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#011「北欧の人々に、自分のスウェーデン語は通じるか(ノルウェー編)」スウェーデン菓子店の中トロなラジオ

カバー画像はオスロ市街の写真をお借りしています

北欧に興味のある方にとっては既知のことかもしれませんが、念のため、おさらいから。

北欧語のスウェーデン語、デンマーク語、ノルウェー語は、言語的に共通する部分が多く、ネイティブ同士であればお互いの母語で意思疎通が図れると言います。

フィンランドでは、フィンランド語はもちろんのこと、スウェーデン語も公用語。ただし、先に挙げた3言語とフィンランド語は別体系なので、北欧のなかでは言語的に独立した状態です。フィンランドの義務教育の課程のなかで、スウェーデン語も学ぶらしいです。

…ってな感じのことを、大学で習いましたが、実際のところはどうなのでしょう。いつぞや、デンマーク編を書きましたので、今回はノルウェー編。

■ デンマーク編はコチラ
#007「北欧の人々に、自分のスウェーデン語は通じるか(デンマーク編)」

スウェーデンの北西部に隣接する国、ノルウェー。公用語はノルウェー語です。そんなノルウェーに、自分は一度だけ足を踏み入れたことがあります。

ただし、滞在したのは数時間ほど。でも、とてもいい体験をしました。ぼんやりとですが、今でもノルウェーで唯一コミュニケーションを取ったヒトのことは忘れていません。顔は憶えていないのだけれども。

大学2年生の頃だったか、スウェーデン第二の都市であるヨーテボリでヤンネさんの下にホームステイをしながら、現地で開催されていた短期スウェーデン語コースに参加したことがありました。ヤンネさんは、日本の大学でスウェーデン語を教えてくれていたスウェーデン人の先生の友人です。

しかし、その授業に付いていけなくなってしまったことがありました。高校時代からサボり癖がある人間なので、不貞腐れて、もう授業の後半には参加しないようになってしまいました。しかし、ホームステイ先に閉じこもっているのももったいないという気持ちもあるわけです。

そこで、ヤンネさんとの雑談のなかで、ヨーテボリからバスでノルウェーの首都オスロに行けるというハナシを耳に挟んでいたのを思い出しました。

「じゃあ、オスロに行ってみようかな」

スウェーデン語の授業に参加するのと同じくらいの価値が見いだせるであろうという大義名分を抱えて、そう思い立った翌朝にはヨーテボリ中央駅のバスターミナルにいました。

EU域内の国境を自由にまたぐことができる「シェンゲン協定」のおかげもあり、スウェーデンとノルウェーを行き来する際にパスポートのチェックなどはありません(詳しくは知らない)。バスに乗っているだけで、スウェーデンからノルウェーに入ることができます。

ここからは記憶のハナシ。細かいところは忘れてしまっているので、曖昧な部分はご容赦を。

ヨーテボリを出発し、国境の寂しい風景を眺めながら、バスに乗ること4時間弱。曇り空のオスロに放り出されました。

比喩ではありますが、放り出されたようなものです。ノルウェーについて、何も下調べしてきていないから。当時は携帯電話もないので、まさにゼロからの調査となります。

地図もないから、どこにいるのかもわからない。たしかに "オスロ行き" と書かれたバスには乗ったけれども、オスロのどこだかはわかりません。でも、バスを降りた場所は幸いにも中央駅の近くでした。

中央駅で、ほんのちょっとだけの額をスウェーデンのクローナからノルウェークローネへ両替。そして配られているオスロ市街の地図を入手。しかし、オスロに来たものの、その日のうちにまたヨーテボリに戻らなくてはならないので、オスロに滞在できる時間は数時間ほどしかありません。

オスロの街には路面電車が走っていましたが、当時は大学生の身分でしたし、スウェーデンに滞在することを前提としたなけなしの滞在費しか持っていないなかで、路面電車に乗ることはためらわれました。

べつに特別なにかやりたいことも思いつかないので、とりあえずマクドナルドへ。初のノルウェーのマクドナルドです。

しかし、先客がオーダーをしている背後からメニュー表をしばらく眺めただけで足早に退店。大学生にとって、ノルウェーのマクドナルドは高級店でした。具体的にいくらだったかは憶えていないものの、銀座で食事をするような価格帯という印象を受けました。

滞在時間がほとんどないなか、オスロ中央駅の周辺をウロウロ。あらためてオスロの市街マップに目をやります。ノルウェーについてほとんど知識のない自分の目に留まったのは、ムンク美術館でした。

しかし、駅から少しだけ離れていることから、残り時間を考えるとムンク美術館にたどり着いたとしても、内部をゆっくり見物する時間もなさそうです。それでも外観だけ見ておこうと、急ぎ足で現地を訪れることに。

路面電車のレールを辿ってムンク美術館に到着。でも帰りのバスがあるため、中に入って予定通りスグにその場を立ち去ろうとすると、どういうわけか美術館のスタッフの方が話しかけてくれました。

おそらく最初は英語で話しかけてくれたのだと思います。しかし、自分は英語よりもスウェーデン語の方がコミュニケーションを取りやすいので、スウェーデン語で返します。すると、とても喜んでノルウェー語に切り替えてくれました。

この会話が自分にとって、初めてのノルウェー人とのコミュニケーションです。具体的にどのようなノルウェー語が発せられたのかわかりませんが、なんとなく彼女の言っていることが理解できました。

「せっかく来たけど、もう帰りのバスの時間になっちゃうから」
「ちょっとでも時間ないの?お金いらないから、ちょっと見ていきなさいよ」

無料でなかに入れてくれた上、マンツーマンでガイドまでしてくれたのです。もちろんノルウェー語で。

正直、作品について何を説明してくれているのかもわからなかったし、ムンクといえば「叫び」くらいしか知らないのだけれども、ノルウェーの人がこんなにスウェーデン語で話したことに喜んでくれたことに驚いていました。

本当にギリギリの時間になるまで、いや、もうバスに間に合わない時間と言ってもいいくらいの時間まで、丁寧に相手をしてくれました。

このムンク美術館での出来事が自分にとってのノルウェー滞在体験を感動的なものにしてくれたのは間違いありません。もうお会いすることもないかもしれませんが、とても感謝しています。

路面電車に乗れたら、どれだけラクだったでしょう。ムンク美術館から中央駅まで、力の限り走って戻りました。

以上が、数時間ほどのノルウェー滞在の記憶のすべてです。

スウェーデン語とノルウェー語は結構似ています。デンマーク語は全然理解できないけれども、ノルウェー語はちょっとわかるという感じです。

たとえばノルウェー語の「takk/タック(ありがとう)」は、スウェーデン語で「tack/タック」といいます。こうしたスウェーデン語との綴りの違いを意識することがコツの1つ。

そしてノルウェー語の「jente/イェンテ(女の子)」は、古いスウェーデンの絵本では「jänta/イェンタ」という単語がしばしば登場します(現在では「flicka/フリッカ」が一般的)。スウェーデン語の古い言い回しの知識の一部がノルウェー語の解読に役立ちます。

そういえば、いつだったかお店にもノルウェー人という方が訪れてくれたことがありましたが、一応こちらからはスウェーデン語で会話をしました。

もしスウェーデン語を勉強したら、ノルウェー語で書かれた新聞記事をネットで探してみたり、ノルウェー語がどこまでわかるものか試してみるのも面白いと思います。

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今日のお別れの曲(フルで聴くにはSpotifyのアカウントが必要です)。多分10年ぶりくらいに「サムライチャンプルー」を全話見返したので、MINMIの「四季の唄」。


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