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悲劇の天才 BES④

2016年、ちょうど「フリースタイルダンジョン」の影響で、フリースタイルブームに火が点きはじめた頃だ。獄中のBESはひっそりとアルバム「UNTITLED」をリリースした。これはEMINEMでいう「Relapse」のような位置づけにある作品だと自分は思っていて、復帰作というより、復帰への足掛かりとなった作品といった方が正確であろう。若いヘッズはかつてのBESの勢いを知らないだろうから、大して話題にはならなかったが、ファンとしては嬉しかった。ただ、吉報はこれだけではなかった。2017年、出所し後の、彼の等身大のラップを、アルバム「THE KISS OF LIFE」で堪能することが出来たからだ。

そのラップにかつてのキレはない。そして、一度、失った名声は、二度と取り戻せない。それでも時計の針を前に進めようと、絞り出された男の言葉は、例え不格好であっても心に沁みる。ドラッグの誘惑は一生、付き纏う。それを知っていたからこそ、またすぐに表舞台から姿を消してしまうのではないかと思っていた。だがBESは違った。この後、立て続けにリリースを重ねていき、確かに自分の言葉を紡いでいった。







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