北海道周遊パス紀行(13) 特急【カムイ】で北海道百年記念塔へ。
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01月02日午前10時30分、ホテルをチェックアウトした私は旭川駅に立っていた。実際は早く旭川駅に立つはずだったが、ホテルを出て駅まで歩く内に、しばらくしてホテルの部屋に切符類を仕舞ったシステム手帳を置き忘れたのに気付き、それを取りにホテルに戻った結果、こんな時間になってしまった。
ただ、今日は札幌14:38発の特急【北斗16号】函館行に間に合えば良いから、極めつけに余裕がある。青春18きっぷ旅行だと、列車本数の少なさに行動が制限されるが、今回の旅は特急も乗れるフリーきっぷだから、その点は気楽だ。旭川~札幌は道内一の幹線で、毎時1~2便の特急列車が両都市を最速1時間25分で結んでいる。
発車15分前にホームに上がると、目の前に札幌行特急【カムイ20号】が停車している。2007年製の789系1000番台5両編成で、4号車以外は自由席。
先頭の5号車に乗り込むと、半分近くの座席が埋まっており、辛うじて残っていた窓側座席にありつく。札幌と北海道第二の都市である旭川を結ぶ特急列車だけに、旅客需要が高い。私は乗車前に写真も撮りたいから早めに来たつもりだったが、発車15分前で窓側座席を探すのに難儀するとは思わなかった。
11:00、特急【カムイ20号】、旭川発車。5号車自由席は窓側全て埋まり、通路側座席も程よく埋まった。乗車率にして約70%、この先、深川・滝川・砂川・美唄・岩見沢に停車するから、途中乗車の乗客は座れないだろうなと思う。
旭川を発車したが、神居古潭付近は長いトンネルが続く。トンネルで景色が楽しめない間に食事を済ませる。ご飯は駅近くのセイコーマートで購入したホットシェフの豚丼。セイコーマートは北海道地場コンビニだが、店内で手作りの弁当・惣菜を出すホットシェフのある店舗も多く、しかも美味い。3日前に函館に泊まった際にホテル目の前のセイコーマートで、ホットシェフのカツ丼を購入したから、今回は豚丼にした。味の染みた豚肉と甘みがある玉ねぎ、そして出汁が染みたご飯の組み合わせは、最高に美味かった。こんなコンビニがある道民が羨ましい。
神居古潭付近の長いトンネルを抜け、石狩平野の雪原を駆け抜ける。【カムイ】、いい響きの列車名だ。この列車名の【カムイ】、意味はアイヌ語で神を示すものであり、また、人間以外の自然や生き物を指し、アイヌ民族にとって神格を有する至高な霊的なモノを指す言葉。これ程まで北海道に相応しい列車名は無いだろう。
過去に国鉄時代に旭川~札幌・小樽を結ぶ急行列車に【かむい】と名付けられJR黎明期まで運転されていた。しばらく【かむい】の列車名としては消えていたが、2007年に789系1000番台落成で【スーパーカムイ】として【かむい】の名が復活。2017年にスーパーを消して【カムイ】となった。
この789系1000番台も、ステンレス車体に合わせたメタリックシルバーの塗装は、シャープな車体と合わせ、格好良さと高貴な雰囲気を兼ね備えており、私の好きな車両である。
深川・滝川・砂川と、川の名が付く停車駅が続き、そして石狩平野を雪煙を巻き上げて走る。所々で線路沿いに防雪林がある。防雪林は名の如く雪を遮り線路に雪が積もるのを防ぐために植樹された木々である。これが無かったら、線路上に雪が積もり、除雪せなマトモに列車を走らせられないだろうに。石狩平野の雪原の風景を眺めたい身からしたら目障りだが、これが無かったら列車の運行もままならない事態になるから、感謝すべき鉄道施設でもある。
岩見沢を出て、次は終点札幌。車掌が切符拝見に現れた。札幌行だけに、岩見沢~札幌間が一番利用客が多く、現に座席がほぼ埋まり、デッキにも乗客の姿が。私は車掌に例の切符を提示する。
そして車窓を見れば、豊幌~江別間の夕張川橋梁を渡る。二日前に乗車した【サロベツ1号】の車掌が、過去にエゾシカが現れ跳ねたと言う橋梁だ。夕張川橋梁付近は農地が広がってはいるが、両隣の駅は住宅街が形成されており、札幌近郊のこの場所までエゾシカが来る事が、俄信じられない気分だ。
江別からは完全に市街地になり、厚別を通過して千歳線が合流、新千歳空港からの空港快速と併走し、
12:25の到着時刻を少し過ぎて終着札幌に到着、旭川〜札幌の特急【カムイ】の旅は、快適だった。
さて、次に乗るのは14:38発特急【北斗16号】函館行。発車まで2時間ある。その間に前々から気になっていたスポットに行こうと思う。その場所は、北海道百年記念塔。札幌から4駅の森林公園駅から徒歩で行ける。北海道開道百周年を記念し1970年に竣工された、言わば北海道のシンボル的記念碑だ。
北海道に来て、函館本線や千歳線に乗る度に見てきた、空を目指した茶色の鋭角な記念碑、北海道好きな私は、前々から行きたかった場所だ。現在は老朽化で立ち入り禁止で、もうすぐ解体されるらしく、現存する内にこの目で見てみたかった。
