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小さい成功(スモール・ウィン)を育む〜ゼロから取り組んできたDXの1年間〜

はじめに

初めまして。リンクアンドモチベーションの山田です。
今回は弊社で2021年4月より取り組んでいるDX(業務効率化)の内容について紹介できればと思います。当時、私は新卒2年目でこの仕事に挑戦しました。文字通り、右も左もわからない状態でした。今回は、何に取り組んだのかを紹介することで、似た状況の方へ何かのヒントになれば幸いです。

2021年に、会社として社内業務のデジタル化を推進し、生産性を上げる目標を掲げました。現場(事業部)側にデジタルシフトの協力者として「Technology Administrator(以下、TA)」と名付けられた新規の役割が設立され、DXへの取り組みが始まりました。
私はこのTAの方々と一緒に、DXを進めるというミッションを持つこととなります。上司から仕事とってきたよーと笑顔でこのミッションをいきなり渡された日は発狂しました笑

そもそも、なぜ弊社にてDXに取り組み始めたのかは「CS OpsがなぜDX?CX向上に欠かせないデジタル戦略、最初の一歩」を参照いただければと思います。

TA発足から3ヶ月
ITツールの活用率UPと特定部署での事例創出

TA発足後、まずは、とにかく小さく成功を積み重ねることを意識しました。小さい成功(スモール・ウィン)を合言葉に、TAとは何をするのか?を成功事例を創っていこうと考え、2つのことに取り組みました。

はじめに、全員で達成できそうな共通目標を作ることにしました。そこで当時、導入されていたITツール(名刺管理ツールやSFAなど一般的なもの)の利用率を高めることを目標としました。
しかし、当時は各部署で何割ほど利用されているかのデータも存在していなかったため、利用率の可視化から始めました。利用率可視化のダッシュボードを作成してからは、月次で各部署の利用率を共有していくことで利用率を向上させていきました。この活用率の向上は、ツールに投資をしてくれていた経営層からは評価が高く、良い実績となりました。

全体で取り組むものの一方で、横展開することを目標とした特定部署の業務効率化を図りました。特定部署は、デジタルやITに強い、興味関心が強いTOPがいる部署を中心に選定し、声をかけていきました。
前提、TAの取り組みに事業部のメンバーから協力してもらえるようになるには、事業部のメンバーに最も喜んでもらえることをする必要がありました。つまり、それは事業部の業務が簡単になることです。そこで、特定部署とは「課題の特定→要件定義→開発→リリース・運用」のステップで業務の効率化を進めていきました。

課題の特定では、「技術的難易度」と「業務の削減時間(効率化具合)」「顧客影響(クレーム防止など)」という3つの観点で、優先課題を決めていきました。面白かったのは、「会議室が使用前の予約と使用者が異なったらアラートを出して欲しい」といった技術的に難しく、かつ誰の役に立つか微妙な課題もたくさん出てきました笑
このあとは、通常のシステム開発と似たプロセスとなりますが、TAはもともと開発などに縁がないメンバーばかり。1つ1つできることなどを細かくすり合わせて進めていきました。
また、TAの取り組みが認知されないで、損をしてはよくありません。取り組んでいる内容と、その成果は2ヶ月に1回ほどのペースで部署のTOPに、その部署のTAと一緒に報告し続けました。
半年程度、業務効率化と報告を継続することで、TAの仕事が認知され、部署内に協力者を獲得していくことができました。

TA発足から6ヶ月
勉強会を実施し、特定部署での成功事例を横展開

3ヶ月経った頃から、小さな成功の芽を少しずつ大きくすることを意識しました。要は発足から3ヶ月までの成果を全事業部へ展開する準備を進める段階です。ここでは、TAの方々の「やりたい」「やれる」を引き出すことに注力していきました。

まず、特定部署のTAと事例を創出する中で学んだ、業務時間削減に必要な知識、使える技術(例えばGASなど)の勉強会を行うことにしました。あるTAの方から、「そもそも、どういう事ができるのかイメージができてない。基本の勉強会をしてみたい」と相談を受け、この会を開くことにしました。
基本的なGASなどの知識とともに、こうした技術を活用することで業務がどう効率化できるのかを紐付けてもらう場としました。自分たちでできる業務時間の削減イメージを膨らませていきました。ここではTAの方々に「その事例、うちの部署でもやりたい!」と思ってもらえれば勝ちです。

この勉強会を土台にして、成功事例の横展開も少しずつ始めました。
「特定部署で創出した事例」を主導したTAから、他のTAへ定例会で伝えていってもらいました。
そうすることで、業務時間削減の一連の流れや工数、詰まるポイントなどを、事業部の目線で把握してもらいました。ここではTAの方に「これなら私でもやれる!」と思ってもらえれば勝ちです。

