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【韓国】南ソウル美術館:企画展「権鎮圭の永遠の家」

韓国ソウルの江南(カンナム)エリア、サダン駅から徒歩2、3分のところに、ソウル市立美術館・南ソウル美術館がある。
今回はそこで開催されていた企画展「権鎮圭の永遠の家《권진규의 영원한 집》」に行ってきた。

ソウル市立美術館・南ソウル美術館

場所

エリア:ソウル・江南(カンナム)
最寄り:サダン駅(Sadang)地下鉄2番線・4番線
バス:青色バス461, 641, 643などに乗車して、남서울농협남현동지점(南ソウル農協南峴洞支店), 사당1동관악시장앞(サダン1洞 莞楽市場前)で下車

開館概要

開館時間:平日(火曜〜金曜)10:00~20:00 / 土日祝日10:00~18:00
休館日:1月1日、毎週月曜日(月曜祝日の場合は開館)
入館時間:観覧終了時間の1時間前まで入館可能
観覧料:無料

建物は旧ベルギー領事館

南ソウル美術館はソウル市立美術館(SeMA)の分館で、建物は旧ベルギー領事館を改装したものである。外装は花崗岩と煉瓦で造られており、内装は白を基調とした天井が高く開放感がある。階段や暖炉、柱は既存のものを残すための最低限の補修のみがされており、床から天井まで全てが年代を感じられる美しい作品のようになっている。正直、この建物だけでも十分な鑑賞物で、庭のベンチに座ってゆっくりするのもいい過ごしかただろう。
私が行ったときは、小綺麗なおじいさんが庭のベンチでゆっくりしていた。

中は1階と2階で別の展覧会をしていたり、関連するものが同時開催されていたりするようだったが、大きな美術館ではないためゆっくり観ても30分から1時間で回り終えられる。大急ぎ1泊2日/2泊3日の韓国旅行で時間が少し余った時はふらっと観に行くといい時間の使い方になるだろう。

南ソウル美術館正面*筆者撮影


南ソウル美術館内部*筆者撮影

企画展「権鎮圭の永遠の家 《권진규의 영원한 집》 」

権鎮圭について

権鎮圭は韓国の彫刻家で、27歳の時(1949年)に日本の武蔵野美術学校彫刻科に入学・1953年に卒業した経歴をもつ。武蔵野美術学校の学生だったときに、同じように学生だった芸術家の荻野トモと交際を始める。1959年、母親の看病のため帰国するまで、日本で彫刻家として展覧会に出品し受賞するなど活動をしていた。トモとは一緒になることを約束し、婚姻届を出して帰国する。帰国後は美術学校の非常勤講師や大学で教授職をしていた。
一方で、トモはずっと待っていてくれると思い連絡を取らずにいたところ、1965年、トモの父から離婚届が届き協議の末、離婚することになる。その後の1968年に日本でトモとは再会を果たしてはいるが、関係改善には至らなかった。
韓国で彫刻を作り続け、1972年50歳になったときには高血圧で疾病を患い、自殺をほのめかすようにもなる。1973年、自身の作品が高麗大学校博物館の現代美術室に収納されることが決まり、現代美術室開幕式に参加した翌日5月4日に遺書を残し自ら命を断つ。

彫刻と音楽

鎮圭は彫刻と音楽をこよなく愛した人だったようだ。
展示の中に鎮圭をしたっていた人達がインタビューに答えている映像展示があり、その中でも彼が彫刻と音楽を愛していたことが印象的に語られていた。
略歴の中にも音楽を楽しむ姿があったり、コーヒーがまだ高価だった時代に、喫茶店でコーヒーをトモと嗜む姿があり、「昔の芸術家だな」と思ったりもする。

感想

実は「権鎮圭」のことは、今回の展示に行くまで全く知らなかった。
そして、私自身が彫刻に造詣が深いわけでもない。
彫刻を見ても「すごい!」「綺麗!」「細かい!」「これどっかのなんかに置いてあったような?何かと似てるような?」程度のレベルだ。
こういうのを豚に真珠というのだが、私はここで権鎮圭のことを知れたわけで、彼が偉大な彫刻家であったことやそんな彼と日本とのつながりがあったことが分かっただけでも進歩だ。

私の専門は美術より社会学系なものであるためか、1人の彫刻家の人生と当時の日本と韓国の関係が如何様であったかが気になった。
この時代背景と、鎮圭とトモの関係はどう考えても連動している。
2人ともその当時に美術大学に通ってるくらいには経済的に豊かな人々だったろうが、トモの父親が韓国人である鎮圭との結婚を簡単に認めてくれたとは思えないし、この話にはトモやトモの父が断片的にしか出てきておらず、トモがどんな人だったのか、その時の日本はどうだったかはもはやわからない。
しかしながら、鎮圭の人生においてはミューズであったことは確実だろう。

そんなことを考えさせられた展示会だった。
南ソウル美術館の建物も素敵だったが、中の展示にはもっと深い世界があって、その建物の歴史とともに展示も色鮮やかによりディープなものになっているように感じた。
美術館探訪はいろんな歴史や人生との出会いの連続であることも感じられた。

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