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SCARSの衝撃とハスラーラップ

「SCARS IN THE BUILDING!」渋谷GAMEで初めて見たSCARSのラップは今でも忘れられない。それくらい当時としてはスキルフルで、彼らの出で立ちも日本人離れしていて、何より独特のノワールな雰囲気がたまらなく格好良かった。とりわけBESのラップが鳥肌モノで、日本語なのに、英語のようなスムーズなフローと抜群のリズム感で、アフリカ系の客すらも「あのジャパニーズは本物だ!」と唸るレベルであった。そして、2006年はまさにSCARSの年で、どこのヒップホップ系のクラブにいっても"SCARSもどき”のクルーが大量発生していた。この状況を当時、ブログを精力的に更新していたSEEDAは”空前のハスラーラップブームっす”と揶揄するような内容を投稿していたと記憶している。令和の今、トラップビートに乗せて、USよろしくのハスラーラップをかますラッパーはごまんといるが、個人的には、本を正せば全てSCARSに回帰するといっても過言ではないと思う。いずれにしてもいわゆるハスリングとは無縁の世界に生きている自分にとっても、SCARSのラップは、ギャング映画を見た後のような爽快感があった。この勢いが永遠に続いて欲しいと願ってもいた。しかし、傑作だったファーストアルバム「THE ALBUM」をリリースして程なくて、SCARS周辺ではトラブルが頻発した。メンバーの不仲、逮捕、薬物問題、ビーフ・・・とにかくトラブル続きであった。そして、それは確実に作品のクオリティにも暗い影を落としたように思う。つい先日、STICKYが逝去してしまったが、もうあのやさぐれたラップを耳に出来ないのかと思うと、自然と気持ちも落ち込んでくる。何よりもうSCARSがフルメンバーで揃うことは永遠にないのである。A-THUGはYouTuberに。BESはコンスタントにリリースはしているが、薬物の後遺症でかつてのキレの良さが戻ることはない。BAY4Kは脳出血の後遺症と今も戦っている。SEEDAは相変わらず最高にラップは巧いが、しばらく目立ったリリースはなく、最近、目にしたインタビューではバイトで生計を立てているということだった。自分にとって川崎はBADHOPではなく、SCARSである。それだけに何となく現在のメンバーを取り巻く環境については侘しく思っている。

昨年、久々にフルメンバーでSTARSCARのPVがアップされたが、あれがフルメンバーが揃った最後の音源になると思うと、なんだかとってもやり切れない。死ぬ前にもう1度、いまいるSCARSのメンバー全員が心血を注いで作り上げたアルバムが聴きたいと切に思う。

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