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大手2社を経験後、ベンチャーで働いて感じた3つの視点からみた違い「全自己資本のベンチャー社長は会社は自分のものと思ってるかも」

巷では就職する上で大手がよいのか、ベンチャーがよいのか、という議論がよくなされていますが、一義的な答えは見つかっていないと思います。強いて言うのであれば、「人によってどちらも向き不向きがある」ということ。

総じて言ってしまえばその通りなのですが、ではどんな人が向いていて、どんな人に向いていないのか、この点の解像度をもう少しあげる参考として、これまで大手2社(どちらも1兆円企業、従業員数数万人のグローバルメーカー)で10年以上働き、その後、創業から1年弱の会社に転職した経験を元に、大手とベンチャーでどんなところが違うのか書かせていただきたいと思います。これまで僕が経験した3社が、どのくらい「ベンチャー」や「大手」を語るのに適切なのかは正直わからないところもあり、あくまでも僕の主観での考えになりますが、このnoteが、働く場所を新たに考える全ての人に、何かしらの気付きのきっかけとなればと思っています。

大手2社からベンチャーへ転職した経緯

初めに、少し自己紹介を兼ねて過去の経緯や転職のきっかけなどを書かせていただきます。

元々材料系の工業大学を卒業後、電子部品メーカーで4年、化学繊維メーカーで9年働いていました。詳細は以下のnoteをご参考にいただきたいのですが、その大手から最終的にベンチャーにいこうと思った理由は大きく二つ。一つ目はセクショナリズムに嫌気が指したから。もう一つはコンサルティングという業務でいろんな世界を見てみたいと思ったからです。

その点で言えば、現時点で3社目となる現職は製造業に関連した業務改善などを行うコンサルティング業務で、しかも、僕が入社したのは創業から半年後。元々事業立上げ期に支援してくれた方などもいたので、僕は4人目の社員として、セクショナリズムもへったくれもない会社に入社することができました。(が、紆余曲折ございまして、新たな会社でお世話になることになっています。その点少しバイアスを含んだ書きっぷりになっていたらすみません……)

ベンチャーに入社してみてわかったこと①「ベンチャーはシステム設計に自由度があり、大手はそこそこ使える基幹システムが既にある」

そんな創業期の会社に入社して感じたのは、本当に何もないんだな、ということ。個人のパソコンにホームページの開設のときに利用したことがあるようなサーバーの情報をメールサーバーとして設定し、メールを開通する。セキュリティなんてあったものじゃないです。また、出退勤や経費処理なども全てエクセルでフォーマットはあるものの、手入力して、社長が銀行にいって口座入金をする。情報共有も全て口頭かメール。

あえてネガティブを全面に押し出した形で書きましたが、一方でその中でITツールの運用が得意な方がいればいろんなツールを使って自分のやりたいようにできる可能性があるというのは大きなメリットだと思います。お金を生むための業務と並行しながら今や巷にいろんなツールが溢れている中で、それを社内の基幹システムとして運用できる体制を構築していくっていうのは会社が自分色に染まっていく感覚としてなかなか味わえない経験だと思います。(そもそもそこまで創業間もない会社に入社する人はかなりの少数かもしれませんが……)

ただ、ここに一つ落とし穴というか、見落としがちな点があって、そもそもITリテラシーが低いメンバーが集まっていた場合、どれだけツールの導入によって業務効率があがるとしても強い反発にあうということと、やりたいことを理解してもらうのに骨が折れるということ。この点は会社の事業形態やそれに伴う年齢構成によって大きく異なると思いますが、「選択できる自由があるからと言って、それを使いこなせるメンバーなのか」という点が制約条件になるなど、一筋縄ではいかない可能性は理解しておいた方がよいかもしれません。

