事故物件を「安いから借りる人」の偽らざる事情

人が亡くなってしまった部屋を貸す側の苦労

全国の事故物件を地図上に表示するインターネットサイト『大島てる』を運営する、大島てるさんに話を聞いた。

「事故物件に住みたい」わけではない
「最初にはっきり言うと、自分の保有している物件が事故物件になるのはどう考えても損なんです。損をどれくらい小さく抑えるかに、知恵を絞ることはできますが、得することはありえません」

大島さんいわく、まず大前提としてほとんどの人は

「事故物件には住みたくない」

と思っているという。

人が亡くなる以前と同じ条件で貸し出しをしていると借りる相手を見つけることができないため、やむをえず特典をつけることになる。一番多いのは「家賃を下げる」という特典である。

・1年間に限り家賃半額
・毎月2万円値下げ
など、それぞれの物件で値段が下げられる。

「つまり事故物件に住みたいという人は、事故物件に住みたいから住むのではなく、

『家賃が安くなるから』

住むんですね。

事故物件に住むのは気持ち悪いけれど、年間24万円も安くなるなら我慢して住んでやろう……とそういう気持ちなわけです」

確かに、

「むしろ高い家賃を払ってもいいから、人が事故で亡くなった物件に住みたい」

という人はいないだろう。

家賃を下げる以外にも、特典をつける場合があるという。

例えば

・楽器不可の物件だったが特別に許可する
・ペット不可の物件だったが特別に許可する
などだ。

また、それまでは公務員など固い職業の住人を選んでいたところを、水商売の住人、外国人の住人も受け入れる、などの妥協をするケースもある。

「大家にとっては、それらの妥協は当然損です。売るにしても、買い叩かれてしまう。だから自分の保有する物件が事故物件になってしまった人に

『落ち込むなよ。今はどうやら事故物件に住みたい人は増えているらしいよ』

と語ってもなんの慰めにもならないんです」

貸す側のデメリットしかない事情
デメリットは、貸した後も続くことがあるという。値段を安くする、ルールを甘くすることによって、借り主の「民度が下がる」ことがある。

「お金にルーズな人」「はじめから踏み倒そうとしている人」が集まってくる場合もある。

空き室のままにしておくのは損だから、家賃を下げたのに結局家賃は払ってもらえなかった。しかも家は汚れてしまい価値が下がる、という泣きっ面に蜂の状態になってしまう。

傍若無人な借り主が嫌で、他の部屋の住人が出ていってしまう、というより最悪なケースもある。

そのような状態になるのが嫌で、事故のあった1室を、誰にも貸さずに開かずの間にしてしまった大家もいる。

「『事故物件であることを正直に伝える』と、デメリットしかないんです。だから、大家や不動産業者の中には『事故物件であることを伝えない』という選択をする人もいます」

大島さんいわく、自分が保有している物件が事故物件になってしまった場合の対応は、大きく分けて2通りあるという。


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