【随想】小説『スペードの3』朝井リョウ
さてと、
とりま、
朝井リョウ。
ゆとり世代の代弁者。
『スペードの3』を読みました。
通称「スぺ3」…大貧民(もしくは大富豪)で単独でジョーカーより強い最強カード。
『何者』よりも後の作品なんですね。
2014年の作品。
最初は、とっつくいテーマかなと思っていましたが、
読んでみると意外や意外、いつも通りの朝井節で、
共感と毒のオンパレードに、一気読みすることができました。
物語は3章立てで、有名劇団のかつてのスター「香北つかさ」を取り巻く登場人物3人の視点がそれぞれ描かれる。
1人目は、ファンクラブのリーダー。
2人目は、ファンクラブの新メンバー。
そして、3人目は、香北つかさ本人。
第1章が150ぺージ、第2章が100ぺージ、第3章が100ぺージくらいの分量だ。
関連し合う3つの不連続な短編といった印象。
3人の視点から描かれるといっても、
同じ出来事をそれぞれの視点で描く「羅生門形式」ではなくて、
それぞれの人物が、自らの人生において、重要なカードを切る(決断する)瞬間にフォーカスする。
そのカードを切る瞬間までの思考や心の流れが、とても自然に作りだされていくので、ついつい読む手が止まらなくなってしまうのだ。
まさに「共感の悪魔」のなせる技である。
朝井リョウは、若者の今をリアルに描いてくれる作家だと思って安心して読んでいたが、
もしかしたら「自分と他人の間に存在するすべての差」というパンドラの箱をこじ開けたい暴露系なのかもしれないと思った。
『桐島、部活やめるってよ』では、青春の箱。
『何者』では、就活の箱。
『正欲』では、多様性の箱。
以後気をつけながら読まなければ。
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