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生死 攻防 忘却

飛び降り経験者にはありがちなことなのだろうか?
前後の記憶がごっそり抜け落ちている。

故にここからは医師や家族から聞いた話も交えて書こうと思う。

私は本当に"ある日突然"飛び降りた。

前日に嫌なことがあった訳でもなく、むしろ落ち込んでいたところに大好きな紅茶を元旦那から貰っている様子が自分のSNSで確認できた。

前の記事でも書いた通り、自宅5階からの落下。
昼間だったので、当時無職だった私は家に1人。
だが、落ちた時に音がしたのだろう。他の住民が通報して救急車で搬送された。本当にパァンとか鳴るのか?
全く覚えていないが、救急隊員の質問にはハキハキ答えていたとのこと。アドレナリンドバドバだった説濃厚。

搬送先はICU

隣県で仕事中だった元旦那もすぐ駆けつけてくれた。
輸血同意書は事後承諾だったらしい。搬送時点での診療計画も氏名が"フメイ-(記号)"となっており、そういうパターンもあるのね、と謎に納得した。

それからは手術を重ね、生死を彷徨っていた。

頸椎・腰椎・踵骨……骨折した箇所は多くあるが目立つのはこのあたり。その他、くも膜下出血・気胸など、上から下まで負傷のオンパレードだ。
どんな落ち方をしたら脳も背中も踵も負傷するのか一生の疑問である。

くも膜下出血の治療は詳しい話を聞いていないので端折らせてもらう。

腰椎はあと少し折れる箇所がズレていたら半身不随だった。惜しい。
搬送後すぐだったので、着ていた服は引き裂かれて脱がされていた。
自殺するなら最後は大好きな服を着て……という話はよく聞くが、一命をとりとめ同じようなことになったら虚しいのだろうなと思うなどした。

踵骨の手術の際には問題が起きた。
内臓の何かしらの値が異常で、手術すると危険だという状況に。
そのまま手術されることなく、保存的治療(骨折した部位を固定して繋がるのが待つ方法らしい)を行うことに。
高所から落下して逝ってしまった骨が綺麗にくっつく訳もなく、退院後も苦労している。

上記2箇所の経過と生活への影響はまた別で書こうかなと。

更に重大なことが起きた。
原因不明の呼吸停止と高熱だ。
この時が一番危なかったらしい。高熱は42℃にも達し、低体温療法が行われた。その療法についてはよく知らないが、床よりもキンキンに冷やされていたのだろう。

それから2週間ほど経った頃、ようやくICUを出ることに。搬送当日から約1ヶ月も経っていた。

一般病棟で私が入ったのは精神科ではなく整形外科。意識はあり会話も可能だったが、私の記憶が鮮明になるのは少し先の話。

ICUと違いスマホが使えるので、元旦那が持ってきてくれた。
退院後にLINEの履歴などを見たが、違和感のある文章しか打ち込めていない。"たね(まねふ」?ま、"のように完全に錯乱しているものではなく、"元気ではないですが元気でないということもありません。"といった感じ。退院後しばらくはネタにされた。
解除して開いたLINEで"スマホのパスコードなんだっけ"とか聞くくせに、20桁以上に設定したAppleのパスコードは打ち込んで課金していたりした。人間の脳は不思議だ。

SNSでの奇行はまだいい。問題は病棟でのもの。
髪の毛を乱暴に抜いたり、ナースコールも押さずに「お水をください」と病棟に響き渡る声で叫んだり、家族から渡された購買用の1万円を早々に使い切って看護師に諭吉をおねだりしたり。覚えてないところで恥ずかしいことをしないでほしい。
それらが原因で精神科の閉鎖病棟へ移された。残念ながら当然。

それから次の手術までの話はあまり聞かない。強いて言うなら、たびたび失禁するのでオムツ代が嵩んだとのこと。病院を通してのレンタルに変わるまでは元旦那が病院まで持参していたらしい。消耗品なのにレンタルと呼ぶのは何故なのかとよく考える。

残っている記録によると4月27日、MRI検査で正常圧水頭症の診断がおりた。
水頭症を簡単に言うと、あたまのなかのおみずがたくさんあっておかしくなっちゃうよ〜、というもの。たびたび失禁を起こしていたのもその症状だった。

そして5月6日、頭をかっぴらいて水頭症の手術が行われた。
増えすぎた髄液を下腹部に流すための機械(シャントと呼ぶもの)を頭に入れましょうというもの。
シャントを入れた箇所は少し膨らんでおり、事情を知らない人が触るとゾワッとするような手触りだ。手術のために剃髪された部分は元の長さに戻るまで1年近くかかった。何より悲しいのは傷跡に無駄毛が生えないのと同じく、その付近だけ少し禿げていること。
毛量を失い健康を得て、手術は無事に終わった。
ここまでの手術代だけでいくらかかったのかはあえて聞かなかった。きっと素晴らしい制度がどうにか安くしてくれているのだろう。

手術後、全身麻酔が切れ目覚めた時から、私の記憶は確かなものに。

思ったより長くなってしまったので、入院編(記憶有)は次回へ持ち越しとする。ではまた。

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