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日比谷線ーホームタウンエクスプレスー【地下鉄の車窓からvol.3】

東京メトロ日比谷線は下町の北千住から都心の南東を回って中目黒に至る路線である。どこか銀座線とたどるルートが似ている気がする。シンボルカラーはシルバー。

さて日比谷線のこれまでに取り上げた銀座線や丸の内線との大きな違いは、端の北千住から東武線を通って埼玉県の北東部の東武動物公園や南栗橋まで電車が直接走り抜けていくことだろう。

先の2路線は都心の街々をこまめに回る都市内交通の色味が強かったが、日比谷線から後の路線は郊外に伸びる鉄道からの乗客をダイレクトに都心もしくは都内の点対称に位置する街へ運ぶという役割も担うことになる。

幼少期の私は東武の沿線に住んでいたので近所まで銀の帯を巻いた日比谷線の電車がよくやってきていた。そういう意味では郊外に住んでいた自分にとって最も身近な地下鉄路線だったかもしれない。

そんな時気になるのは電車のおでこに表示されている行先である。

ご存知の方もいるかと思うが東武線は北関東の各地から漏斗状に収束して東京都内では先述の「北千住」や「浅草」といった主に都心から少し離れた北東部のターミナルに到着する。したがってほとんどの電車の行先もそうした駅が多いのだが日比谷線に直通する電車の行先は「中目黒」である。

東京に遊びに行くといっても主に東側だけで事足りていた木甘少年にとって「中目黒」とは未知の街であった。というか未だに中目黒に行ったことがないので未知の街である。雑誌でたまにレストランが紹介されているので落ち着いた街なのかなと考えている。地下鉄の終点のほとんどは山手線のメジャー駅から少し突き抜けたところにあることが多いので知人でもいない限りなかなか部外者には用事がないのだ。

しかし逆に都心の利用者にとっては東武線に向かう電車の行先もピンとこないのだろう。「北越谷」「北春日部」「南栗橋」となんだか方位がついた駅が多い。そして「東武動物公園」では一見楽しげだが名前だけではどのあたりにあるのかが想像できないはず。

日比谷線を皮切りにその他でも郊外へ向かう電車と地下鉄が複雑に結びついた今、ホームで待つ我々は次々と見知らぬ駅の名前を提示されて否応なしにその街の風景を想像させられる。

ドアが開いたときホームに放たれる空気は馴染みのない向こうの街から運ばれてきた空気だ。そうやって地下鉄は広大な関東平野の各地の空気を西へ東へ運び循環させる装置になったのだった。

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