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渋沢栄一でハンセン病患者家族に補償金を払うなんてあり得ません!

ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案

はじめに

最近、こんなツイート(ポスト)が万バズしました。

ふだん知人や周囲の人と話をすると決まって「国がやることはみんなのためにやってるから良いことなんじゃないの?」と思っている雰囲気を感じませんか?この国の国民はみな盲目的に政府やその政策の正当性を信じ、官僚や政治家を善意で捉えていると感じています。

しかし、断じてそんなことはありません。私たち国民が払っている(しかも、強制的に徴収されている)税金や社会保険料は「能力のない人たちに金を渡して」その結果「ろくでもないことに使われている」のが現実です。

今回の法案についても一見、当たり前でしょ?と思われるかもしれませんが、以下の経緯を知ると「これでいいの?」と首を傾げることでしょう。

ハンセン病について

本noteではこの度国会で審議されることになった「ハンセン病元患者家族に対する補償⾦の⽀給等に関する法律の⼀部を改正する法律案」(以下「本法案」)について考えてみたいと思います。対象とするものは2024年第213通常国会で衆議院・厚生労働委員長が提出した衆法です。

さて本法案について当noteでは反対法律の存続自体に反対の立場で記述していきます。本題に移る前にハンセン病について簡単に振り返ってみましょう。こちらの動画をご覧ください。

この動画、ハンセン病患者が世界中で差別対象となった経緯と、どんなふうに我が国で差別政策が行われたかがザッとわかります。

我が国の歴史上「癩」はその病ゆえにおこる身体的特徴から人々に嫌悪感をいだかれ、「穢れた存在」として扱われ、さらに伝染病と規定されてきた。このことから癩病が人々から恐れられ、疎まれた病気だったことが理解できる。

日蓮宗 現代宗教研究所「仏教とハンセン病」奥田正叡『現代宗教研究第36号』(2002年03月 発行p153)

この動画にもあるように、癩(ハンセン)病患者が世界的にみて多かったわが国。近代国家と世界に認められるために癩患者隔離政策を取りました。それは、国民に癩病患者を監視させる無癩県運動、特に戦後において強まった保健所を中心とした療養所への強制隔離政策につながっています。
しかし国際的にはすでにこれより以前にハンセン病は弱毒性で隔離を必要としない病気であるとわかっていたのですが。

ハンセン病と渋沢栄一

強制隔離政策に大きく影響を与えたのが、まもなく7月3日に変わる新紙幣の一万円札の図柄となる渋沢栄一でした。NHKの大河ドラマ「青天を衝け」は渋沢の社会福祉についての先駆者としての側面が紹介されています。(最下の質問欄でNHK会長に対する質問を考えました。ぜひ最後までお読みくださいね)

渋沢はハンセン病施設への支援も積極的に行っていました。「善意で」関与していたと思われる反面、特効薬が発見されてからもなお強制隔離や不妊治療による断種政策を強行的に推進した光田健輔医師を支えたことから、結果的には患者を救うのではなく、歴史的に検証すれば間違っていたのではないかという意見も近年は大きくなっています。

ハンセン病と渋沢の関係については日弁連法務研究財団「第二 1907 年の「癩予防ニ関スル件」―強制隔離政策の開始と責任―」『ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書 p55』にも触れられています。下記の社会福祉研究者の講演でも本報告書が基になっています。

この法律改正後、ハンセン病患者への補償金が新紙幣によって支払われることになります。このようなことは政府の贖罪の態度として考えても、配慮に欠けるのではないかと思います。同様のことは次の記事でも言われています。

能力のない者に金を渡すとろくなことに使われない

翻って、ハンセン病に対する政策は官僚の都合という一言です。患者の声を聴かない。業界や医師、弁護士などの意見しか聞かずハンセン病患者の差別を助長し人権を蹂躙した歴史はわが国の政治体制から産まれた最悪の政策だったと言えるでしょう。しかも今でも官僚、政治家の考え方は変わっていないのではないかと思います。

現代で言えばタクシーをやめられないのと同じ。ライドシェアの導入などと言って、タクシー業界、バス業界に大幅な配慮をし、旅行客や交通難民の声を無視しているし、ライドシェアの新技術、新業態としての側面も全く無視しています。マスコミだって悪いと思います。マスコミはハンセン病患者隔離政策に反対を続けた小笠原登医師を糾弾した張本人です(小笠原医師については先の動画を見てくださいね)。

今回の法改正

今回の法改正は「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律(令和元年法律第五十五号)」の第九条補償金の支給の請求に関する期限の延長を定める改正となっています。令和2年が施行日ですので、令和7年に請求ができなくなることを防ぐための改正とされています。(以下は改正前条文)

(補償金に係る認定等)
第九条 厚生労働大臣は、補償金の支給を受けようとする者の請求に基づき、当該支給を受ける権利の認定を行い、当該認定を受けた者に対し、補償金を支給する。
2  前項の補償金の支給の請求(以下この章において単に「請求」という。)は、施行日から起算して五年を経過したときは、することができない。

注)施行日: 令和二年一月二十二日

e-GOV「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律

もともとの法律の意義としては「ハンセン病元患者家族の被った精神的苦痛を慰謝するための補償の支給に関し必要な事項を定めるとともに、ハンセン病元患者家族等の名誉の回復等について定める」となっています。