この点、大手の視点でみれば会社の方針にもよりますがセキュリティも性悪説に基づき基本的には「情報を抜こうと思っても簡単には抜けない」システムになっているし、勤怠や経費処理、その他データベースなど、基本的にはツールは構築されているので、多少の不自由さはあるにしろ、全体最適されたシステムが構築されているケースが多いと思います。そして、社内の基幹システムに携わる人は、おそらくその業務だけに従事する形ですし、逆にそうでない人は基本的にはシステムに対してどうこういうことはあまりないかと思います。(もちろん、部署異動など転機もあると思いますが、機会は少数だと思います。)また、例えば営業系の仕事をしていて「こんなシステムあったら便利だよな」と思ったとしても、導入するのはかなり骨が折れるかもしれません。(小さなシステムであればIT部門に提案するとか、上司に相談するとか、できないこともないのですが、道のりは結構遠いと思います。)

ベンチャーに入社してみてわかったこと②「スピード感や決裁権は会社それぞれ」

次の点は、スピード感や決裁権についてです。よくベンチャーは裁量権があるからスピード感をもって仕事を進められる、と聞きますが、これは会社によって大きく異なると思います。決裁権とスピード感には相関があると思っていて、決裁者がその事業のトップで、(多くのベンチャーの場合は社長でしょうか)そのトップが全て決めないと先に進まない場合は、従業員の人数や仕事の振り分け方にもよりますがスピードのボトルネックは決裁者になります。一方で、後述する話と関係する部分もありますが、創業間もない創業者の多くは会社は自分の資本で興している場合が多いため、決裁権を簡単には他人に譲れない場合も多いのではないかと思います。そうなると、全ての仕事において何かしらの判断をするのに創業者である社長の決裁を受領しなければならなくなるため、業務拡大のスピードと権限委譲のタイミングが合わなければ結果的にスピード感をもった経営ができなくなるというわけですね。そして、一言で決裁権といっても色々あって、例えばコンサルの業務で言えば顧客に出す議事録のチェックまでやらないと気が済まないのか、それとも少なくとも提案書はチェックさせて欲しいと思っているのか、など、この点の理解もベンチャーの仕事のスピード感を感じる上で一つの参考指標になるかもしれません。

では大手ではどうだったか。この点は決裁する金額に応じてスピード感が異なるという印象です。決済する金額に応じた決裁者がそれぞれいて、おおよそのイメージは100万円以下であれば次長クラス、数百万円台で部長、数千万円で部門長、といった感じですかね。(もちろん、会社によって役職名や認められている金額が異なったりするのであくまでご参考までに。)なので、数千間年のシステムや設備導入をします、なんてことになったら部門長決裁なのであれやこれあと資料作成や社内承認のための説明に3~6ヶ月くらいくらいかかる感じです。もちろん、大手といっても会社によって大きく異なる場合はあるかもしれませんが。また、仕事の裁量でいえばこれは部署や上司の方針によって様々で、前職のときは始め5年くらいは超絶放任主義の上司にあたっていたので議事録のチェックなどはほぼなかったですが、残り3年くらいは細かな管理をされました。ただ、ボトムアップで何か大きなコトを動かそうと思うと、必然的に大きなお金が動くため時間がかかる。それが大手のスピード感かなと思います。(トップダウンのプロジェクトは別問題。どこからお金と人が湧いてくるのか、というほど湧いてきて、その代償として無理難題のスケジュールをぶっ込まれる感じです。)

ベンチャーに入社してみてわかったこと③「株を誰が持っているかが大切(かもしれない)」

これまでの話はどちらかというとなんとなく言われてきた話だし、僕もイメージできていた部分ですが、これから書く部分が僕の中では最も衝撃が大きかった部分かもしれません。先に言っておきますが、ここに書くのは極論です。ただ、社長がその会社の株を全て保有しているのであれば、法に触れなければ社長が何をしても問題ない、というつもりで考えた方がよいかもしれないということです。

どういうことかというと、前述の通り、自社の株を全て社長が持っている前提で話をしますが、極論を言えば、社長は従業員を雇って、仕事をやらせて儲けがでているのであれば、全く仕事をしなくても良いし、会社で得たお金を税務署の監査に引っかからない程度に会社経費として様々なことに利用するのは問題にならないと言うことです。

