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大切なことは記名記事で書きたい

わたしがライターとして定期的にお仕事をするようになって2年ほどが過ぎた。これまでに無記名の記事もたくさん書いてきた。けれども、最近になって、自分が本当に伝えたいことは自分の名前で書こうと考えるようになった。20年近く前のある出来事を思い出したからだ。

それは、わたしが日本で団体職員として働いていたときの話である。わたしは高校時代から「やりたい」と願っていた仕事ができるだろう場所に就職した。その「やりたい」を実現させるために、休みの日もさまざまなところに出かけ、勉強し、人脈を広げた。

あるとき、わたしが将来的にやりたいと考えていた事業を見学した。見学後、業界の機関誌に掲載するため、その日の事業をテーマとした座談会が開かれた。座談会の参加者は、事業の企画者や業界の有名人数名だった。わたしは見学者として、熱心に参加者の会話を聞いていた。すると、進行役の人がわたしに事業の感想を求めのだ。就職してから2年ほどでフレッシュだったわたしは、かなり緊張しながら自分が思ったことを素直に話した。聞いてもらえたことがとても嬉しかった。

後日、一通の手紙とともに機関誌が職場に届いた。手紙にはこんなことが書かれていた。

「LOAさんの発言は、ディスカッションの重要な部分をついていました。それで、〇〇さん(座談会の参加者の名前)の発言として、記事で使わせていただきましたので、ご了承ください」

当時のわたしは、自分の発言が認められたことが嬉しかった反面、どこかモヤモヤした気分だった。今ならそのモヤモヤの理由がはっきりとわかる。わたしの渾身の一撃が、人のものとなったモヤモヤだ。これは、わたしが自分の経験から書いた記事が、他人の名前や無記名で公開されたときに感じるモヤモヤと同じだ。

だからわたしは、自分にとって大切なことは記名で書きたい。それは、名前を売るという理由ではない。ただ、自分の思いは自分のものとして発信し、残していきたいからだ。

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