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位置情報がハッキングされる?「なりすまし」を防止する日本版GPSみちびきの信号認証技術

LocationMind のMarketing Manager斉藤です。私が所属しているSpace Divisionでは「信号認証」サービスを提供しています。新しい技術なので聞いたことがない!という方も多いと思います。そこで、「信号認証」とは何か概要をご説明したいと思います。

自動車や船舶、近年ではドローンなどのナビゲーションや時刻同期など、社会の重要なインフラとしてGNSS(全球測位衛星システム)は世界的に幅広く活用されているのをご存じでしょうか?日本においても準天頂衛星「みちびき」のサービス開始による高精度測位が注目を集めています。

このようにGNSSの重要性が増す中で、そのセキュリティ面の課題について注意が必要となってきています。

例えばGPSが搭載された自動運転車や配送ドローンが移動中に、ハッキングされたらどうなるでしょうか。位置情報をもとに動いているはずの車両が事故を起こしてしまったり、ドローンによる配送では荷物が奪われてしまったら大変ですよね。

こうしたハッキングのための妨害電波を発生させるのに、高価な機器は必要ではなく、わずか数万円の機器で妨害可能なのです。

さらに、GNSSは位置情報だけでなく、時刻情報も提供している。もし、GNSSがハッキングされ不正確なタイムスタンプが押された場合、スマホの基地局網や銀行システムなどが混乱する可能性も出てきます。

このようにDX推進が高度化するほど、GNSSが提供するデータの真正性への重要度が増してきています。ではこのような妨害行為に対する対策はどうなっているのでしょうか。

みちびきの信号認証技術とは

内閣府では、2023年中を目処とした日本版GPSと言われる準天頂衛星「みちびき」の妨害電波対策等のセキュリティ機能の向上の計画を発表しています。

セキュリティについては、なりすまし(欺瞞またはスプーフィング*)対策として、航法メッセージに認証情報(電子署名)を付与する機能である「信号認証」が 追加されます。ユーザーは、電子署名を確認することで、信号の安全性が確認可能となる仕組みです。

*スプーフィングは無線干渉の一種で、受信機(ユーザー)をハッキンして誤った位置情報を表示させます。例えば、数万円程度の安価なデバイスを使用して、スマホを騙して現在地が日本であるにも関わらず、エベレスト山頂の現在地を表示させるなど、簡単に位置欺瞞を実行することが可能です。スプーフィングによる悪意ある「なりすまし」攻撃は検知が難しいため対応策が重要なのです。

スプーフィング対策となるみちびきの信号認証技術は、東京大学柴崎研究室で開発された「GNSS信号認証」の手法をベースにしています。本技術は、現在、LocationMind(株)にライセンス供与されています。

みちびきの「信号認証」はいつから使えるの?

内閣府の発表によると、2023年度末から、みちびきが7機体制(現在4機)となり、信号認証が提供される予定です。

海外では「信号認証」は使われているの?

それでは海外での「信号認証」の状況はどうなのでしょうか。
信号認証は、欧州の測位衛星「Galileo」が実証を先駆けて行っており、最も実装に近い状況にあります。Galileoの認証サービスはOpen Service Navigation Message Authentication (OSNMA)と呼ばれています。

アメリカのGPSについては、一般向けの認証サービスは現時点で提供されておらず、ミリタリー向けのサービスがあるのみのようです。

欧州EUSPA「Galilleo」のOSNMAサービス

欧州連合宇宙計画庁(EUSPA)によりガリレオのOSNMA(日本の信号認証にあたる)のワークショップが2月に行われました。ビジネスサイドの反応についてEUSPAの発表をまとめました。これにならい、受信機メーカ、モビリティ、スマホ関連企業の協調した足並みが日本においても信号認証普及のカギとなるようです。

●受信機メーカ:Ublox、TeleOrbit、Fraunhofer IISは、自社のプラットフォームにOSNMA機能を搭載する準備をしている。Safran Electronics & Defence(旧Orolia)のようなシステムインテグレーターは、OSNMAを独自の販売提案を強化する手段とみている。Norwegian Metrology Serviceは、時刻同期で検討中。
●モビリティ:最も有望な分野の1つ。モビリティサービスプロバイダーのSixtは、ライドヘイリングやカーシェアリングアプリケーションにおけるOSNMAの重要性を強調している。
●スマートフォン:Airbus Defence and Space社は、大衆市場向けチップセットがAndroid APIを介してOSNMAデータの処理の可能性を確認しており、より広範な採用のための有望な機会と見ている。
●スマートフォン:OSNMAをスマートフォンに導入するためのソリューションが、GNSS認証のリーディングカンパニーであるQascomによって提示された。アシスタンスデータを通じて、性能の向上、簡単な実装、どんな条件でもホットスタートが可能。

LocationMindの信号認証サービス

LocationMindでは、みちびきの7機体制に向けて、信号認証サービスの実装化を進めています。実証を通じて技術課題やユースケースについて検討しています。信号認証がどのように社会に役立つの?といった疑問をもたれた方のために、上の図において、みちびきの認証機能が利活用可能な関連性の高い市場セグメントとユースケースのイメージ概要を示しています。

協業やわたしたちとのパートナーシップに興味がある方は、こちらで問い合わせをお待ちしています。

まとめ

出典:内閣府 公式みちびきウェブサイト

いかがでしたか?

位置情報を使ったスマホや自動運転のなりすまし防止に「信号認証」技術が役立つことをご説明しました。信号認証技術の利活用については、ユーザーコミュニティの構築や業界を横断した意見交換などがその発展には必要です。

もしLocationMindや信号認証について、ご関心・ご質問がありましたら、
こちらにご連絡お待ちしています。

またLocationMindでは採用も積極的に行っていますので、ご興味のある方は
こちらをご覧ください。