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君子豹変と東京五輪。

オリンピックの聖火リレーが始まった。

国内でオリンピックの機運が高まっていたからではない。オリンピック開催に関する議論なんてここ最近した覚えもない。不祥事ばかりだ。

私は毎日、BBCのニュースを眺めることから1日が始まる。これは英語の勉強のために始めたことだ。しかし、BBCでオリンピックが話題になったことが近頃あっただろうか。ない。無論、女性蔑視発言と辞職は報道された。しかし「オリンピック始まるぞ!!!」という雰囲気は全くない。どういう雰囲気か。コロナの感染状況の続報、ワクチンの話、特にアストラゼネカの話題、ミャンマーの悲惨な状況、スエズ運河での座礁事故、、、全体的に落ち着かない現実世界がそこにはある。


政治家は現実問題と向き合って、何か過ちを犯したならば速やかに認め、改め、良き方向に導くのが政治家の仕事ではないのか。4年に1度の祭典より毎日の生活を守ることが政治家の仕事じゃないのか。

つい先日も東北では大きな地震があった。津波もあった。しかし、菅首相は永田町のホテルで散髪し、官邸入りもせずに帰宅していた(参照)。

今、緊急事態宣言を解除して良いのか?時期尚早ではないのか?と思っていたが、3月22日で緊急事態宣言は解除された。緊急事態宣言は解除されたが、それぞれの自治体の首長により独自の緊急事態宣言や時短・自粛要請が発令された。大方の予想通り緊急事態宣言を明けて以降も感染拡大は続いている。

この調子で第4波が来てまた「非常事態宣言」が出されて「この2週間が勝負」とか言われるのかなと思うとうんざりだ。25日からオリンピックの聖火リレーがあるからどうしても非常事態宣言を解除したかったんだろうな、とさえ思ってしまう。


毎日の生活もそぞろなのに、なんで今、オリンピックができるのか。オリンピックのことが考えられるのだろうか。オリンピックを開催する大義はなんなのか。誰のためのオリンピックなのか。スポンサーのためのオリンピックなのだろうか。

世界のスーパースターたちをこんなコロナの蔓延した国に呼べるのか。誰が検査するのか、スポーツ選手が試合中に怪我した時に駆けつけられる医師や看護師はいるのか、選手が深刻な怪我をしてしまったら入院が切るほどに余裕のある病院が今あるのか。「アスリートファースト」というのが最初の頃に言われていたが、アスリートのことを大会組織委員会は本当に考えているのだろうか。

「復興五輪」とも言っていた。東日本大震災で甚大な被害を受けた地域はどのくらい復興できたのだろうか。地元住民たちは「復興五輪」と言われて納得できているだろうか。「コンパクト五輪」とも言っていた。しかし、昨年公表された予算は1兆6440億円で、五輪史上最も経費のかかるものになっている(参照)。もっと費用はかかっているという記事も見かける。全くコンパクトではない。

「人類がコロナに勝った証」だとも言っていた。感染症に対して、勝ち負けがあるかどうかはわからないし、どんな状況を「勝った」と言えるのかもわからない。しかし、確実なこととしては、ワクチン接種が他国に比べて進んでいない日本が、「コロナに勝ちました!」なんてことは言えない。

例えば、以下のBBCのページでは、世界各国のワクチン接種進捗状況を見ることができる。日本が今どの位置にあるか確認してほしい。


3月20日、大会組織委員会は海外からの観客は受け入れを断念した(参照)。今現在、コロナの影響で出入国は容易ではない。お隣の韓国でさえ気軽に行けない。海外からの観客を入れることは相当ハードルは高いことはずっと前から明らかだった。そのことはわかっていても、正式に発表しないと進まないこともある。もっと早く発表するべきだった。

開会式・閉会式の企画統括役は先日、タレントの容姿を侮辱する発言により辞任した参照)。元々は野村萬斎氏らが演出チームになっていたが、昨年解散している。開催できるかどうかも不透明であるのに、演出チームに準備してくださいと頼むのも変な話だし、演出チームに参加していた人たちも自分たちの本来の仕事がある。聖火リレーも著名人はどんどん辞退している。彼らにも仕事の都合があるし、イメージもある。

ボランティアも集まるのだろうか。辞退する人が多いなら、また集めればいい、というが、そんな簡単に集まるだろうか。開催するかどうかわからないのに、数ヶ月先の予定をぽっかり空けられる人がどのくらいいるだろうか。ボランティアをやろう!と思っている人の健康は確保できるか。


東京五輪に異議を唱えたのは島根県の丸山知事だった。

「五輪というイベントに合わせ、対応していく必要がある。外国から多数のアスリートや関係者が来るので、対応能力の向上がない中では、開催をよしとすることはできない。知事として県内の聖火リレーの開催に県費を投入して協力するのが難しいと中止検討を表明した。東京都における対応の向上、政府に東京五輪の開催の環境を整えてほしいと対応を要請した。」

島根県知事の訴えはよく理解できる。至極真っ当だし、なにもかにも有耶無耶にする大会組織委員会より、地域の人たち、ひいては国民のことを考えている。

話はやや変わるが、東北の宮城県で3月24日の新規感染者数が171人で、県としては過去最多を記録した(参照)。この日の2週間前は3月10日だ。東日本大震災の復興イベントは盛大に開催されていなくとも、帰省した人たちや取材に行った人たちもいたことだろう。

島根県知事の訴えはこういうことではないだろうか。地方が厳格に感染症対策をしていたとしても、他の地域から感染者が来たらそこで感染は拡大する。東京ほどのさまざまな資本を持っていない地方では、一度感染拡大してしまうと修繕するのは茨の道だ。



東京五輪の聖火リレーは国民全体から喜ばれるものとして始まったものではない。しかし、今の政府や大会組織委員会はこんな感じで、国民に何も説明せず、理解を得る努力もせず、「来月をめどに決める」「6月をめどに」「7月をめどに」と言い続けて、開催日程直前までずるずる日は過ぎていくだろう。

私は東京五輪開催に反対だ。

ずるずる開催するかどうかを議論しないでいるよりは、「東京五輪は中止する」と決定した方が「英断だ!」と賞賛されるだろう。とにもかくにも、今のままでは絶対にダメだ。



君子豹変。「優れた人間は、過ちは直ちに改め、速やかによい方向に向かう。」

政治家だけではない。会社や学校でリーダーになる人だけに言ってるわけでもない。全ての人が対象だ。

どんな人だって間違いは犯す。間違いを犯してはだめ!ということではなく、間違いを犯したら、過ちだったことを認めて、改善することが大事なのだ。

「記憶にございません」「うっかりしてました」「知りませんでした」なんて言わずに、日本の国会議員をはじめとする政治家にはもっと誠実になってほしいものだ。私も誠実であろうと思うばかりだ。


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