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【CFO CONFERENCE 2020 書き起こし】有力スタートアップCFO達が語る、CFOとして必要な資質と、理想のCFO像

「集う。日本の未来を担うCFO・経営企画」というコンセプトのもと、VOYAGE GROUP渋谷ソラスタオフィスに数百人という来場者を集めたCFO CONFERENCE 2020。

SanSan、freee、Chatwork、カオナビといった有力企業が上場を果たした他、未上場企業による超大型調達、さらにソフトバンクによるヤフーの子会社化、ヤフーとLINEの経営統合などのM&Aも話題を集めた2019年の振り返りと今後の展望について、多くのパネラーが自らの経験や知見を披露してくださいました。

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本記事では最後のセッションとなった「SESSION-03 事業加速に貢献するCFO像とは?」を取り上げます。

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冨田
私、スマートラウンドの冨田阿里がモデレーターを担当させていただきます。どうぞ宜しくお願い致します。改めて、このセッションに登壇される皆様も豪華なので、まずお一人ずつ自己紹介をお願い致します。

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竹本
株式会社WACULの取締役CFOを務めている竹本と申します。WACULというのは、デジタルマーケティングに関わるデータをAIで分析、改善提案までしてくれるというツールである「AIアナリスト」というものをつくっている会社です。金融業界出身ということで今回このメンバーに並ばせていただきましたが、「本当にここに加えてもらって良いのかな」という気持ちでいます(笑)。過去の経歴としては、ゴールドマン・サックス証券に入社後、投資調査部でいわゆるアナリストとして主に鉄鋼業界のレポートを書いていました。その後、A.T.カーニーに転職しまして、テクノロジー領域での新規事業立案、戦略立案などを手掛けた後、2018年に現職の会社に転職し、今に至るというキャリアです。

あと、これは経歴とは関係ないですが、外資系金融機関への就職を目指している就活生に向けて、情報発信や就職活動の相談に乗る、めちゃくちゃ意識の高いツイッター(@tkmtyy)をやっています。ご興味がある方はぜひ(笑)。

冨田
WACULはものすごく伸びているSaaSのビジネスですし、竹本さんのツイッターフォロワー数は1万人を超えていて、本当にすごい人気なんです。変に謙遜せずにお願いします!それでは、お隣に進んで玉木さんお願い致します。

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玉木
株式会社SmartHR 取締役・CFOの玉木です。SmartHRは、いわゆる人事・労務管理領域のSaaSですが、社会保険の手続きや年末調整など、未だに紙や手書きで作業しているものをペーパレスにし、クラウドソフトウェア上で完結させるためのサービスとなっています。主に人事労務や財務経理といったバックオフィス、コーポレート部門を対象としたサービスです。

私自身のキャリアは金融というよりも財務・会計よりです。公認会計士の資格を取とったのち、PwCあらた監査法人でキャリアをスタートし、その後事業再生のコンサルをしている会社に転職し、直近はサムライインキュベートというシードに特化したVCで投資チームマネージャー兼財務責任者を務めていました。SmartHRには2017年10月に入社しています。

冨田
ありがとうございます。玉木さんはVCに在籍していた時からすごく有名なキャピタリストでしたが、SmartHRに入社して約3ヶ月後にあの大きな資金調達のリリースがあって驚きました。では最後、3人目ですが武藤さんお願い致します。

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武藤
株式会社プレイドの武藤と申します。我々はKARTEというプロダクトを提供している会社です。WEBやアプリのデジタル向けツールで、WEBサイトに訪れる皆さんに対して、顧客体験を向上していくようなサービスです。以前は「WEB接客」というワーディングを使っていましたが、サイトに来られたお客様をリアル店舗のように接客できるツールで、おかげさまで多くのお客様にご利用いただいています。

私の経歴ですが、かいつまんでいうと新卒で日本の銀行に入り、法的管理になり、金融不況時代を経てドイツ証券で13年ほど投資近郊業務に従事。その後、プレイドとは違うヘルスケア領域のスタートアップに入り、当時ゴールドマン・サックス証券出身の強いCFOのもとで色々と学ばせてもらい、また外資系金融機関や国内金融機関を経て、去年からプレイドのCFOになりました。

CFOは「理想と現実のバランサー」「戦略戦術を形にするフィクサー」

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冨田
お話いただいた通り、武藤さんは経験豊富な方なので、きっと今回のテーマでも色々参考になるお話をしていただけるものだと期待しています!ということで、早速ですがこのメンバーで最初のトークテーマですが、「CFOとして重要な役割とは?」です。重要な役割、果たして何でしょうか?

