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三要約読書 #4 自分の行動や認識を改める「認知バイアス事典」

膨大な情報に流されて自己を見失っていませんか?
デマやフェイクニュースに騙されていませんか?
自分の頭で論理的・科学的に考えていますか?

もしひとつでもYesと答えれないなら、情報を正しく選択できていない可能性があります。
人にはそういった情報を正しく選択できない先入観、世界にはそういった情報を正しく選択できなくするトラップがいたるところに散りばめられています。

偏りや歪み、かさ上げを指す言葉としてBiasバイアスといい、今回紹介する本のタイトルにもなっている認知バイアスとは、偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉です。

この本ではそんな認知バイアスの全体像をつかみ、情報を正しく自分のものにし、先入観や思い込みによって損をしないよう世界の見方を変えてくれます。

初めましてロキです。
普段は法務事務所で仕事をしながら、資格の勉強や作曲、ボードゲーム、謎解き、マーダーミステリー等々…
嗜好に偏りのあるものの多趣味に生きています。


こちらは
情報文化研究所という名前で合著された山﨑紗紀子先生、宮代こずゑ先生、菊池由希子先生の『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』です。
各先生方は心理学や哲学、認知科学を専門に講師をされており、この本も各分野での3編となっています。
論理科学的アプローチ、認知科学的アプローチ、社会心理学的アプローチとそれぞれ20項目あるため合計で60項目の事典方式となっています。

また監修者として合著された高橋昌一郎先生は情報文化研究所の所長を務め、論理学・科学哲学を専門分野とする教授です。

帯にも載っている言葉は強烈で、陰謀論、デマ、詐欺、詭弁、差別といった思考の歪み、認知バイアスを知らなければ「賢い人・偉い人も、見たいものだけ見るとバカになる。」との事。

今回から三要約として重要なところを3段に分けてお伝えします。
読んで気になった時はご自身の手で読んでいただけると幸いです。

また記事のスキもお忘れずに。


馴染みのある認知バイアス

まずは三要約の中に含めない皆さんもどこかで聞いたことあるような簡単な認知バイアスについてお伝えします。
全て心理学や認知科学にて実験も行われているような現象やメカニズムです。

デジャビュ/deja vu

実際は一度も経験していないのにすでにどこかで経験しているかのように感じる現象。

もともとはフランス語の言葉で日本語に直すと「既視感きしかん」といいます。
初めて来た所なのに、以前来たことがある…。
この会話、前にもした記憶がある…。
こんな神秘的な体験をした人は多くいると思います。

この現象は100年以上前から研究者の関心を集めていました。
もともとは統合失調症やパーソナリティ障害、離人症と関連があるのではないかと研究されていましたが、一方でより日常的に誰にでも起こりえる現象として考えた研究者たちもいました。

日本人の大学生・大学院生202名に対して聞いたところ、72%の人が経験ありと回答した。
精神疾患を持っている場合とそうでない場合との差についても報告があり、それによれば病気、障害の有無にかかわらず3人に2人は経験したとのことなので、誰にでもある日常的な現象だという事になると思います。

多くの人が経験する心理現象なので、もし自身に起きても心配せずに、決して神秘的なものでもなく前世の記憶でもないと思うようにしよう。
ただしストレスや疲労と関連があるかもと指摘もされているので、もしも周りに頻繁に体験している人がいるなら休むように勧めてみるようにしよう。

長くなってしまいましたが最後に一つだけ。
私は趣味でクイズのイベントでの回答者や問読みで呼ばれたりすることもあります。
そのときにパラレル問題(問題途中で「ですが、」が入る問題)にデジャビュのパラレルで「ジャメビュ」という言葉があります。
デジャビュと言葉の雰囲気が似ていることから推測もできるかと思うが、一度経験した出来事なのに未体験と感じてしまう事を指し、「未視感」という言葉で言われたりもします。
最近物忘れが多くなった私はジャメビュが多くなったかもと思っています…。

サブリミナル効果/Subliminal Effect

意識できないほどの短い映像や小さい音声でも見ず知らずのうちに影響が出る現象。

普段の日常生活の中でもさまざま意思決定をしています。
コンビニやスーパーで何かを買う時にも、なんとなくで手に取る商品やメーカーがもし誰かに操作をされているのだとしたら。

こんな現象も認知科学の中では研究されています。
事前にある多角形を1/1000秒の間に見せる。
提示する時間が短すぎて「見た」と意識することも、事前に見せられたと思い出すこともできない参加者はその後に「どちらの多角形が好ましいか」と質問をされると、事前に提示されていた多角形を選ぶ確率が高かったといいます。
こういう実験は「閾下単純接触効果いきかたんじゅんせっしょくこうか」に関する実験で、閾下いきか(subliminal)とは音、光や映像、味、触感、匂いなどの強さが小さく意識的に感じ取れない状態を指します。
サブリミナル効果はこの閾下を条件とするため、意識して知覚できてしまうとこの効果は生じにくくなるということです。

