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公園の名前が気になって気になって眠れないという気になった。

日常生活を健全に過ごしていると、よく「ご趣味は?」といった質問を受けることがある。
あるか? あるとも。

健康のことを考え、朝からランニング。川沿いの土手を軽やかに走っていると、小型犬を連れてお散歩をしているご婦人とすれ違う。軽く会釈をし「おはようございます」
すると向こうも笑顔で問いかけてくる。「ご趣味は?」

えっ急に? 
こわ。こわいね、こりゃ。聞こえなかったふりしてランの速度を上げちゃうね。

他にもこんなシーンがある。
何軒も営業をまわり、ある程度の成果を得た。今日は午前中から頑張ったぞ、といつもの牛丼屋ではなく、ファミリーレストランでゆっくりすることにする。メニューを決め、ウェイターを呼ぶ。
「ご注文お決まりでしょうか」
「ええ」私はメニュー表を指しながら「このカエルの目玉のサラダと、脳みそぐちゃまぜパスタ、それからデザートに季節のフルーツパフェ、カエルの目玉添えをお願いします」
「一緒にこちらの目玉―ドはいかがでしょう」
なんだ、それ。レモネードみたいに言うな。と心中で毒づきながらも「お願いします」
「かしこまりました。ドリンクはいつお持ちいたしましょう?」
「食前で」
「かしこまりました。ご趣味はなんでしょう?」


といった具合に、趣味を尋ねられる機会というのはけっこうある。

そんなときに頻出の回答は「読書」だったり、「映画」だったり、「音楽鑑賞」だったり、「スポーツ」だったり、「生乾きの服を着たまま外出」だったりする。

だが、こんなあるあるの答えだけではなく、誰もが人には言えない裏趣味を隠し持っているのではないだろうか。

例えば、「蛇口にティッシュを詰め込む」だったり、「かさぶたのコレクション」だったり、「終わった月のカレンダーから3の数字だけ切り抜く」だったり、「坂道にビー玉をばらまく」だったり、「玄関にリカちゃん人形の靴をびっしり並べる」だったり。

ここで私の裏趣味を公開しよう。
それは「公園の名前チェック」である。

なぜだかわからないが、私は公園の名前に強い関心がある。最近流行の曲の名前なんか全然わからないし、人気俳優やアイドルの名前もまるで関心がない。なんなら自分の身の回りの人の名前にも関心がないし、自分の名前もなんだったかよくわからない。

知らない土地で公園を見かけると、そこはなんという公園なのか気になってしまう。
気になって気になっていてもたってもいられなくなり、あれを出してあれをあれに寄せてあれしてしまう。ほら、名前に関心がなさすぎて全部「あれ」で通してしまった。(あとでよぉく考えてみたら言いたいことは『ウインカーを出して車を路肩に寄せて観察してしまう』だった)

すたすたと歩き、私は公園の入り口に立てられている看板を見る。そこにはたいていこう書いてある。「ボール投げは禁止」
いや、違う。別の看板を見てる。
もう一度公園の入り口に立ち、看板を見てみよう。「犬のフンは持ち帰りましょう」
違うって。
書いてあるのは公園の名前。たいてい「○○公園」となっている。

公園の名前がわかれば、もう満足。公園の規模や、遊具、遊んでいる子供の笑顔、体操しているおじいさんの汗、小高い丘から空に向かって「うおおおお!」と叫ぶ《うおーオジサン》の存在、どれも全く気にならない。

なぜこれほどにまで公園の名前が気になるのだろうか。

音の響きが好きなのかもしれない。
「○○公園」と必ず「公園」で終わる。その前にどんな言葉を持ってくるかが勝負の分かれ目といった感覚。
「青空公園」、「森林公園」、「さわやか公園」、「ボール投げは禁止公園」、「犬のフンは持ち帰りましょう公園」、「呪いの公園」、「魔界への扉」、「死者への鎮魂歌」
いや、公園なくなっちゃってる。

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