【なるには記事】『いたみ専門医療者へ』への道しるべ
えばらです。
以前、『からだ・運動器の痛み専門医療者』と言う名前だった慢性疼痛関連専門資格が制度が更新され、『いたみ専門医(医師)・いたみ専門医療者(コメディカル)』にアップデートされました。コメディカル対象の資格『いたみ専門医療者』について書き直した記事をアップしなおしています。
このnoteを読んでいただいている医療従事者だったら、慢性的な痛みについてどんな勉強をしたらよいかと探している方も多いと思います。系統的にまとまったプロセスがあれば、学びって一気に進むんですよね。
以前から慢性疼痛をまんべんなく学び、臨床でまんべんなく症例を経験してきた私は、まんべんなく慢性疼痛を経験してきた理学療法士だと思っています。慢性疼痛の学会発表や論文執筆や資格を取得する中で勉強を蓄積していったところが大きいのです。
そのような学びに役立つnoteを書こうと思ったときに、取得した『からだ・運動器の痛み専門医療者(現・いたみ専門医療者)』の試験を受けたことを思い出しました。
非常にバリエーション豊かで、痛みについてまんべんなく(しつこい)出題されていて歯ごたえがありました。その一方で、資格取得まではいくつかのハードルがあり、とっつきにくいのが特徴です。
本日は資格取得までの長い(?)道のりと、資格取得後の変化について書きます。せっかくの学びの機会ですので、このnoteを骨の髄までしゃぶりつくしてください。
余談ですが…
以前に私が痛みの運動療法として勉強し、主に臨床で選択しているDNSアプローチの記事を書きました。
この記事、予想以上に好評価をいただき驚いています。情報を探している人にとって、単にワードをぐぐるググるだけではたどり着かない部分を意識しました。
つまり経験した人が持つ、多面的な情報の集合体を意識した結果、まとまったプロセスをご紹介できたようです。
書籍、講習会、動画サイトなど情報のソースがひとまとまりに整理してあると、今後の情報検索の羅針盤にもなるので、ネットでの舵取りがしやすいです。DNSを調べたい人にとっての、『モヤり』を解消するお手伝いができたかなと思います。
売り上げ100万部を突破した書籍『FACTFULLNESS』の中で終始語られている、
世の中は常にいい方へ変わり続けている
という事実。情報の取り方も本当に変化しています。知っている人が、どんどん提供できるのもSNS時代の利点ですので、学んだことは書いていきたいと思っています。
痛みに携わる医療者必携の資格
さて、本題に戻ります。
『いたみ専門医療者』とは?
以前は認定NPOいたみ医学研究情報センターが認定していましたが、現在は日本いたみ財団がその役割を担っています。
「いたみ専門医・専門医療者」とは、慢性疼痛医療における集学的治療の推進のため、新しい知見を含めた慢性の痛みの知識と技術を修得した、痛みの治療を適正に行える医療スタッフを養成することにより、日本における疼痛診療の向上を図ることを目的に一般財団法人日本いたみ財団が認定する専門医療者制度です。 昨今、慢性疼痛や慢性痛という言葉が浸透し、医療システムが変わっていくなかで、患者さんと医療の在り方も変わりつつあります。
これまでNPO法人いたみ医学研究情報センターでは、専門性の高い臨床で研究されてきた方を「からだ・運動器の痛み専門医療者」として認定する制度を実施していましたが、慢性疼痛で困っている多くの患者さんをサポートしていくという社会的な要請に応えるため、2021年度より「いたみ専門医・専門医療者」と「いたみマネージャー(PAM)」の認定制度を設けることとしました。
いたみにお困りの方に寄り添い、アドバイスを行うことが出来る医療従事者を増やすことで、予防・治療の充実を目指し、社会へ貢献をしてまいります。 HPより引用
<↓HP↓>
まずこの資格を取得できる対象者についてみてみましょう。主に病院で勤務する医療者で、具体的には、(いたみ専門医:医師、歯科医師)、看護師・保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、公認心理師、薬剤師、臨床検査技師です。
