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小説 『碑文─エピタフ─』

熱風がラシアの砂漠へと吹きぬけてゆく。雨はふらない。褐色ににごった雨が、カイコスの谷間をけがしたその日から、泉から湧き出る水は、永却ににごりきったままであった。はるかなるエーゲ海にそそぐミコノスの河は涸れつき、ひあがった河床小動物や魚たちの屍体のはなつ腐臭が風に舞った。

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