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シンガポールは自動化で労働力不足の解決を試みる

case|事例

シンガポールのビルは、将来、食品配送ロボットのために改札やエレベーターが自動で開閉し、エネルギー資料を効率化させるために蓮暖房システムが常に最適化され、入居者は顔認証だけで入館や支払いが可能になっているかもしれない。

シンガポールの政府機関GovTechと産業開発機構のJTCは、そんな未来を可能にするオープンデータプラットフォームの開発と実証に取り組んでいる。開発しているオープンデータプラットフォームは異なる通信技術を用いるそれぞれのシステムの相互通信を可能にし、さまざまな種類のデータを取り込むことができる。また、AIと機械学習を取り入れ、ビルの管理システムなどとも統合することでリアルタイムの制御を可能にする。例えば、人が多い時には清掃システムを増やし冷房を強くすることができ、逆に人が少ないときは照明や冷水器、エアコンなどの電源を人間の介入なしに切ることができる。デジタルツインによって施策評価のシミュレーションとその結果の可視化なども可能になる。

シンガポール政府がこの開発に着手した背景に人材不足と高齢化がある。特に、ビルや施設の管理は必ずしも人気のある職種ではなく、人材不足が慢性化している。現在、施設管理業務に従事する人の60%が50歳以上で、将来的にはさらに人材が不足することが懸念される。デジタル化や自動化はこのような課題を解決するソリューションとして期待される。人材不足が懸念される高齢者の生活支援や介護の分野への適用も検討されており、現在高齢者の生活支援の自動化のPoCが実施されている。

現在、オープンデータプラットフォームは、JTCサミットやウッドランズ北部工業団地に導入され、来年には50haの面積を誇るテクノロジービジネスパークやプンゴルデジタル地区への導入も予定されている。また、オープンデータプラットフォームは、公共交通の計画や保護地区の管理、洪水監視などへの適用も可能で、都市への拡大も計画されている。

シンガポール政府は、オープンデータプラットフォームによる自動化によって人員を50%、水とエネルギーの使用を30%削減できると試算している。今後の社会実装に向けて、シンガポールは政治が比較的安定しているとはいえ、長期的に投資を続けることが課題となる。また市民の社会受容性を高め、この分野への投資への理解を醸成することも必要となる。

insight|知見

  • シンガポールの戦略的な取り組みはさすがだなと感心した一方で、世界で最も高齢化が進んでいる日本こそが、この分野を牽引してほしいなと思いました。

  • 日本でもスマートシティプロジェクトが数々進められていますが、技術実証止まりな印象が否めません。福岡市の九大箱崎キャンパス跡地でも自動運転バスの走行実証が行われていますが、そろそろサービス実証と事業家に進んでもらいたいものです。

  • また箱崎の開発はデータプラットフォームの実証の好機だったのではないかとも思いますが、公募入札で民間投資のみに依存して技術変革を行うのは限界があるように思います。公共政策の役割を考えさせられますね。