手違いで岩見沢行ホームの向かい側に停車していた逆方向へ進む学園都市線に乗ってしまい、岩見沢行に乗り遅れ、次の12:53発江別行に乗車、4駅十数分で森林公園駅に到着。雪で凍結し滑りやすいホームを注意しながら歩き、築堤下の改札を抜ける。駅待合室にある駅周辺地図で場所を確認し、北海道百年記念塔を目指した。
雪が積もっていたが、除雪された歩道を歩くが、歩くうちに汗が出てきた。北海道だけに地元大阪よりは寒いはずだが、天気が良く雪からの太陽の照り返しで意外と温かい。途中から坂道を登る。途中でJR北海道バス啓成高校前バス停を見掛けて、坂道に音を上げて乗ろうかと思ったが、スマホのマップを見れば、もうすぐ着くので、とにかく歩いた。その前に正月ダイヤで運休していたかも知れないが。
野幌森林公園駐車場からは公園内を歩くが、膝上までの積雪の中、歩道だけ除雪されており、比較的新しい足跡もあり、その先に高さ100mの北海道百年記念塔がそびえ立っていた。私は除雪された歩道を進む。
人気が殆どない、雪が積もった歩道を進むと、百年記念塔の手前で行き止まりの標識に当たる。前々から老朽化で立ち入り禁止なのは予備知識で仕入れていたから落胆はしなかったが、実際に目の前に立つと、流石に老朽化は隠せない雰囲気だった。中に入れないのは残念と言えば残念なのだが、立ち入り禁止を覚悟の上で来たから見られて納得したし、気持ちとしては、前からやり残した宿題を片付けた気分だ。
旅行とは行きたい場所に行くのが目的だ。しかし目的地を回れば満足するかと言われたら否である。帰る頃には、あそこに行けば良かったと思ったり、新たに行きたい場所を発掘し、その結果、行きそびれた場所や新たに見つけたスポットは、次の旅行の宿題になるから、何回旅に出ても、やり遂げた気にはならない。
だから旅は、やめられない。
駅に戻ろうとしたら、公園警備員の方と遭遇したので、百年記念塔の状態を尋ねたら、毎日点検で中に入るが、内部崩落も進んでおり、到底部外者や観光客が入れる状態ではないとの事。また、外壁も剥落し落下もしているという。それを聞いて、中に入れなかった気持ちも、すっと消え伏せた。建設されて50年以上経過した上に、特殊構造な建造物だけに、メンテナンスも追い付かなかったのだろう。最後に北海道百年記念塔をバックにした私の姿の写真を撮るべく、警備員さんにカメラを託し、シャッターをお願いし、私の北海道百年記念塔来訪の締めとした。しかし、近くに北海道博物館もあるから、また来なければならないと思った。
北海道百年記念塔から森林公園駅に戻った。あとは札幌駅へ向かい、札幌からキハ281系使用特急【北斗16号】で函館へ向かう。
駅の記念スタンプを捺し、森林公園14:09発普通小樽行で札幌へ向かおうとしたら、発車2分前に信じ難い放送が流れた。
放送の内容は、私が今から乗る14:09発がまだ江別を発車しておらず、相当遅れるという。
なんてこった。この普通に乗って、札幌で16分乗り換えで、函館行【北斗16号】に乗り換えるのだ。私はさっき北海道百年記念塔に行った際にも、スマホでJR北海道運行情報をこまめにチェックし、何があれば北海道百年記念塔視察を取り止めて駅に戻る心構えでいたが、遅延情報は無かった。しかし、直前になって乗車列車が大幅遅延とは、何の為の運行情報だ。
私は窓口へ行き、前もって引き換えておいた【北斗16号】指定席券を提示し、【北斗16号】に間に合わせてほしいと言った。このまま間に合わなかったら、キハ281系に乗れなくなる。
駅係員は電話で関係各所、恐らくは旅客指令に連絡していた。JR都合でダイヤ乱れて乗れない事態になったら、たまったものではない。
しばらくして、電話を切った駅係員はこう告げた。
「次の普通小樽行を(札幌まで乗らずに)白石で下車して下さい。白石で普通列車千歳行を待たせてますから。その千歳行に乗車し新札幌に向かってください。【北斗16号】は新札幌からご乗車下さい。」
私は思わず舌を巻いた。そうだ、新札幌があった。私は札幌から乗車という意識があったが、考えてみたら白石〜札幌はこれから乗る普通列車と【北斗16号】が重複する区間だ。その距離は5.8キロと結構ある。
恐らくはJR北海道の本心としては、たった一人の乗客の為に【北斗16号】のダイヤを乱したくないのだろう。【北斗16号】函館行は、新函館北斗で東京行最終新幹線に接続するから、遅延させたくないと言う旅客指令の思惑が見えてきた。
元々は余裕無き行動を取った我に責任はあるが、しかし最後のキハ281系乗車が中途半端になってしまった。元はと言えば森林公園14:09発普通小樽行が、他の列車の影響とはいえ遅延させたのが原因ではと思った。
しかし色々考えても仕方ない。森林公園駅でしばらく待った。
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