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塩澤幸登短編小説集

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まだ、二十代の若いころに書いた、発表する機会のなかった小説を、ひとつにまとめてみました。
それぞれ、表現方法もテーマも小説としての構成も違いますが、自分が若かったころ、どんなことを考え、な…
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記事一覧

小説 『オイディプス王の町』

削られ、きめ細かく磨き上げられた、なめらかな大理石の表面が、雨風に晒されて、ざらざらにな…

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塩澤幸登
3年前

小説 『酒場にて〜再会〜』

「しばらくね、うふふ」 「なんだ、いたのか」 「もどってきたのよ、あなたは元気そうね」 「…

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塩澤幸登
3年前
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小説 『岬にて〜くちづけ〜』

八月の日の光が、この小さな入り江、めぐりあいにふさわしい明るい海に満ちあふれ、膚に熱く、…

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塩澤幸登
3年前
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小説 『ある夜のTarzan』

タアザンは夜道を歩いていた。月光がジャングルの獣道を照らしていた。熱帯の植物たちは、高湿…

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塩澤幸登
3年前
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小説 『碑文─エピタフ─』

熱風がラシアの砂漠へと吹きぬけてゆく。雨はふらない。褐色ににごった雨が、カイコスの谷間を…

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塩澤幸登
3年前
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小説 『クラゲたちよ、クラゲたち』

こちらはわたしが大学4年の秋、いまから52年前に書いた短編小説。得体の知れないものだが、フ…

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塩澤幸登
3年前

小説 『霧の夜』

         A  揺れ動く人波の中で感じる苛立ちは一向に消滅しそうになかった。間の抜けた顔をした群衆の中で、僅かに疲労を感じる網膜にネオンサインの鮮明な原色が痛ましく生々しかった。  今、自分に最もふさわしいものは沈黙であろう。大道の売卜師がわたしを呼び止めようとする。占いは無用。未来について語る虚妄は追憶の虚妄であるに等しく虚しい。          B  ――もう、八年も経ってしまった、・・・・

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