これが会社を経営するということであり、元々会社を興すときに自己資本を投資する人の権利です。法人とは言うものの、未上場の会社というのは、社長の私有物なんですよね。だから、社長が働いていないけど給料を沢山持って行くし、接待費をジャブジャブ使っても、従業員に契約上決められた給料を支払っていれば、従業員は会社の指示に従わざるを得ないのです。

もちろん、世の中の非上場のベンチャー企業の経営者や、経営者の親族が全て株を保有している会社が全てそう思っているかと言われると、そうではない場合もあると思うのですが、前述の可能性が少なくともあるし、何なら経営者を目指す人というのはそれくらいの意気込みがある人が多いのではないかという気もなんとなくしています。

これが大手の場合は当然異なります。大手はいろんな人が株を持っていて、その株主に還元することを一つの使命にしている会社が多い(全ての上場企業がそうではないかもしれませんが)。だからこそ、経営者だろうが会社は自分の物ではなく、株主のものであり、従業員のものであり、社会のものである、という意識が働くのかなと思います。そもそも、大手の経営者は1代社長でもない限り自分で会社をはじめから経営してきたわけではなく、下積みから紆余曲折合って社長をやっている方が多いでしょうから、その点も少しベンチャー企業の経営者とは気質が違う部分があるかもしれませんね。

そして、大手にいれば正直経営者の顔を見ることなんて、入社式か、社内ページか、何かの表彰式か、そんなところだから経営者が何を考えているかなんてあまり気にならないかもしれません。一方でベンチャーにいれば、相当な頻度で顔を合わせるんですよね。そのときに、会社は社長の私物であり、ツールの一つだと感じたときに、それでもその社長にツールとして使ってもらいたいか、ということになるわけです。

もちろん、繰り返しになりますがベンチャー企業の社長の全員が立ち上げた会社を自分の私物だと思っているわけではないと思いますが、立上げの苦労やリスクを考えたら多少なりとも思ってもそう仕方ないと思うんです。ただ、その事実を知った上でも、その社長について行きたいかと思えるかどうかは、社長の人柄に全て既存してくるのではないかなと思っています。

個人的視点の大手に向いている人、ベンチャーに向いている人

ここまで、システムの視点、スピード感の視点、そして最後は経営者の考え方という3つの視点で大手とベンチャーの違いを僕なりに書かせていただきましたが皆様いかがだったでしょうか?

冒頭で申し上げたとおり、どっちが良い、どっちが悪いではないし、大手でもベンチャー寄り、ベンチャーでも大手寄りの会社があると思うので一概にどっちがどう、ということは言いにくいかなと思います。人それぞれ、大切にしたいと思う切り口も違うと思いますしね。

ただ、その上で僕の個人の主観で大切だと思うのは、結局仕事は「何をするか」よりも「誰とするか」だと思っています。例えば自分の好きなことを嫌いな人とやってお金を大量にもらえる仕事と、自分が好きではないことを好きな人とやって生活できる最低限のお金がもらえる仕事であれば、僕は後者を選ぶかなと思います。

その観点で言えば、大企業は上司がそこそこの頻度で変わりますが、ベンチャーは会社の規模にもよりますが間に入る上司が変わることはあっても、社長はそこまで替わらないのではないかと思います。

だから、本当に信頼できる、この人の手足となって支えたいと思える人がいるのであればベンチャーは良いかもしれない。逆に、大手であれば気の合わない上司にあたったとしても異動ができたり、周囲の人がサポートしてくれるような環境だったら良いのかもしれない。後は、前述の3つのポイントや、一般的なベンチャーと大手の違いの観点かはその人の大切だと思う強さで重み付けして、業種の規模選びの軸の参考にしていただくと良いかなと思います。

というわけで、長々と書きましたが参考にしていただけそうでしょうか?僕の拙い経験が、このnoteを読んでいただいたどなたかの一助になればこれ以上嬉しいことはありません。何かありましたら、何なりとご質問でもください。

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