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日本の文化と歴史を、サウナの中に融合させていきたい 九州とサウナ×糀屋総一朗対談2

ローカルツーリズム株式会社代表・糀屋総一朗と、それぞれの地域で新たなことに取り組む方の対談。今回は、九州のサウナを紹介するWebサイト『九州とサウナ』マガジン編集長のタカハシさん、プロデューサーのカナザワコウキさんのお二人にお話をお伺いしました。対談の2回目は、お二人が特におすすめだと思うサウナ、これからのサウナのあり方についてです。

オフラインのコミュニケーションで輪が広がる

糀屋:『九州とサウナ』のメディアのスタートから1年。周りの反響はいかがでしょうか。

カナザワ:予想以上でしたね。読者層は、サウナに関わる事業者や、商工会議所の方、そして地域の方が多く、たくさんの反響を頂いています。メディアを作ったことで、サウナのイベントでも声を掛けてもらう頻度が圧倒的に増えました。自分たちの活動に共感してくださる方が多いのは、非常にありがたいなと。

糀屋:サウナを通して、みんなが繋がっていきそうな。

カナザワ:オンラインとオフラインのハイブリッド(組み合わせ)で、皆さんの接点が増えたのは、すごく良かったなって思いますね。

タカハシ:メディアは、一方的にこんな情報ありますよと、記事や内容を伝え、SNSなどオンラインでコミュニケーションを取っていきますよね。でもユーザーとのコミュニケーションという点では、オフラインのコミュニケーションにほぼ集約される気がします

たとえば昨年秋に、博多阪急さんとタイアップイベントを開催したんです。7日間開催する中で、サウナユーザーの方々と私たちの関係が広がりました。また、博多阪急さんの担当者の方も、何か一緒に面白いことをしようと声を掛けてくださったりと、そういった縁はすごく増えていますね。

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糀屋:普通のビジネスの交渉と違って、サウナ好き同士だと話が分かり合えるみたいな感じはあるんですか?

カナザワ:不思議と仲間意識が芽生えるような雰囲気はありますよね。何か楽しいことを一緒にしようかって。それに、サウナで初めましてのときは、そもそもお互い裸なんです。防御力0の状態で会うので、話しやすいのかも(笑)。

「九州とサウナ」厳選のオススメサウナ

糀屋:ところで九州のサウナを聖地化するというお話がありましたが、特にここのサウナは是非見て欲しいといったサウナはありますか?

カナザワ:たとえば大分県豊後大野市は、2021年7月に市がサウナの街宣言をしています。そもそも大分県は温泉が多いんですが、豊後大野市に限っては温泉が一切湧かない街なんです。一方で、非常に綺麗な清流が流れていて自然も豊か。重要文化財にも指定されている日本古来の石風呂や鍾乳洞もあります。

そういった場所でサウナ体験をするために、大分県内・外からも足を運ぶ人が増えています。

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タカハシ:あと、バレルサウナと言われる樽のサウナもお勧めしたいです。今後のサウナの兆しとして『スモールサウナ』が普及していくと考えていて、バレルサウナもその一つです。スモールサウナは、いわゆる施設の中にあるサウナではなく、可動性があったり、ある程度気軽に導入できるサウナですね。

ただ、日本にあるバレルサウナは、海外の輸入に頼る部分が大きいんです。主にロシアやエストニアから輸入されることがほとんどでした。しかし、これを国産、宮崎産の木材を100%使って、地産地消の観点で作られている会社がOne sauna(ワンサウナ)さんです。日本で安心安全なバレルサウナを手掛けている事業者さんの先駆けとなった存在ですね。先日宮崎で直接お話を伺ってきましたが、非常に思いをもって手掛けられている事業者さんでした。

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糀屋:デザインがカッコいいですね!しかも国産の木を使ってるのが、めちゃくちゃいい。

歴史も文化もサウナに詰め込む

カナザワ:あと、なぜ九州でサウナなのか。北海道や高知県でも、サウナで何かしたい人は増えています。たとえば北海道は、雪があって、圧倒的な自然の迫力を売りに足を運んでもらう。では九州はどうか。九州は、地域の資源、歴史文脈、思想まで掘り下げて、そのままサウナに詰め込むようなこともやっているんですよ。例えば、福岡県筑紫野市『天拝の郷』には、菅原道真公へのオマージュした和サウナとして、リノベーションされたサウナがあるんですよ。天拝山で、菅原道真公が山頂で祈りを捧げたシーンをタイルで描いた空間もあります。

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タカハシ:あと、僕はやっぱり、熊本の『湯らっくす』が原点だなと。『湯らっくす』の西生社長が面白い。西生さんは、アメリカに映画監督を夢見て留学されていた経験もあって、根っこがエンターテイナーな方です。発想も面白くて、非常に気骨もある方で。西生社長曰く、「フィンランドのサウナに学ぶことも大きいが、オリジナルを追及していくことも大切だ。これがちゃんと出来ていくと、九州は海外からサウナに入りに来る観光客の一助になれる」と、当時も仰っていました。

そういった意味では、フィンランドサウナや日本古来の蒸気浴をベースとしながら、独自の思想やその土地の良さ、エンターテイメントを掛け合わせて、新しいサウナ観を創造していく。ポスト『湯らっくす』のような存在が九州の中に増えて行くことも、結果的に九州をサウナの聖地として押し上げていくひとつの要素になるのかなと。

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糀屋:僕の造語ですが、ローカルエリートという言葉があります。僕自身も地域で働いているけれど、地域で活躍している人たちって共通点があるように思っていて。いわゆる偏差値エリートとかでは全然なくて、地域で事業を起こして、地域のためにお金を還元していく人たちです。
僕、地域再生で一番問題なのは、地域の人たちが一番地域のことをよく知らないなって思っていて。地域の人達が、自分の地域の魅力を一番よく分かっていない。これって構造的な問題で、地域の人達だけで解決するのってすごく難しいと思うんです。僕ですら、最初に大島に行ったときは「大島素晴らしい!」って感動していたけど、2年ぐらいたったらその感動も常態化していて、当たり前の風景になってしまった。だから、それを超えていくのは外の目だと思う。

たとえば、アメリカで勉強したり、仕事をした経験がある人は、地域の中では全然違う感覚をもっているはずです。そう考えると、『湯らっくす』は単なるサウナじゃない。地域の価値として新しくマーケットに乗せて、それを外に売っている。やっぱり日本で重要な人材ってこういう人だと思いますよ。都市の魅力ってあるけど、それを2倍3倍に増やせるかっていうとなかなか難しい。

今、日本の地域はまだまだ人材が足りないけど、掘り起こす価値はいっぱいあると思う。そういうのを掘り起こすのってめちゃくちゃ重要で、それを事業化して、作っていくって相当高度な人材だと思います。

タカハシ:色々な哲学をもった代表の方が運用されているサウナの中でも、西生さんが与えている影響って全国的に考えても非常に大きいんじゃないかなって。外側だけ見てっていうのではなく、その指標みたいなところに触れられて、きっと感化されてるんじゃないかなって思いますね。

「九州とサウナ」マガジン

(構成・松永怜)

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