【随想】映画『ヴィデオドローム』『裸のランチ』/TV『SIX HACK』
『ヴィデオドローム』と『裸のランチ』を見た。
クローネンバーグの映画を立て続けに見た理由は、「たまたま思い立った」だけなのだが、見終わってからSNSを周回していると、いやはやどうも、それだけの理由ではないような気がしてきた。
というのも、クローネンバーグの新作(『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』)が8月に公開されるらしく、さらに『裸のランチ4Kレストア版』なるものが、ちょうど今上映されているというのだ。
あまりにもタイミングが良すぎる。
こんなタイミングよく、クローネンバーグの旧作(1983年と1991年の作品)を見ようなどと、自発的に思うだろうか。
おそらく知らないうちに、SNS等でクローネンバーグの文字を目撃していて、つい目に入ったクローネンバーグの映画を、さも自らが望んで手に取ったかのように錯覚したに違いない。
これこそ、まさに『ヴィデオドローム』ではないか。
『ヴィデオドローム』を見た人間は、脳をハックされ、幻覚と現実の区別がつかなくなり、何者かに意のままに操られてしまう。
いつのまにかクローネンバーグに脳をハックされた私は、クローネンバーグの映画を見るように、まんまと突き動かされたというわけだ。
これぞマーケティングの罠。いともたやすくインサイトを刺激されてしまった。
そうえいば、最近放送された『SIX HACK』というTV番組(YouTubeでも公開されている)が、『ヴィデオドローム』によく似ていた。
「過激な思想=ニューマン」にハックされたテレビ局の総合演出が、徐々に幻覚と現実の区別がつかなくなり、制作していた番組が途中で打ち切りになってしまうというモキュメンタリー作品だ。
作りは全然違うが、テーマやストーリーテリングが、驚くほどリンクしている。
制作者が影響を受けているか気になるところだ。