竹本
僕が考えるCFOに一番求められている役割は、とにかくバランスをとることだと思います。例えば時間軸であれば短期的な視点と中長期的な視点を持ち合わせることも1つです。COOは既存事業の売上や利益の改善に集中していて、R&D担当の取締役は数年後の事業のあり方を熱心に考えている。CEOとはさらに未来の話をすごくしています。当然、全員で1つの議論をすると利害関係がぶつかることもあるので、そこでバランスをとる。CFOとしては短期中期両方で株主の利益を失わないように注意していますし、その観点からも含めた事業推進を依頼するなど、調整弁としての役割が、WACULの場合は重要になっているかな、と。

もちろん、株主や監査法人、証券会社といったステークホルダーの中にも様々な意見があります。そこにCEOの未来にかける思いや社外取締役からいただく助言などを含めつつ、みんなが仲良く1つの方向に進めるように時間を割いています。その中には当然投資業務も含まれていて、集められるお金をどこにどう当てるか、事業としての成長性と継続性を考えながら、人やお金、そして時間のバランスをどうとるかに、弊社の場合は腐心しています。

玉木
ファイナンスはCFOに求められる役割、ロールの一部でしかないと思っていて、会社のフェーズによって求められるCFOの役割は大きく変わっていくという考え方です。CFOの役割を軍事に例えると、近代の戦争において重要とされている、兵站がCFOに求められる役割ではと考えています。兵站とは、戦時中における前線の部隊に向けて物資や食料などを供給・補充することを主目的とした後方支援機能の部隊なんですね。最前線でどのような陣頭指揮がとられているかという戦略・戦術と同様かそれ以上に、裏方の仕事が重要視されているという話で、私はビジネスでも同じような話だと考えています。

会社に置き換えればコーポレート部門全体が兵站にあたりますが、財務経理だけでなく、採用や労務が強くないとビジネスの最前線を支えることはできません。そこをカバーできるようにするには、どう組織を作っていのか、お金を集めてくるのか、また、そのお金はデッドなのかエクイティなのかという話も含めて、CFOをはじめとしたコーポレート部門は前線の裏を支えるために先を読んで的確な判断を下す必要がある。これは語りだすと話が尽きないのでこの辺で…(笑)。

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スタートアップで活かせる、大手企業やVCでの経験とは

冨田
ありがとうございます。ちなみに、今日は金融機関に現在務めていて、ゆくゆくはスタートアップにジョインしたいという人も相当数いると思っていて、金融機関に在籍していたからこそ分かる、スタートアップで活かせるTIPSみたいな情報があると嬉しいのですが…!

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玉木
金融というよりは、特にVCでの経験は活かせていると感じています。シード期のスタートアップの方々と仕事をしていると、とにかく毎日、何かがどこかで起こるわけですよね。むしろ何も起こらない平常運転のほうが少なくて、何が来ても動じないというか、対応力が身についたと思います。優先順位の付け方や、発生した問題の本質を探る力、発生した事象に対する緊急度の判断軸などは今もすごく役に立っているなあ、と。

一方で、PwCのような大企業に勤めていた頃の経験もやっぱり活きている場面はあります。大企業ならではの物事の進め方だったり、内部統制のやり方だったり、あるいは財務報告のやり方もそうですね。スタートアップと大企業とのあり方には大きなギャップがあり、その差を知っているからこそ、我々が目指すべきゴールに向けて必要な施策を打ったり、先を見据えた人員の採用を進めたりということができています。もちろん、スタートアップに来て初めて経験する業務も多いので、それらは新たに必要な事をインプットしつつ、経験が活かせる部分はうまく応用しながら、ですね。

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空気のように溶け込み、仲間を見守るCFOでありたい

冨田
参考になるお話、ありがとうございます!それでは武藤さんからも改めて、「CFOとして重要な役割とは?」を回答いただけますか。

武藤
私が長く務めていた投資銀行部門ではどんな業務をやっていたかというと、8割近くPowerPointで資料を作っています。残り2割近くがExcel、あとは何か別のことがほんの少し、という感じなんですね。もちろん、シニアになるとお客様のもとに出向いて一緒になにかやる機会も増えますが、アナリスト時代はほぼこんな感じです。

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その状態でスタートアップに転職すると何が起こるかというと、スキル勝負になるわけです。PowerPoint、Excelで勝負することになる。その状態で、メンバーにチームの資料を作ってもらうのですが、「セルにハードナンバーを入れる時には水色にしなくちゃいけない」といった細々とした点が気になってしまう(笑)。それが駄目だとわかりつつも、金融機関で脈々と育まれてきた価値観が染み付いてしまっているんです。ミーティングでもずっと自分が喋ってしまう。でもCFOの立場でこれをやり続けてはいけない。そこで「いかに自分がやらないか。口出ししないか」ということを今は強く意識しています。時々苦しいときもありますが、仕事を任せる、見守るというのがCFOとしての重要な役割だと思います。

冨田
大手金融機関で豊富な経験を積んでからスタートアップにステージを移したにも関わらず、なかなか活躍できない人を私自身も見てきたので、武藤さんのお話はすごくわかります。そういう意味では、皆さんは金融機関での経験や価値観を活かしつつ、スタートアップらしさにもうまく染まっているのかなと思います。そこで、スタートアップにおける理想のCFO像もあわせてお聞かせいただけますか。まずはこのまま武藤さんから。