発足から9ヶ月
目標を削減時間へ変更。一人ひとりが成果を出す

半年が過ぎ、成功の芽が出てきたので、この頃から全体で成果を出していくことを意識しました。具体的にはツールの活用率ではなく、初めて各部署において削減時間の目標を立てました。こうすることでTAの方に「やらねばならない」という強制力を高めていきました。

ただこれが中々、大変な目標でした。
というのもTAの方は、部署内での仕事もあったからです。要は兼務しており、TA業務への時間捻出が難しいのが実態でした。そこで、忙しいTAには既に他部署で展開してる事例を、そのまま導入してもらいました。とにかくTA一人ひとりが何かを効率化した!という実感を得ることに注力しました。一方で、比較的業務時間に余裕があるTAの方々とは個別面談を実施し、業務時間削減のマイルストーン作成を行いました。

もちろん、TA全体での定例会では、生まれた事例を共有し続け、全体として削減を押し進めました。結果としては、全部署での目標達成とはなりませんでしたが、3ヶ月で累計の削減時間は年間で3,000時間を超えるものとなりました。この際、どのような事例が生まれていったかは「リンクアドモチベーションのDXの実例紹介!」を参照下さい。

発足から1年
TAの業務範囲を拡大。ビジネスサイドが要件定義に挑戦

1年立つ頃にはTAの効力感も上がってきていましたので、業務範囲の拡大を意識し始めました。今までは、「課題の特定→要件定義→開発→リリース・運用」という流れの中で、TAの方々には「課題特定 / 運用」という点に力を割いてもらっていました。これに加えて「要件定義」という点にも注力してもらうことにしました。なぜ要件定義かというと、どうすれば業務を簡単にできるか?を自分たちで考えてもらうことで、その習慣がつき、より生産性を高める意識が事業部側に芽生えると考えたからです。

とはいえ、TAは非エンジニアで、これまでシステム開発をしてきた経験はありません。TAになり、初めてIT技術に深く触れてきました。そのため、まずは要件定義を作る際のフォーマットを型化し、共有。もちろん、フォーマットを渡して終わりにせず、要件定義を書きながら徐々に観点や粒度を揃えていきました。
当たり前ですが初めて取り組む業務ですので、この時、業務時間の削減は一時的に成果を出しづらい状況になりました。それでも次に繋がると判断し、可能な限りTAの方々へ要件定義書も作成、自分でまとめて頂くことをお願いしました。
その結果として何人かのTAの方は「業務課題の特定 / 改善要望のまとめ / 運用・保守」を独自に回せるようになり、部署の改善は加速。生産性が大きく向上しました。当初の狙い通り、より自分たちで改善をするのはもちろん、無駄なのではないか?と疑う癖がつき、生産性を高めよう!と考えてもらえるようになりました。

裏の思考として、要件定義を事業部側(TA側)へ移譲できない限り、私たちRev Opsや開発者は、事業部側との受発注の形が改善できません。そうすると、また改善してもらえばいいやという力学が働き、業務時間の削減を行っても、次の日には新しい無駄な業務が生まれるいたちごっこになっています。ここで踏み止まれる動きができたことは、今までと、とても大きな違いになったと思います。

現在
TAをグループ会社へも設置・展開
基幹システムの改修に向けた準備開始

1年間の活動を通じて、TAとその成果が認知され、TAという役割はグループ会社へも展開されていきました。私はグループ会社のTAの方々と直接仕事する機会はないですが、私の部署の先輩が支援し、3ヶ月で、年間1,400時間超えの削減時間を創出しています。TAという役割と、その仕組は脈々と根付いています。

一方で、これまでの業務時間の削減活動から、根本的な課題が明確に見えてきました。根本的な課題というのは基幹システムです。ここまで数十年間、同じシステムを使ってきたこともあり、業務効率を悪くしているか部分があることがわかってきました。これをTA含めて認識する機会となり、全社的な認識が揃う良いきっかけとなりました。こうして、2022年の秋、ついに、基幹システムの改修検討が始まりました。
今までは根本のビジネスプロセスを変えるのではなく、今ある業務プロセスの中でいかに効率化するかを考えてきました。ここからは、基幹システムとセットで業務プロセス自体を変えにいきます。まだまだ道半ばですが、TAの方々と根本的な課題を解決し、理想的なプロセスの実現へ向けて全力を尽くしているところです。

おわりに

TAの方々と一緒に業務効率化を進めてきた1年の流れを振り返りました。
業務効率化(業務時間の削減)のポイントは、どれだけTA(事業部)の方々に、やる気と主体性を発揮してもらえるかが成否の大きな分かれ目でした。その為に、どれだけ「やりたい」「やれる」「やらなきゃ」を整えていけるかが、私の仕事だったと思います。
この記事が誰かの参考に少しでもなれば幸いです!

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