もう一つ有名な実験を紹介します。
ある広告会社が映画の上映時に「コカコーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」といったメッセージを1/3000秒、繰り返しフィルムに混ぜて流したところ、それらの売り上げが上がったとのこと。
ただこの実験には裏どりがなく古い資料のためその主張自体が虚偽のものであるとする人も少なくありません。

しかしそういった無自覚に取り込んだ情報が、私たちの趣味嗜好や意思決定に影響を与えてしまうということで、日本ではテレビ番組におけるサブリミナル効果的な表現は禁止されています。

最近はテレビ番組を見なくなっている人も多いと思うが、他の媒体からそういった影響を受けてしまう危険性があることを自覚しておいた方がいいかと思います。

単純接触効果/Mere Exposure Effect

特別なモノでもないような物事に繰り返し触れることで、徐々にその物事に対して好意的な感情を持つようになる現象。

例えば国民的アニメで声優が変わった瞬間は「前の声優の方がよかった」という声が多いと思います。
その声優の放送を重ねるうちに新しい声優も好きになっていくといった現象なんですが、みなさんも少なからずあるのではないでしょうか。

こういった現象を単純接触効果たんじゅんせっしょくこうかと言います。

初めて接した時は何とも思わないようなことでも、繰り返し触れることで好意が増していく現象は、例の声優だけではなく、文字や物、人の印象などさまざまな刺激に対して生じると言われています。

この現象の仕組みは誤帰属という現象によるモノだとされています。
出来事の原因を本来のものではなく別のもののせいにすることと誤認することですが、人が新しい情報を得ようとすると、今まで知らなかった情報が脳に入り、認知的に大きな負荷がかかります。
これが2回目、3回目と回数を増すごとに、新しい情報が入ることは少なく、脳の負担が減ったから楽な処理ができるという心地よさがその対象への好意だと勘違いをしてしまうという誤帰属が働いているからと考えられています。

セールスマンや営業職、マーケティングであればこういった単純接触効果を仕事の中で取り入れている方も多いかもしれません。
営業先に何度も顔を出したり、同じテーマソングをCMで流したり、日常でも好意のアップを狙うということは多いかもしれません。

ただ一点だけこの単純接触効果が悪く働く場合もあります。
第一印象が悪い時は、接触回数や頻度を増やすことは好意を高めるためには逆効果ということも明らかにされています。
頻繁に接触することで相手の好意を高めたい場合は前提としてその人に嫌われてはいけないことが重要です。


要約Ⅰ セールスやマーケティングの手法【論理学的アプローチ】

長くなってしまいましたがここからが三要約の一つ目です。
認知バイアス事典の中で私が面白いと感じた現象やバイアスを、どういった場面で使うべきか3パターンに分けて紹介していきたいと思います。
その3パターンも論理学的、認知科学的、社会心理学的と分けていますので、必要なところだけを読んでいただくのもいいかもしれません。 

まずは論理学からですがここはセールストークや広告によく使われているものを挙げます。
営業職の方が見れば論理学系のバイアスは試してみようと思ったり、逆によく騙されてしまう人は注意をするといいかもしれません。

二分法の誤謬/Fallacy of False Choice

実際はより多くの選択肢が存在するにも関わらず、限られた選択肢しか存在しないと思い込んでしまう誤謬。

誤謬ごびゅうとは間違えること、一見正しく見えるが誤りであることを指します。
二分法はそのままでふたつにわけること。
ふたつにわけることによって誤ってしまうことです。

「この壺を買えば幸運になりますよ」
と悪徳商法ではよくありそうですが、さらに、
「買わなければもっと不幸になってしまいます」
と言葉巧みに迫られた場合、あなたはどう感じますか?
精神的に追い詰められている状態なら尚更正常な判断ができないかもしれません。

悪徳商法の占い師から迫られた選択は2つ。
①壺を買って幸福になるか
②壺を買わずに不幸になるか

この2つの選択肢しか思いつかなければ二分法の誤謬にぶんほうのごびゅうに陥っています。

二分法の誤謬は正常な判断ができないような極限の状態に追い込まれている時に使われることが多いと思います。
相手の弱みにつけこみ正常な判断をさせなくしてしまいます。

この誤謬に惑わされないためには一度整理をしてもう一度考えてほしい。
①②以外の選択肢として考えられる選択肢は、
③壺を買っても不幸になる
④壺を買わなくても幸福になる
といったことだとと思います。

