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下町の商店街とお買い物バトル

引越してきた街はデカめの下町でした。
約660m続くアーケード街は大阪最大級。よくテレビの街ブラロケで出てくる情緒溢れる商店街といったところでしょうか。PayPayがあまり使えません。

初日は商店街の衣料品店を偵察しました。
相場はどこも1000円〜2000円。
店頭の目玉商品はだいたい500円程度です。

ローンを組んで背伸びした服を買うのも楽しいですが、そういう店では「こんなに高い服を買う自分」に酔っていたり、逆に武者震いしていたりなどして実はあんまり服を直視できていない場合がありますよね。
往々にして店員さんは抜群のスタイルと、詐欺師まがいのトーク力、そしてまさか買わずに出ていくなんてことないよなぁ?という眼光を備えていてあまりにも怖すぎます。タトゥーも入ってがちです。
買った後は後で、買ってしまった自分を否定するわけにはいかないので、後悔したとは口が裂けても言えず、デザインが〜、生地が〜、縫製が〜などと褒めちぎり、狭い界隈で自慢するのがよくある例ですね。2年ぐらい前の私のことです。
ファッションって消え物ですから、ちょっと水商売チックな、体験の高揚感まで含めて勢いで売っちゃう・買っちゃう商売なんだと思います。

それにひきかえ商店街の衣料品店はどうでしょう。
洋服そのものと金銭を交換するのみ。

服vs私の真剣勝負なのです。

「お似合いです〜」といった定型のコミュケーションがないのはもちろん、ここは大阪、狭い店に次から次へとオバチャンが出入りしてくるので短時間で答えを出さなければなりません。

そして最も重要なことは、一部商品のブランドタグが切られていることです。

あまりの安さに怖くなって一旦店を出て『商店街 服 なぜ安い』で検索して理由を知りましたが、ここはいわゆる「オフプライス店」だから安いのです。アパレルメーカーが大量生産し、セールで売りきれなかったものを在庫処分するルートとしての店です。メーカーは安売りの印象がつくリスクがあるため、小売店は一部商品のタグを切り取ることでブランド毀損を避けているのだそうです。

なるほど。

ブランド名なんか無くても己の審美眼だけでかかって来いってことか。フン、受けて立とう。お買い物バトルに火がついて、デザイン、色味、質感を吟味してこれだという1着を探しました。

決めたのは、1480円のロングワンピース。
切り替えのデザインと異素材の使い方が見事、洗濯タグまで切られているので詳細不明ですがしっかりした生地は毛玉の付かない長持ちするものに違いありません。私は店員さんがよそ見をした隙を狙ってGoogleレンズで撮影しました。今どきはAIが画像からネットにある情報を検索してくれるから有難いものです。電柱の陰に隠れて…loadingを待ちます。

『ロングワンピース ¥25,800』

きたー!!!
画面に現れたのは眼の前のワンピースと全く同じもののウェブサイトでした。勝ち確の瞬間です。にやにやしながら試着していいですか?と聞きました。

「すんません、それ被り物やろ。試着あかんねん」

試着NGでした。化粧がつくからですか?と尋ねると、それもあるけどとゴニョゴニョ言ったあと特に理由を教えてもらえずとにかくNGでした。

商店街のお買い物バトルはファッションセンターしまむらよりキビしい。自分の体型をどこまで理解しているかも含めて審美眼が試されるとは思いませんでした。完敗。結局買う勇気が出ずに帰ってきてしまいました。

まだまだ大阪のオバチャンへの道のりは長そうです。

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