるI-DeAやISSUGIのバックアップも大きいが、何より本人のモチベーショ

      • 悲劇の天才 BES④

        2016年、ちょうど「フリースタイルダンジョン」の影響で、フリースタイルブームに火が点きはじめた頃だ。獄中のBESはひっそりとアルバム「UNTITLED」をリリースした。これはEMINEMでいう「Relapse」のような位置づけにある作品だと自分は思っていて、復帰作というより、復帰への足掛かりとなった作品といった方が正確であろう。若いヘッズはかつてのBESの勢いを知らないだろうから、大して話題にはならなかったが、ファンとしては嬉しかった。ただ、吉報はこれだけではなかった。20

        • 悲劇の天才 BES③

          2009年の逮捕から約3年。2012年にSCARSのライブで、久々に公の場に現れたBESのラップには、かつての勢いはみられなかった。薬物の影響か、体はむくみ、何よりも活舌が悪くなっていた。そして、1曲を終えるごとに、肩で息を切らし、体力が著しく低下していることを伺わせた。残念ながら“あのBES”はもう戻ってこない…その日のパフォーマンスを見て、そう感じざるを得なかった。ただ、誰よりも本人が、己の不出来に、忸怩たる思いがあったに違いない。 “いつからか空の逆を眺め歩いた 気付

          悲劇の天才 BES②

          2007年。まさにこの時のBESは破竹の勢いであった。当時、MCバトルの最高峰の大会だったUMBで準優勝し、シーンでの地位を固めつつあった。そして、2008年、満を持してリリースされたアルバムが「REBUILD」である。 しかし、ようやく出せたアルバムのタイトルが「REBUILD」!?と思った人は中身を聴きこめばその理由が良く分かるはずだ。ドラッグに侵され、葛藤するBESの様子が、これでもかというくらい精緻に描かれている。このアルバムを出した翌年の2009年、BESは、LU

          悲劇の天才 BES②

          悲劇の天才 BES①

          はじめてBESのラップに触れたのはSEEDA「GREEN」の1曲、「Path」であった。「結局money,pain,切れないチェーン 煙の向こう終わらないgame 」粘性のある独特なフローと色気のあるけだるい声質に、「この人、本当に日本人なのか!?」と一聴して驚かされたものだ。 ただ、その時はフローがイケてるラッパーとしか認識してなかった。しかし、BESの凄さは、フローだけに留まらない。それを決定づけたのがI-DeAのアルバムに収録された1曲「One Day」だ。 「あれ

          悲劇の天才 BES①

          ”CCG”の先見性

          SEEDAとDJ ISSOが組んで2000年代のヘッズを夢中にさせたミックスCDシリーズ、それが”CCG”こと「コンクリートグリーン」である。MONJU, SD JUNKSTA、鬼など現在も一線級のラッパーをいち早く世に送り出すなどその功績は計り知れない。いま聞いてもその”目利き”には驚かされる。どの音楽雑誌よりもその耳は確かであった。そして、リリースペースも当時としては速かった。なので、常に2006年から2010年ごろまでSEEDA周辺の動きは目まぐるしかったし、追いかけて

          驚異の19才 LEX

          今月、リリースされたWAVYを迎えたLEXの新曲だが、率直にいって、「こんな軽快なラップも出来るのか」と改めてLEXの引き出しの多さに驚かされた。LEXと言えば、自分の中ではkZmのアルバムの1曲「27 CLUB」で見せたような超絶変態フローのイメージだったからである。 わずか19才にしてここまでフローとリズムがずば抜けているとは・・・これぞアンファンテリブルである。間違いなく日本の10代で一番ラップが巧いのではないだろうか。ワンバース聴いただけでそう思わせる魅力が、LEX

          驚異の19才 LEX

          小さな韻職人に耳を貸すべき

          KTCCで一番、ラップが巧いのは間違いなくLITTLEである。ファンキーグラマー好きならこの意見に賛同してもらえると思うが、LITTLEのラップが、年を重ねても尚、輝きを放っていることには感動を禁じ得ない。そして、それを証明する場を与えてくれたMUMMY-DとRED BULLには最大級の賛辞を送りたい。とにかく韻を踏むという行為を、日本でこれほどまでに突き詰めている人はそうはいない。音の響き、語感、リズム、フロー、ビートとの整合性・・・全項目において、痒い所に手が届くMCだと

          小さな韻職人に耳を貸すべき

          SCARSの衝撃とハスラーラップ

          「SCARS IN THE BUILDING!」渋谷GAMEで初めて見たSCARSのラップは今でも忘れられない。それくらい当時としてはスキルフルで、彼らの出で立ちも日本人離れしていて、何より独特のノワールな雰囲気がたまらなく格好良かった。とりわけBESのラップが鳥肌モノで、日本語なのに、英語のようなスムーズなフローと抜群のリズム感で、アフリカ系の客すらも「あのジャパニーズは本物だ!」と唸るレベルであった。そして、2006年はまさにSCARSの年で、どこのヒップホップ系のクラブ

          SCARSの衝撃とハスラーラップ

          舐達麻の人気と現代社会

          去年から今日にいたるまで確実に一番、再生しているアルバムは「GODBREATH BUDACESS」だ。GADの美しいビーツに、生き様の滲み出た舐達麻の3人の振り切ったリリック…はっきり言って虜になった。きっかけはニート東京での、バダサイのインタビュー。「気合い入ってんなぁ」と思い、すぐにYouTubeで「Life Stash」のPVを再生したら、ブーンバップな音に、サグなメンタリティが伝わってくるヒリヒリとした歌詞、どことなく90年代の空気を感じられて、気づいたら夢中になって

          舐達麻の人気と現代社会