マガジンのカバー画像

255文字書評

20
1冊255文字のコンパクトな文量で、おすすめ本を紹介します。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

「255文字書評」はじめます。おすすめ本をコンパクトに紹介します

もう長いこと、本は新刊ばかりを追いかけるように読んできた。 図書館の入荷状況を日々チェックして、誰よりも早く借りようと努力してみたり。 でも、ふと「過去に読んで良かった本を振り返ってみようかな」と思い立った。 発売日が古い本だって、質の良い本はいつ読んだって得るものがあるはず。 今なら、古い本でもAmazonやKindle版(電子書籍)で入手は簡単だし。 それに古い本ならば、図書館でも借りやすいし。 なんだ、いいことずくめではないか! ということで。 自分が過去に読んで

【255文字書評】復活への底力 - 運命を受け入れ、前向きに生きる/出口治明 著 (2022/07)

体調不良でお休みされているとは聞いていましたが、脳出血という大病だったとは存じ上げませんでした。 ライフネット生命の創業者で、現在は大分県の大学(APU:立命館アジア太平洋大学)の学長を勤めている出口治明さんの1年間のリハビリ闘病記。 右半身の麻痺と失語症(発話障害)を患っても、ひたすらポジティブにリハビリに向かう姿。あふれるバイタリティと向上心。ブレないその姿に驚くとともに感動しました。学長への復帰おめでとうございます! 「人生は楽しまなければ損」 「知識は力なり」

【255文字書評】あなたの人生がつまらないと思うんなら、それはあなた自身がつまらなくしているんだぜ。/ひすいこたろう 著 (2015/11)

痛快ポジティブシンキング。 日常のうれしくない出来事の「ものの見方」を変える70のヒント。 著者の考え方は、至ってポジティブ。 ポジティブすぎて、笑えてきちゃいます。いい意味で。 楽しい言葉の中にも、強いメッセージが込められているのが伝わってきます。 「ものの見方」つまり「解釈」を変えることで「感情」が変わり「行動」が変わる。 解釈の違いひとつで、物事はここまで違って見えてくるというお手本になりそうです。 「自分は正しい。だから、相手が間違っている」と決めつけずに、相手

【255文字書評】落語の目利き/広瀬和生 著 (2022/05)

コロナ禍前から渦中の4年間(2017年8月〜2021年9月)の落語界の最前線。 面白いのに、読んでも読んでもなかなか先に進まない、濃厚な一冊。 雑誌の連載をまとめたものだが、書籍化にあたり落語家順に並べ替えてあるので読みやすい。 三遊亭兼好さんによる似顔絵の挿絵も楽しい。 落語を聴くのが好きな人なら、きっと面白く読めるはず。 さらに噺家さんの顔と名前が一致する人ならば、なおさら楽しく読めると思います。 読み終えるのに6時間もかかってしまったけど、楽しい時間を過ごせました

【255文字書評】その本は/ヨシタケシンスケ, 又吉直樹 共著 (2022/07)

不思議な本である。 自分が今までに読んだことのないタイプの本だ。 「リレー小説」というものでもないし、強いて言えば「ショートショート」か。 でも急に長い話が出てきたりしてドキッとする。いつまで続くのだろうとドキドキしながらページをめくる。 二人の著者で交互に書かれているところがミソで、飽きさせない。 装丁が実に凝っているところも楽しみの一つ。 気がつけば予想外に1日で読み終えてしまった。 「今までに読んだことのないタイプの本」と言える本に出会ったというのは、なかなかすご

【255文字書評】楽しく学べる「知財」入門/稲穂健市 著 (2017/02)

自称「知財オタク」で、変な発明を収集している方が書いた、知的財産の本。 地味なタイトルだけど、事例が豊富で、まさに「楽しみながら学べる」本。 知的財産権と言えば「特許権」が真っ先に思い浮かぶが、本書では親しみやすい「著作権」と「商標権」から先に説明しているところが良い。 そのおかげで、面白い事例とともに、どんどん読み進めてしまう。 最後の章の「法律で定められた以上に過敏に著作権などに反応してしまっていないか?」という考察は、とても興味深い。 ところどころにユーモラスな表

【255文字書評】鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。/川上和人 著 (2017/04)

文庫版単行本版小笠原諸島を主な調査地としている鳥類学者さんによる、鳥にまつわるいろいろな研究エピソードがつまったエッセイ。 …なのですが、学者さんとは思えないゆるい筆致がいたるところに。 本題に関係ない、あちこちに散りばめられている言い回しがいちいち面白くて、病みつきに。 鳥のことに全く興味がなくても、読み物として楽しく読めること請け合いです。 Kindle版の無料サンプルも長めなので、サンプルでも本書のテイストは十分伝わるかと思います。Kindle Unlimite

【255文字書評】すばらしい人体 - あなたの体をめぐる知的冒険/山本健人 著 (2021/09)

