小説家の連載「18歳高3娘の彼氏が35歳?!」第3話

〈前回のあらすじ:一人娘のヒナコが35歳の男性と付き合っている事が発覚した夫婦、アオイとヒロシは娘を問い詰めるが、ヒナコは逆ギレする。〉

「関係無くはないでしょ?!親なんだから!」
「うるっさい!ママだって若い頃モテまくってた癖に!」
「それは成人してからの話よ!」
「私も成人してるもん!」
 母と娘はヒートアップする。
「私、もう18歳だから成人してるでしょ?!だからパパとママに、恋愛について口出される筋合いは無いの!彼だって、交際するのは18歳になるまで待ってくれたし!」
「何ですって?!それじゃ未成年の時に知り合ってたって事なの?!」
「ちょっと落ち着きなさい」
 ヒロシは口論する妻と娘を制した。このタイミングで料理が運ばれてきたので、食べながら話す事に。
「ヒナコ、お前が成人として扱って欲しいのは今のでわかった。お前の主張では、成人だからパパとママがお前の交際に口を出す筋合いは無いんだな?」
「・・・だって、もう18歳だし」
「わかった。なら交際を認めるのに条件がある。成人として扱って欲しいのなら、それなりの交際だという事でいいんだな?」
「え?」
 ぽかんとするヒナコ。アオイも、夫が何を言いたいのかわからない。
「成人なら、ちゃんとした結婚前提の交際という事でいいんだな?それなら、彼を連れてきなさい。パパとママに挨拶に来る事、それが条件だ。大人ならできるだろう?」
「え、結婚?!」
 ヒナコは顔を赤くしてあたふたする。
「で、でも、結婚なんて、まだわからないよ!まだ18だし・・・」
「でもお前の主張では、成人の恋愛なんだろう?いい大人はちゃんとした結婚前提の交際をするもんだ。結婚しないで付き合うだけの恋愛は、子供の恋愛だ」
「だ、だけどさ、結婚しないで付き合うだけのカップルも居るじゃん?!」
「確かにお前の言う通り、結婚しないでいるカップルも居るな。でもその人達だって、交際期間が長くなれば互いの親に挨拶するだろう。結婚してないだけでパートナーである事には変わりないんだから」
 ヒロシは冷静に話す。
「できるな?彼氏に連絡して、親が会いたがっていると伝えなさい。話はそれからだ」
「わかった」
 父親に言われると言い返しにくいのか、ヒナコは反論しなかった。
 食事を終えて帰宅し、夜夫婦の寝室に入った時、アオイは夫に話しかけた。
「あれで良かったの?挨拶に来いだなんて・・・私は会いたくない」
「さっきヒナコにも言った通り、俺は交際を認めた訳じゃない。まずは挨拶に来いと言っただけだ。ヒナコは自分を成人だと主張してきた。その主張は間違ってはいないが、親としてその主張を聞き入れる訳にはいかない。だから、あの場ではああいう風に言ったんだ」
「でも・・・」
 ヒロシは妻を抱きしめた。
「アオイがヒナコの事を心配しているのはちゃんとわかってるよ。それに、心配なのは俺も一緒だ」
「うん」
「けど、とにかく一度会わないと、どういう男かはわからない。反対するのはその後でもいいんじゃないか」
「そうね」
「頭ごなしに反対するのは、会ってからでもできる。とりあえず、今ヒナコが逆ギレして相手の男のところに家出でもしたら本当にまずい。だからヒナコを刺激しないように冷静な態度を取ったまでだ」
「・・・ヒロシは冷静だね」
 アオイは微笑んだ。
 ヒロシも微笑む。
「そりゃそうだよ。冷静でなきゃ、アオイのお父さんからの尋問には耐えられなかった」
 アオイと結婚する時、挨拶に行った際の、義父の取り調べのような質問攻めを思い出し、彼は苦笑いした。
「あなたと結婚して良かった」
「俺もだよ」
 夫婦はお互いを抱きしめ合った。

 同じ夜、ヒナコも彼氏に自分の部屋で電話していた。
「・・・・という訳でね、パパが挨拶に来いって言うの。私もちゃんと交際を認めてもらいたいし、挨拶に来て欲しい。パパはちょっと考えが古いけど、私もめんどくさい事言われ続けるの嫌だから、ヨウタにそうして欲しい。パパとママに会ってくれる?」
 電話口の向こうの彼氏、35歳のヨウタは、彼女の話を黙って聞いていたが、やがて、重苦しい口調で口を開く。
「それは・・・できない」
「何で?!」
 まさか断られるとは思っていなかったヒナコは驚いて動揺する。
「どうして?!もしかして仕事忙しい?!」
「いや、そうじゃなくて・・・ヒナコのご両親には会えない」
「な、何で会えないの?」
「・・・そんなの、会いたくないからだよ。ヒナコのご両親は、俺との交際を良く思ってないんだろ?そんな人達に会っても、認めてもらえる訳が無いよ」
「そんな・・・」
「俺、昔付き合ってた彼女の親がヒナコの親と似たような事言って、それで結局会ったけど、ボロクソに言われてトラウマなんだよ。だから会いたくない。また昔みたいな事になるのは嫌だ」
「そんな!じゃあどうするの?!」
「そんなの、挨拶せずにこれからも付き合い続ければいいよ。ヒナコは成人してるんだし、何も問題無い」
 ヒナコは彼氏の発言に唖然とする。
「で、でも、私そんな事できない。パパとママの言った事はむかつくけど、私の大事な親だし・・・」
「あぁ、ヒナコもそういう事言うんだね。親の言いなりだな」
 ヨウタはめんどくさそうに言った。
「ヒナコが親に会えって強制するなら、これ以上ヒナコと付き合うのは考え直した方が良いかもな」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ、どうして?!ヨウタ!」
 半泣きになるヒナコ。ヨウタは尚もめんどくさそうな口調で続けた。
「ま、とりあえず来週のデートはキャンセルで。親の事はヒナコが自分で説得して。ヒナコの親なんだから、ヒナコがどうにかしてよ。俺、落ち着くまでヒナコには会いたくないから。LINEもしないで。じゃ」
 ここで電話は切れてしまった。ヒナコは絶望感で頭を抱える。
「そんな・・・・どうしよう・・・」
                             次回に続く


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?