国のハンセン病対策

現在、厚生労働省のハンセン病対策に関するページでは元患者家族補償金に関する内容がトップになっており、重要視していることが分かります。

改めてハンセン病に関する法律の流れを追ってみます。
以下、厚生労働省「わたしたちにできることから関係部分を抜粋します。

過去のらい病に関する政府の動きと法令について適宜追加した。

明治28年 熊本県にイギリス人ハンナ・リデルが回春病院を設立。

昭和6年 「癩予防法」制定。「日本中のすべてのハンセン病患者を、療養所に隔離できるようになる。」

昭和28年 「らい予防法」制定。患者の働くことの禁止、療養所入所者の外出禁止などを規定。

平成5年 高円宮記念ハンセン病資料館を設立。

平成8年 「らい予防法の廃止に関する法律」によりらい予防法を廃止、厚生大臣の謝罪が行われた。

平成10年 らい予防法違憲国家賠償請求訴訟が提起。

平成13年 原告勝訴により内閣総理大臣談話を発表。衆参両院で謝罪決議。「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」成立。和解に関する基本合意書を締結。厚生労働大臣、副大臣が各療養所を訪問し謝罪。

平成14年 厚生労働大臣による新聞紙面での謝罪広告を掲載し、退所者給与金事業開始。

平成17年 高円宮記念ハンセン病資料館を国立ハンセン病資料館として再開館。

平成20年 「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」施行。

平成31年 「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」を改正し、第18条「家族の名誉の回復を図る」ことが明記される。

令和元年 「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」制定

進んでいない元患者家族への補償金支払い事業

上記のように、国はハンセン病患者及び家族に対し相当な配慮をする政策を十分すぎるほど行っています。余談ですが、いつもよくある手で、天下り先を中心に補償金支給業務を行っています(独立行政法人福祉医療機構「ハンセン病元患者家族補償金支払等業務

しかし対象となる家族が約2万4千人いるとされているのですが、そのうちの8184件(令和6年5月17日現在)の請求しかされていません。なぜ、厚生労働省の把握している人数の請求が行われていないのでしょうか? これは家族のせいではありません。政府の手法が間違っているのであって「患者側から申し出がないので期間を延長します」というのは、役人の上から目線、患者家族側に責任をなすり付ける行為だと思います。
「あいつら来ないなぁ、しゃーないから延長しとくか」と左うちわで待つのではなく、家族を把握してるなら厚労省の職員が自ら配り歩くべきでしょう!

また、ハンセン病問題の根本は過去から続く官僚や医療業界の責任が重大だと考えられますが、なぜ現代の私たちが払っている税金から支払う必要があるのでしょうか。官僚や医療業界(社会保険料から給料を受けている半公務員たち)が自弁で払ってほしいと思うのはおかしな考えでしょうか?

結局「能力のない者に金を渡すとろくなことに使われない」ということの典型だと思います。ハンセン病元患者家族補償金支払事業は政策として失敗だったのです。これ以上、官僚や政治家に金を渡すのはやめにしませんか? いま、もっとも大切なのは歳出削減ではなく、歳入を削減するための減税です! 彼らには金を使う能力がないのです。

最後にまめつぶさんの別のツイート(ポスト)をじっくり味わいつつ、終わりにしたいと思います。

なんで政治に文句ばっかり言うの?そんなに嫌なら日本から出ていけばいいのに。って言う旨のポストを見かけたんだけど。
出ていかないのは日本で暮らしたいから
日本の政治に文句言うのは日本の有権者だから
いつから日本は政府に絶対服従の人しか暮らせない国になったのよ。
(X まめつぶ@0mame_mametsubu)


浜田参議院議員に質問してほしい!

減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる参議院議員NHK党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載しています。(^_^)

【質問1】NHK会長にお聞きします。大河ドラマ『青天を衝け』では、民間人として社会や国家へどのように貢献できるかという渋沢栄一にとっての人生の課題が描かれています。一方渋沢が幼いころ、母「ゑい」がハンセン病患者の世話をしていた様子が描かれています。渋沢の母の姿は聖武天皇の光明皇后の伝説をなぞらえた慈母のような存在としてドラマ中でも渋沢の人生を飾る感動的な逸話となっています。

しかし、厚生労働省のハンセン病対策の歴史をさかのぼりますと渋沢栄一は強制隔離や不妊治療による断種政策を推進した光田健輔医師を支えた人物としてハンセン病政策に大変重要な影響を与えた人物です。

この度の大河ドラマのテーマ選定は渋沢栄一が新紙幣の図柄になることがきっかけであると思いますが、渋沢栄一のハンセン病に対する責任について検証する番組を制作すべきではないかと思いますがいかがでしょうか。また、すでにそのような番組を制作しているのであればそのご紹介をお願いいたします。

【質問2】総務大臣にお聞きします。戦前はハンセン病政策については内務省主導して進めていたと思われます。厚生労働大臣は平成13年、14年にハンセン病患者に対し謝罪を行っていますが、総務省は謝罪を行っていないのではないでしょうか。

ハンセン病元患者家族に関する補償金の支払い事業が厚生労働省の試算では2万4千名ほどの対象の方がいらっしゃるようです。しかし、現在補償が行われいるのは8千名ほどとなっています。総務省では元患者家族の把握については行っておりますでしょうか。

また、月1度開催される厚生労働省の「ハンセン病元患者家族補償金認定審査会」では月に約20名程度の認定が行われているようです。令和2年に公表された委員名簿を確認しますと総務省関連の人物が入っていないようですが、総務省が認定審査会に加わることは検討されていますでしょうか。

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