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Case9.八幡製鉄政治献金事件〈最大判昭45.6.24〉

POINT🎯
憲法に規定される国民の人権は、法人にも保障されるのか?


1901年(明治34年)に操業開始した「官営八幡製鉄所」を源流とする八幡製鉄株式会社は、戦後の財閥解体を経て日本の鉄鋼生産量の大部分を担っていた巨大企業です。
この会社の取締役が会社名義で、自民党へ政治献金を行いました。
これを定款に逸脱する支出だと主張して、会社の株主が損害賠償請求を訴えたのがこの事件の発端です。

最高裁の審理では、企業は人を通じて活動し、その恩恵は最終的に人々にもたらされるため、企業活動は国民の社会生活に重要な役割を果たしていると判断しました。
また、国民と同様に企業にも納税の義務があり、企業がそれを負担する納税者である以上、国や特定の政党を支持するなど、政治的な活動を行う自由があると示しました。

このような理由に基づき、判決では、憲法に規定される国民の権利と義務は、可能な限り法人(企業などの団体)にも適用されるべきとし、この献金は合法であると結論づけられました。
以降この判決は、政治献金の問題などで頻繁に言及される重要判例となりました。

なお、法人が経済や社会に及ぼす影響力は大きいため、その権利行使は、強い制約を受けるというのが通説です。
その比較対象とされる代表的な判例を以下に紹介します。
南九州税理士会政治献金事件〈最判平8.3.19〉
群馬司法書士会事件〈最判平14.4.25〉

©2024 written by ChatGPT-4


世界文化遺産の構成資産に指定された「官営八幡製鉄所 旧本事務所」

📝雑記
八幡製鉄(現 日本製鉄九州製鉄所)のある福岡県北九州市は、日本の四大工業地帯の一つとして、わが国の近代化や高度経済成長期を牽引してきました。
しかし工場の排水や排煙などの影響で、工場に囲まれた洞海湾はやがて生物が生息できない「死の海」と呼ばれ、街の空も「ばい煙の空」と言われるようになりました。
そして1977年には、ついに公害が原因で小学校が廃校になるほど、環境破壊が進みました。

北九州の工業地域(その大半が製鐵関連工場/左側に「洞海湾」が見える)

こうした問題に最初に立ち上がったのは、子どもたちの健康を心配した地元の婦人会でした。
手探りで始めた実態調査をもとに、企業や行政、マスコミなどに働きかけ、最終的には、市民全員が社会全体の問題として取り組むようになりました。

その結果、北九州市は環境再生を果たし、長い時間をかけて青い海と青い空を取り戻しました。
1987年には、環境庁から「星空の街」に選定され、翌1988年には「第一回星空の街・あおぞらの街サミット」が開催されるなど、今では国内外で「奇跡のまち」として高く評価されています✨

日本の近代産業はここから始まった(史跡「東田第一鉱炉」)

〈備忘録〉


◆この「判例地探訪録」は、ChatGPTに有名判例の概略を平易な表現で解説してもらい、現地を訪れた記録とともに紹介するシリーズです。
◆この判決の詳細については、下のリンクから確認することができます。
🔗 裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan


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