とりあえず、バタフライ・エフェクト
朝:
乗り換えのホームに辿り着くと、ちょうど電車が入ってきた。
いそいそと電車に乗り込む通勤客にまぎれて、制服の小学生とママがいた。
「急がなきゃっ!」
小走りなママの後ろを、パタパタと追いかける男の子。
「カポっ」
ホームの滑り止めにひっかかったのか、ローファーが片っぽぬげた。
けれど、男の子はママを追うのに一生懸命すぎて、靴を置き去りに……
(ふっ シンデレラみたいだな)
閉まる前の扉から半身だけだし、靴を回収する。
「脱げてるよ」
「あれれっ?!」
驚く男の子と、あわててお礼を言うママの声を背中に、車両を移動する。
(車掌さん、靴を拾うのを待ってくれていたかも。ちょっと電車を遅れさせたかな?)
昼:
飲み物を買いに社外に出る。
通りの少し先のマンションから、小型犬と飼い主さんが出てくる。
どうやらワンコは一歩も歩きたくないようだ。
「しかたないな」
抱き上げる飼い主さん。
静かに抱えられているワンコ。
安心しきった顔をしている。
(ふっ 猫みたいに、ちょっとだけ
ベロがでちゃってる)
微笑ましく、しまい忘れたベロを眺めていると、
こちらに気付き、ハッとした顔をするワンコ。
口を閉じ、降りて歩こうとする。
「歩くの?」
驚く飼い主さんと、シュッとした顔で歩き出したワンコとすれ違う。
(ワンコも、油断しているところを見られるのははずかしいのだろうか……?)
夜:
家に帰ると、子が夏休みの課題である「課題図書のPOP作成」をしていた。
データで作っていたのだが、思ったよりも工夫をしているし、気の利いた紹介を書いている。
やるじゃないか……
「ここまでやったなら、もう少し作り込みなよ。
もっと物語のイメージにあうように文字の
色を変えて。それから、この飾りの
パーツをあと5ミリくらい下げてみなよ」
「そんな細かいことー?!」
文句を言いつつも……
なんだかんだちゃんと修正する子であった。
とりあえず、今日は大きなことのない1日だった。
でも……
ちょっと待たせた電車が、
ちょっとすれ違った犬が、
ちょっとレイアウトを動かしたPOPが……
バタフライエフェクトのように、何かにつながる……かもしれない……
なんて考えると、それなりにいい日だったように思えてくる。
と、1日が終わったみたいな雰囲気をだしたが、今日はこれからサッカーのスペイン戦だ。
とりあえず、まだまだ、今日は終わらないのだ!!
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