「どちらか今すぐに選べ」と選択を迫る人は意識的、無意識的かはさておき、他の選択肢があるにも関わらず、自分に都合のいいことだけを提示し、答えを引き出そうとしている可能性があるということは覚えておいた方がいいかと思います。

最近私が思ったのはNHKの集金の際
①受信料を払わなければTVを置けない
②受信料を払えばTVを置ける
の2択に対し
③ニトリのチューナーレステレビなら受信料を払わずにTVが置ける
と第三の選択肢がわかったことでした。
2つしか選択肢がないなと思うことであれば一度リセットして考え直してみると新しい発見があるかもしれません。

チェリーピッキング/Cherry Picking

都合のいい特定の証拠にだけ着目し、それ以外の不都合な証拠を無視すること。

これは広告やプレゼンには本当によく見られることだと思います。
生命保険や旅行会社、投資信託や定期預金などのパンフレットやWebページを見ると基本的にいい情報ばかりが並んでいます。
こうした販売ツールは顧客の購買意欲を高めるものなので意識的にいい情報ばかりが並んでしまうのは仕方がありません。

なので消費者の私たちが、その情報はチェリーピッキングだと認識することで語られていない不都合な真実を疑って、自分が損をしないような考え方になる方がいいのかもしれません。

逆に営業職であればこのチェリーピッキングを優位に使っていただきたいと思います。
もちろん絶対的にこの現象は悪いとは思わず、マーケティングの一種として使用することはいいと思います。
その上でセールスマン自身が自分の商品をチェリーピッキングを通して見てしまうことにより、相手からデメリットを指摘されると口をつぐんでしまう、といった状況になってしまう可能性もあります。
先に自分の商品やパンフレットを眺め、ここはピックされているなと感じるところ、ここは不都合なので隠されていると感じるところを考え、不都合な事実やデメリットについて説明できるようにすれば、チェリーピッキングによって得られるメリットは大きくなるかと思います。

マーダーミステリーでも自分の優位な証拠や証言だけを取って考えていると、足を掬われるかもしれませんね。

要約Ⅱ みなさんに問題です【認知科学的アプローチ】

次は認知科学的アプローチについてですが、同じ長さのものが違って見える錯視であったり、大勢がいる中で特定の声や単語だけが聞き取れるといった脳の現象です。

ここでは一つだけですが皆さんで考えられるような問題を提示するので、興味があればコメント欄で解答してみてください。

確証バイアス/Confirmation Bias

自分の考えや仮説に沿うような情報のみを集め、仮説に反する情報は無視する傾向のこと。

まずは例で挙げると、「何日に大地震が起きる」や「何年後に隕石が落ちてくる」といった非科学的に証拠がない予想であっても、一旦それを信じてしまうと(確証してしまうと)、それに合致する情報(雲の形がいつもとおかしい、犬がよく吠えている)だけを探してしまい、ますますデマに信じてしまうといった現象です。

このように、自分の考えや仮説が正しいことを確認するため、仮説に合致するような情報を集め、仮説を反対づけるような情報は一切集めない、無視してしまうといった傾向を確証バイアスと呼びます。

この確証バイアスは日常生活でもさまざまな場面で起きています。
「誰々が最近仕事をしていない」といった仮説があるなら、それが整合する情報のみを集め、それに反証するような情報は集めてもみない。
もしかしたらその人は自分が思っているよりも重要な仕事を任されていたり、裏では他の人が嫌がっている仕事をしているかもしれない。
常に自分の考えだけが正しいわけではなく、違う部分からも情報を探してみるべきでしょう。

ウェイソン選択課題

それでは問題です。
「A」「K」「4」「7」
1文字ずつ書かれた4枚のカードがあります。
片面にはアルファベットが、もう片面には数字が書かれています。
このカードを数枚裏返して「一方の面が母音なら、もう一方の面は偶数である」という仮説が正しいかどうかを確かめたい。
裏返す必要のある最小限のカードはどれでしょう。

しっかりとした理由のある答えはありますので、一度考えてみてコメント欄で解答してみてください。

要約Ⅲ 無駄なお金や時間を使わないために【社会心理学的アプローチ】

社会心理学的アプローチについては2つのバイアスをお伝えします。
こちらは最近私もよく記事にしたり本を読んだりする「節約・貯金」といったポイントから選びましたので興味があればさらに深く調べていただくといいかもしれません。