以前のからだ・運動器の痛み専門医療者に比較して、取得できる職種が限定されたとの、言語聴覚士、臨床検査技師が追加されたのが変更点です。
※ちなみにいたみ専門医療者の取得可能な職種から外された方には、いたみマネージャー資格もあります。
取得までの2つの方法
ここからはリハビリセラピスト向けに話を進めていきます。
いたみ専門医療者の資格取得のフローは、 以下の2つの方法があります。
①痛み関連学会を経由せず、日本いたみ財団会員として申請する
②痛み関連学会(日本運動器疼痛学会、日本口腔顔面痛学会、日本ペインリハビリテーション学会)等の学会会員として申請する
2通り4パターンの資格取得方法があります。今回①については省略します。
いたみ専門医療者になるには、前述の通り何らかの団体に所属する必要があります。
ただ痛みに興味ある専門職が受験したらゲットできる資格ではないので、ハードルやや高めになります。
特に、
痛み関連学会に入会する
学術活動をしてきていないセラピストにとっては、ここがメンタルブロックになりやすいです。認められている痛み関連学術団体は、
・日本運動器疼痛学会
・日本ペインリハビリテーション学会
・日本口腔顔面痛学会
になります。
慢性疼痛の患者さんと関わることも多く、まだいずれの学会にも登録していない方でリハビリ職でしたら、
・日本運動器疼痛学会
・日本ペインリハビリテーション学会
どちらかへの登録をお勧めします。
資格取得だけではなく、学会への参加や臨床に役立つ最新・最先端の情報が得られることで、一石二鳥です。
受験資格取得まで~前提~
学会に登録し無事正会員になった方、おめでとうございます!受験資格取得までには以下の手順を踏んでいきます。
理学療法士が受験すると仮定し、私が辿ったパスをご紹介しながら合格~資格取得までの整理をしていきます。
私は『日本運動器疼痛学会』に入会しており、その時に資格取得しましたので本学会での基準やパスを記載していきます。
日本運動器疼痛学会の『いたみ専門医療者資格審査基準』は
1.当学会の正会員になって3年以上(申請書提出時)経過していること。
2.正会員として当学会の教育研修講演に3回以上参加していること。
3.正会員として当学会で1回以上の発表(共同演者可・過去5年以内)をしていること。
4.日本いたみ財団 アドバンスコース研修会を受講していること
※アドバンスコース研修会受講のためには、ベーシックコース研修会、
または慢性疼痛診療研修会に受講済みであること
1.当学会の正会員になって3年以上(申請書提出時)経過していること。
『げっ!3年?、学会参加!、学会発表……だと…』
そう思った方は正直者、池から女神が現れるでしょう。
試験を受けるまで3年待たねばなりません。そしてその間に学会に参加し、教育講演を受講しないといけません。そして、さらに高いハードルが。共同演者でもいいので演題の発表を1回は行わなくてはいけません。
ローマは一日にしてならず!、考えるより感じろ!
なのです。
私は設立当初より日本運動器疼痛学会の正会員でしたので、特に問題はなかったのですが、改めて資格取得のために入会するのには、それ相応の気力体力が要求されます。
2.正会員として当学会の教育研修講演に3回以上参加していること。
ちなみに学会の教育講演に参加すると
このような証明書をもらえます。学会の教育講演に参加するとポイントになることはそれなりにありますが、このような賞状で頂けるのは初めての経験でした。
このような細かいところからすごくちゃんとしている資格なのです!!
そうそう、大事なことを言い忘れました。学会参加した時にもらえるネームカードについている領収書や学会参加証は必ず取っておきましょう。
私の場合、資格制度ができる前の学会参加分の認定が受験資格取得のカギになったのですが、参加証をとっておいたことがとても役に立ちました。
3.正会員として当学会で1回以上の発表(共同演者可・過去5年以内)をしていること。
学会の正会員になって、3年が経過しその間の学会の教育講演に参加。1回以上学会発表をした方は、また次のステップに進みます!
学会発表については各自で頑張ってください!
