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【随想】小説『家族八景』筒井康隆

人間の毒を煮詰めたスープのような小説。
清らかな人間、一人も出てこないのか!と一人でツッコんでしまった。

目の前の人の心をすべて読みとってしまうお手伝いさんの七瀬が、
8つの家を転々として移り住む連作短編小説。

相手の心をのぞくことができるテレパス(精神観応能力者)なら、
良い面、悪い面両方のぞけて、人間の繊細さを活写できたはずなのに…
イヤミスに近い読後感だった。

テレパスが実は主人公の気のせいで、相手の心をのぞけたつもりになっていたという展開だったら面白いのにな、と読みながら思った。
相手の心を読んでいたつもりが、それは全部主人公の主観(妄想)であったというどんでん返し。

でも、そういうオチにならないことは途中で分かってしまった。
何話目かの話で、テレパスが家族に影響を与えてしまったのだ。
ただの部外者として家族を客観的に観察しているだけなら、妄想オチも使えたのになぁ。

これは、リアリズムの中にテレパスというファンタジーを一つだけ入れて、日常を違った角度から楽しむ?(異化させる)小説なのであろう。


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