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"サーチX" ファッション編(後編)

こんにちは、ヤフーのオープンコラボレーションスペース「LODGE」です。今回は2020年8月20日にオンラインで開催された「Mix Leap Joint "サーチX"」後半のレポートをご紹介します。

前編はこちら

角さん
「コロナで実際に会う機会が減りましたが、これからまたファッションの流れも変わっていくのでしょうか」
金山さん
「一週間前、個人的にツイッターのアンケート機能で聞いてみたんです。リモートワークの時に、下は何を着ていますかと。結果、部屋着が50%でした。今後、ボトムス専業のところは今後同じような消費の強さを感じることがなくなるかもしれないなと思いました」

3. コロナとファッション

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池宮さん
「このグラフでは、2018年~2020年の3年間の検索数の推移を週単位で見ています。2018年・2019年で同じような検索ボリュームがありつつも今年激減しているもの、を選んでいます。浴衣、水着、甚平、ビーチサンダルなどで検索数が減ったことが分かります。また、浴衣の激減に伴い『帯の締め方』なども激減しました」

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池宮さん
「また、『コーデ』と掛け合わせて検索されるワードを見てみると、例えば1位のプチプラコーデは2019年に比べて63%に落ち込んでいます」
藤嶋さん
「今の生活は、お出かけをする機会が減りました。いろいろなアイテムをたくさんほしいというよりは、おでかけには質の良いものを一つ持っておけばよくて、普段の生活は部屋着でもいいかな、と変わったのかもしれない。プチプラコーデの使い方や需要が変わっているのかなとも思います」
角さん
「外出の頻度の変化にあわせて、買い方の変化もあるのではないかということですね。2020年7位にランクインしている『シアーシャツ』は、どんなアイテムですか? データを見ると、2020年7月あたりに急激に突出したように見えます。そのタイミングでどこかで紹介されたのでしょうか?」

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藤嶋さん
「シアーシャツは透け感のあるチュールやオーガンジーの素材のビッグなシルエットのシャツで、インナーの上にゆるく羽織るアイテムです。いろいろなブランドからシアーシャツが出ていたと思います。特にインスタグラムでPRするブランドが多く出していた印象があります。SNS中心に広まったアイテムという感覚があります」
角さん
「SNSにプロモーションがシフトしていったところと、その成果がグラフに出ているようにも見えますね」
藤嶋さん
「インナーの上に羽織るだけで完成するので、普段は部屋の中でキャミソールで過ごしている人がオンラインミーティングの時に羽織るとか、特に今年のライフスタイルに合っていると思います」
角さん
「たまたまかもしれないけれど、今年にフィットしたということですね」

4. 悩みとファッション

池宮さん
「次に、ファッションの悩みの抽出分析を使ってみました。よく検索されているワードを1枚の画像に抽出する分析手法です。すべてデータを出すと見きれないので、特に多いものだけをネットワークにして表現しています」

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池宮さん
「特に大きいのがサイズ関係の悩みですね。メーカーによってサイズ感が違う悩みがありそうです」
金山さん
「ここがまさしく我々が技術で変えていきたいところです。同じ27センチでもブランドが異なるとサイズ感が異なってくる。それが靴選びを難しくしていたと思います。これを試着なしで解決するソリューションが『ZOZOMAT』。ZOZOMATで足の形を測っていただき、我々のアルゴリズムを使ってその方の足に合わせた最適なはきごこちの靴を推薦するものです」
角さん
「どうやって足のサイズを測定するのですか」
金山さん
「無料でお配りしている『ZOZOMAT』と呼ばれている紙のマットの上に足を置いていただいて、スマホで撮影するだけです。コンピューターが位置を認識しやすいように『ZOZOMAT』には模様がついていて、撮影された写真をもとに我々のアルゴリズムがお客様の足のサイズを機械的に再構築、分析して靴とマッチングするというものです」
角さん
「足の大きさだけでなく、甲の高さなども測定できるのですか?」
金山さん
「はい、靴下を履いた状態の足の形で立体的にとらえることができます」
角さん
「俄然使ってみたくなりました。すばらしいですね。ではサイズの悩みはZOZOMATで解決できますね」

5. ファッションペルソナ

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角さん
「『あいみょん』ファンの好きそうな服、アイテムを抽出した結果がこれだそうです。ZOZOのお二人はこれを見てどう思いますか?」
藤嶋さん
「手に入りやすいものが多く、年齢層が若い印象。ナチュラル系だけでなくコンサバなブランドも入っていて面白いです」

このほかに「Official髭男dism」「美空ひばり」での分析結果が紹介されました。Official髭男dismファンはあいみょんファンよりも少し年代層が上のように見えます。また、美空ひばりファンのペルソナで見ると「イッセイミヤケ」「プリーツプリーツ」など値段が高いブランドも表示されました。アーティストによって検索するアイテムの傾向は大きく変わることが分かりました。

角さん
「池宮さん、これはどのように分析しているのですか?」
池宮さん
「ヤフーでは『あなたにおすすめ』『この本を買っている人はこの本を買っています』というレコメンドがよくありますが、アーティスト名での検索傾向とファッションジャンルの検索傾向とを、ジャンルを超えて掛け合わせたものです。その分析手法を用いてアーティストからファッションを抽出してみました」
金山さん 
「例えば車のブランドで同じように分析ができれば、アイテム同士を組み合わせてマーケティングに活用できますね。自社のブランドマーケットがデータで裏付けされると嬉しいと思います」

おわりに

金山さん
「皆様ありがとうございました。面白かったです。ファッションは今の我々の技術ではどうしても定量化して読み切れない部分があり、人間の想像力を使って解釈せざるを得ない部分が多いです。例えば金融の世界などは、デジタルで予測され、人間が意味を考えなくてもよい部分が出てきています。でもファッションの分野は、人間にしか上手に扱えない部分があるので面白いと、改めてこのイベントで感じました。とても楽しかったです」
角さん
「ロジックじゃない部分の比率のほうがずっと高い世界なので、まだまだ人間の手触りを楽しめる感じがしましたね。ありがとうございます」
藤嶋さん
「本日はありがとうございました。私はずっとファッション誌やファッションの歴史資料を人間の解釈を交えて考えたりといった質的な研究をしてきたので、このようなビッグデータやデータサイエンスの力を使ってファッションを読み解こうという試みは、ファッションの研究の方法論のなかではとても新しくて新鮮なことだと思っています。特にファッションは業界の力が強く、『ファッションはこうだろう』『流行ってこういうものだろう』というみんなの認識をもとに戦略が組まれたりPRされたりして続いてきた産業だとと思います。こういった分析によって、もっと有効なやり方がもっとたくさん見つかるのではないかと思っています。今後こういったアプローチが増えていくことをとても楽しみにしています」
角さん
「池宮さんの活躍の場がもっと広がって行くのではないかなと思います。次回もまたやっていきたいと思います。ありがとうございました」
中川さん
「データから紐解かれるファクトが、予測通りだったり予想外だったりと、いろいろな発見がありました。これがデータの魅力なのだと思います。またサーチ"X"の第7弾をお届けできたらと思います」


イベント概要
MixLeap Live Joint #35 - "サーチX"ファッション編
2020/8/20(木) 20:00~

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