バーナム効果/Barnum Effect

ほとんどの人にあてはまるような性格についてのありがちな説明を、自分のことを言い当てられているかのように感じる現象。

まずは心理学者・統計学者でもあり占星術に長けたフランスのゴークランという人の実験についてまとめます。

新聞に無料で占星術を用いた性格診断をすると150人を集い、応募した人全員にとある凶悪犯の生年月日に基づいた性格診断をし、全員にまったく同じ回答をした。
するとその診断が当たっていたと感じた人の割合は94%にもなった。
この実験から「これがあなたの性格診断の結果です」と言われると、当たっていると感じ受け入れてしまう傾向が高くなるということがわかった。

のちに曖昧な性格に関する記述を目にした時、人は自分に当てはまっていると捉えてしまう傾向があることが発見され「バーナム効果」と命名されました。

こういった占いが当たるかどうかは占いを受け取った側の解釈に依存しています。
あなたはこういう人です。と示された内容に合致する部分に対して、人は後付けで自分の中からその部分を探してしまいます。

筆者は占いに対し騙されないようにするには、「バーナム効果があるということ。人は簡単にバーナム効果の影響を受けるということ。この2つを知っていれば未然に騙されず防止してくれる」と言っています。
知識を持つことにより、示されたことをそのまま信じるのではなく、一旦自分で精査することが重要です。

節約面から見ると、広告にのっているキャッチコピーを見て、いらない商品を自分が当てはまっていると信じ買ってしまう。
買った後にいらないことに気づいても遅かった、ということを防いでくれるのではないかと思います。
できることなら日常的な部分からも、こういったバイアスや効果を受けないように生活をしないと、貯金や節約がうまくできないのではと思いますので、みなさんもこの記事を読んで騙されないようにしていただければと思います。

バンドワゴン効果/Bandwagon Effect

選択肢が複数ある場合は、多くの人が同一の選択肢を取ることによって、その選択肢を取ろうとする人がさらに増える現象のことです。

最後は同調バイアス、バンドワゴン効果についてです。
人気店の行列がさらに長くなる根拠はここにあります。
みんながこっちに並んでいるのであれば間違いない。
並んでいないお店にはなんかあるのだろう。
といって行列のある店に並んでいく、そんな光景を見た人は多いと思います。
これは同調バイアスと言って、周りに他者がいる場合、その人がどのようにするのかを参考にして、同じ行動をとる現象を言います。

この同調バイアスの中でも、購買消費行動に顕著に現れる特徴を特にバンドワゴン効果といい、「パレードの先頭の車(バンドワゴン)に乗る」「流行に乗る」「勝ち馬に乗る」とう意味で使われます。

バンドワゴン

小さい頃に、みんなが持っているおもちゃを欲しがった経験はありますか?
友達と話題が合わなくなったり、同じものを自分も使いたいなど色々と理由はあるかもしれません。
「みんなが持っているのだからいいものなのだろう、自分だけ持っていないのは嫌だ」という安心を求める行動を動機としてバンドワゴン効果は生まれます。

ちなみにこの逆で周りが持っていないものを欲しがる現象も存在し、スノッブ効果と呼ばれ、希少性が高いものを欲しがったりする場合に働くことが多い。

マーケティングにおけるバンドワゴン効果は、数万人のひとが愛用中や、チケットが短時間で完売といった宣伝をすることにより、消費者の購買意欲を高めようとします。
本当に必要なものを考えずに、他の人が持っているからという理由でものを買ってしまうことは、節約や貯金をする上では良くないことです。

このバンドワゴン効果ということを知っていれば、店の策略やマーケティングに踊らされずに生活できるのではないかと思います。




まとめ

  • 情報を正しく選択するために知識をつける

  • バイアスや誤謬に操作されず自分の考えで行動する

  • 二分法やチェリーピッキング等セールスの言葉を疑い、逆に自分の強みにする

  • 確証バイアスにとらわれずに新たなカードもめくってみる

  • 節約・貯金をするためにバンドワゴン効果などの心理学知識を深める


私はそこまで深くは心理学や認知科学について勉強はしていませんでした。
この認知バイアス事典はそんな人にでもわかりやすく解説をしていましたので、今からでも覚えてみようと言った方にはすごくおすすめな一冊でした。

この本にはこういったバイアスや現象が60項目乗っており、紹介したのはほんの1/10ほどです。
この記事を読んでもし興味があるなら書店で手にとって見てください。

私はたまたま寄った行きつけの本屋さんに並んでいたのでジャケ買いしてしまいました。
マーダーミステリーやボードゲーム、仕事でも使えるような内容が多かったので実践をしてみようと思います。

またこの続編の認知バイアス事典行動経済学・統計学・情報学編がつい最近発行されました。
そちらも私は読みおわっていますが、この前編よりかは少し内容が難しくなっていると思います。
前編を読んだ後でもう少し広げたいと思ったのであれば読んでみてもいいかもしれません。


ここまでお読みいただいてありがとうございます。
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次の記事までしばしお待ちを・・・


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