この本を読んでいるうちに、子どもの頃に読んだ『学研まんが からだのひみつ』のことを思い浮かべた。 そんな知的好奇心を満たしてくれる楽しさを思い出させてくれた本。 第1章では、それぞれの内臓の役割について。 例えば「膵臓」は、三大栄養素をすべて消化できる。 だから、膵臓が損傷して体内に液漏れすると、自分の体を消化してしまうので一大事になる。 なるほど、分かりやすい! 著者の医学に対する敬意が、そこかしこに感じられる。 人体、病気、医学史、健康トリビア、現代医療。 医学のさ

【255文字書評】なぜ、ぼくのパソコンは壊れたのか?/マイナク・ダル 著 (2013/05)

この本は、私が大好物のジャンルの「ストーリー仕立ての自己啓発本」。 1〜2時間で読めちゃう薄い本なのに、こりゃいい本です。 働き方改革(ワーク・ライフ・バランス)の本。 原題は「キュービクル宣言:働き方を変えて新たな人生を始める方法」。 仕事に追われて、つい後回しにしている「自分の人生(言い換えれば日常)にとって必要なこと」を会社のパソコンに潜り込んだウィルスが手取り足取り教えてくれる、という一風変わったストーリー。 日々の仕事に忙殺されて忘れがちになってしまう大切なこ

【255文字書評】うつ病九段 - プロ棋士が将棋を失くした一年間/先崎学 著 (2018/07)

文庫版単行本版将棋プロ歴30年の棋士の、うつ病リアル体験記。 簡単な詰将棋も解けなくなってしまった自分に愕然としつつも、1年後の復帰を目指してひたむきに将棋と向き合う姿が印象的。 症状はヘビーな状態ながらも、淡々と落ち着いた文章で書かれていて、読みやすい。 いい意味で、感情を揺さぶられすぎずに読めた。 うつ病は「心の風邪」ではなく「脳の病気」。 「うつ病とはどういう病気なのか」を理解する助けになると思う。 将棋の知識ゼロでも読める内容。 著者の年齢と近いこともあり、親近

【255文字書評】目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗 著 (2015/04)

ヨシタケシンスケさんの絵本『みえるとか みえないとか』(2018年) が面白かったので、絵本の元となったこの本を読んでみた。 目の見えない人がどのように世界を「見て」いるのかを解明する本。 「空間」「感覚」「運動」「言葉」「ユーモア」という5つのテーマ。 自分にとっては新鮮な内容で、とても興味深く読んだ。 自分は、目の見えない人の多くは点字が読めると思っていたのだけれど、「見えない人の中で点字が読める人はわずか1割程度しかいない」という事実を知って驚いた。 伊藤亜紗さん

【255文字書評】チーズはどこへ消えた?/スペンサー・ジョンソン 著 (2000/11)

「状況は変化しているのに自分は変わろうとしてないのかもしれないな。そう思ったことはない?」(p.13) ストーリー仕立ての自己啓発本。 状況の変化と向き合う本。 変化には恐怖がつきものだけど、「もし恐怖がなかったら何をするだろう?」(p.42) と考えて行動し、変化を楽しむように新しい方向に踏み出せば、恐怖から解放され、変化に適応できる。 自分には耳の痛い話で、今までこの本を読んでこなかったことを後悔した。 この本は、現在なんと91刷。長く読み継がれている本。 薄い本

【255文字書評】睡眠障害の診断と治療/山口祐司 著 (2019/09)

一口に睡眠障害と言っても、入眠障害、中途覚醒、昼間の眠気、異常行動など、いろいろな種類があるのだな。 それぞれの睡眠障害ごとに症状・症例・治療法が具体的に書かれていて、イメージしやすい。 中でも症例の説明がとても具体的かつ簡潔でリアリティがある。 診断時の判断基準が明確なので分かりやすく、どのような投薬治療をしたら症状が治ったのかも書かれている。 たとえ寝付きが悪くても、中途覚醒しても、昼間の生活に支障がなければ「睡眠障害」とは呼ばないらしい。 平易な言葉でとても読み

【255文字書評】ローマ法王に米を食べさせた男 - 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?/高野誠鮮 著 (2015/06)

農村の市役所で働く「スゴ腕公務員さん」の町おこし奮闘記。 もう何というか「痛快」の一言。 発想法が飛び抜けています。それでいて結果がついてくるから、すごい。 反対意見だらけだった農村の人達を、不思議なパワーで巻き込んでいきます。 とにかくエネルギッシュ。破天荒だけど理路整然。 つらい時期もあったはずだけど、暗い表現は全くと言っていいほど出てきません。 「外国人の洋介」と「返品になった駅貼りポスター」のエピソードが秀逸。 「役人は人の役に立ってこそ役人なんです」という覚悟