4.日本いたみ財団アドバンスコース研修会を受講
学会の活動と並行して、日本いたみ財団アドバンスコース研修会を受講しておきましょう。
ただ注意なのが、アドバンスコース研修会受講のためには、ベーシックコース研修会、または慢性疼痛診療研修会(厚労省の管轄)に受講済みであることが必須だそうです。
やはり資格取得までの道のりは長く時間と労力が要求されますね。
ワークショップはそんなに頻繁に開催されていないので、なかなか大変です(コロナ禍ではなおさら)。
ベーシックコース受講代わりになる、厚生労働省の慢性疼痛診療体制構築モデル事業の講習会は、以下の画像がその受講終了証になります。
私は痛みセンターがある横浜市大で受講しました。
この事業自体は厚生労働省が予算を組んで行っているので、参加は無料でした。それを財団の講習会に読みかえてもらうという作業を事務局に連絡してやってもらいました。この辺りは制度が変わっているので是非お問い合わせください。(ちなみにこの作業にも事務手数料が掛かりますのでご注意ください)
読み替えてもらった証明書が↑こちらです。
(財団発足以前のものです)
ここまでやって晴れて、『いたみ専門医療者』の認定試験の受験資格を得ることができます。ここまでも大変でしたね!!お疲れさまでした。必要書類を送り証明されたのちに、受験申請書を事務局に送付し書類審査を待ちます。
いたみ専門医療者認定筆記試験
コロナ禍以前は対面での試験でした。
試験問題は非常にバリエーション豊かで勉強しないと解けないものだと思います。痛みのメカニズム、脳機能、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、非器質的疼痛、ICD-11の慢性疼痛7分類の各論、薬物療法、などなど。
リハビリセラピストでしたら運動器疼痛に勉強も臨床も偏りやすくまたその分野であれば自身もあると思います。しかし、それだけでは得点を狙いにくいくらいに疼痛科学・疼痛臨床のかなり広い分野から出題されます。
参考図書として
と、
が、提示されています。
臨床にも役立つ慢性疼痛の基礎が詰まった本ですので、購入しておくとよいと思います。
現在だと新しいガイドラインや。
疼痛医学もあるので勉強できる書籍もそろってきています。
私は、『痛みの教育コアカリキュラム』の方を試験対策として熟読しました。
資格取得までのフロー・合格・認定申請
そして、試験に合格すると晴れていたみ専門医療者になれます。
受験料として 10,000円、合格後には認定申請料として別途10,000円が必要です!!!結構かかりますね!
画像は私の合格証明書です。
苦労して取得した資格なので、自慢するように職場の壁に掲示してあります。
この資格を持つ意義…は今後に期待
さて、いたみ専門医療者になった私は、取得前と何か変わったでしょうか。
今んとこ、何も直接的な恩恵は受けていません。うわさによると、有資格者はあんなことやこんなことができるようになるかもしれない、と言われています。このあんなことが今後の私に重要であると確認していますので今後に期待しながら努力を続けています。
まずは資格取得過程で系統的に痛みについて学べることが、皆さんのフィールドで役立つであろうことを期待しています。
希望をすれば、日本いたみ財団・認定NPOいたみ医学研究情報センターのホームページに所属先(HPリンクも希望すれば可能)と名前を掲示してくれます。
日本いたみ財団への移行と資格更新について
私は認定NPOが管理していた、からだ運動器の痛み専門医療者から一般社団法人日本いたみ財団に移行したときの移行措置を使っていたみ専門医療者になっています。
からだ運動器のいたみ専門医療者をお持ちの方は、3年間の移行期間の間に、一定条件を得て申請することにより、いたみ専門医・いたみ専門医療者になることができます。
申請条件
1.からだ運動器の痛み専門医療者の認定証の写し
2.からだ運動器の痛み専門医療者取得後の医療者研修会の受講症または講師
3.過去3年間における痛みに関する学会発表(筆頭演者1演題、共同演者2演題)または原著論文1篇(筆頭または共著)
1は必須、2・3はどちらか一方
是非からだ運動器のいたみ専門医療者資格をお持ちの方は早め更新をしておきましょう。2022年4月1日~30日が申請期間です。
まとめ
からだ運動器の痛み専門医療者の取得方法について書きました。利点については(慢性疼痛診療算定系に有利なことが起こると信じて)今後に期待しましょう。取得の過程で痛みの勉強が進むのは間違いありません。
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