武藤
財務経理には攻めと守りの両面があると思います。攻めは資金調達を始めるとするお金を集める役割、守りは上場を目指して内部監査や統制を効かせたり、過剰コストをセーブしたり、36協定の遵守に向けた施策を打ったりでしょうか。言ってしまえば嫌われ者の立場です。でも、プロダクトの開発や営業活動に集中できるよう、そうした守りの部分はなるべく意識してほしくないんですよね。「こんなに自分たちは好きなことをどんどんやってるけど、本当に売上達成できるの?上場できるの?」という状態になるのがすごく良いなと。管理業務を空気のようにそっと差し込み、意識しないままガバナンスが効いている。そういう状態を作れるのが理想的なCFOかなと思います。

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CFOは管理部門の長ではなく経営者。未来を見通す目が大事

冨田
空気のように溶け込むCFO、すごくいいイメージですね。一方で攻めの役割もあるとお話がありましたが、攻めの点における理想的なCFOとはどんなものだとお考えですか。

武藤
単純にディールって面白いんですよね。資金調達であっても、M&Aや新規事業立案であっても、とにかく面白い。CFOは社内に「そういうことをやっても良いんだ」「アイデアが形にできるチャンスがあるんだ」という空気を生み出していける、現場に刺激を送り続けられるポジション。会社の成長を生み出すガソリンを供給し続けられるのが、良いCFOじゃないかと思います。

冨田
資金調達によって会社が生き生きとする、事業が加速するのは間違いないですね。ありがとうございます。では、竹本さん、玉木さんからもそれぞれ理想のCFO像をお伺いできればと思いますが、いかがでしょうか?

竹本
今自分自身が目指しているところですが、CFOって管理部門の長ではなく、経営者の一人だということを強く考えています。「空・雨・傘」という思考方法がありますが、「ある日空を見たら曇ってる。これはきっと雨が降るに違いない」と、常に頭の中で物事を整理し、問題解決をやり続けること。空の状況は常に触れておくべきデータだったり、CEOがどういう方向に向かおうとしているかという情報だったりします。そこから「雨が降るな」「そろそろ傘を用意しておこう」といった対案を考えていく。何が必要か、どんな判断が求められるかを常に考え続け、時が来たらビジネスサイドにさっと傘を差し出せる人になっておきたいな、と思います。

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社内を歩き回って色んなメンバーと話をして、いろんな数字をSalesforce上で見て、いつキャッシュが尽きるのかを考えておく。私の場合、入社してから資金調達まで4ヶ月でやり、足元のキャッシュの心配はしなくなりましたが、今も日々、その期間にも何が起こるか、この新規事業では何が起きるからキャッシュアウトが多く発生するとか、この問題に対して先手を打つためにどんな人材を採用すべきかとか、色々な場面で「空・雨・傘」の思考をしています。それを滞りなくやれるのが理想的なCFOかなと思います。

冨田
ありがとうございます!それではお時間も迫ってきたので、最後に玉木さんから理想のCFO像について、お願いします。

玉木
もう既に出てきた内容と重複するかもしれませんが、足元必要とされる結果は当然として、会社をもう一段回引き上げるための施策を俯瞰しながら考えることが大事だと思います。成長期だとどうしてもCOOは現時点の事業やプロダクトに100%コミットすることが求められる事が多いので、CEOやCFOが先々を見据えた長期的な視点から起こりそうな課題や施策を想定して意思決定していく。例えば、(このイベントのスポンサーの)freeeさんがされたグローバルIPOなども、短期的な施策の中で出てくるものではなく、将来的に目指すプロダクトや事業から逆算して資本市場とどう向き合うべきか、そのためにどういう投資家とコミュニケーションをとっていくのか、という長期的な視点から出てきたものだと思います。そのように未来を見通す目を持っていること、持とうとする姿勢を貫くことがCFOに求められる理想像の一つです。私自身、まだまだそのレベルに到達できていませんが、これができるのが素晴らしいCFOだと思います。

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冨田
皆様ありがとうございました。本来であれば質疑応答の時間もたっぷり取りたかったのですが、皆様のお話が非常に示唆に富む内容でボリューミーだったので、こちらでこのセッションは終了とさせていただきます。改めて皆様に拍手をお願い致します。ありがとうございました!

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如何だったでしょうか!?

文章でも盛り上がっている本イベントですが、本番は公式フードや焼き立てパンの提供もあり、非常に素晴らしい空間の中で交流が行われました。

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スポンサー頂いた企業様、会場をご提供頂いたVOYAGE GROUP様、ご来場頂いた皆様、運営スタッフに感謝を申し上げます。

次回のイベントは周辺環境の問題もあり未定ですが、夏頃を目途に大型イベントを企画していく予定です!!

是非、ご関心頂いた方は次回のご来場お待ちしております。

本イベントはCFO・経営企画 Network主催で行われています。今後開催するイベントに参加を希望される方は以下のリンクより公式ページにご参画下さい。



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