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ロンドン・シティで進む公共空間の再生

case|事例

世界有数の金融街であるシティでは、現在、車道の減車線化や歩道の拡幅、自転車レーン整備、歩行者に優しい広場やオープンスペースがの整備などが着々と進みんでおり、ウォーカブルな地区へと変貌を遂げている。

9つの街路が交差する「Bank Junction」は、ロンドンで最も交通量の多い交差点のひとつである。Bank Junctionでは毎朝数万人もの人が地下鉄を降りて通勤する風景が見られるが、ここ数年で空間再編が進んでいる。20年前のひどい渋滞と排気ガスにまみれた風景は様変わりし、拡幅された歩道には白い花崗岩のベンチが3つ置かれ、平日は毎日12時間もの間、自動車の通行が禁止される。Bank Junction以外にも、セントポール大聖堂周辺やFleet Streetなどで車中心の空間から人中心の空間へと再編が進んでいる。

プロジェクトを進めるシティオブロンドンの担当者は、「公共空間の改善は、シティに来街した人の体験をより快適にし、オフィスワーカーがリアルなオフィス空間に戻ってくることを後押ししてくれる。さらにオフィスワーカーだけでなく観光客や学生、住民などが混じり合う地区になれる。」と期待している。

シティがウォーカブルな地区へと再編を進める背景には、シティを取り巻く環境の変化がある。30年前とは異なり今では銀行家は車で銀行に乗り付けることはなくなり、現在約615,000人のオフィスワーカーのうち、97%は公共交通や徒歩、自転車で通勤している。2023年には自転車がもっとも人気のある移動手段となった。そのため、沿道用途や歩行環境の重要度が増してきた。都市や交通に係る政策も15分都市や超低排出ゾーン、時速20マイル(時速32km)制限など、自動車依存を減らし人を中心とする政策へと重心が移っている。

一方で、一時期よりも小さくなったとはいえ、タクシーが寄りつけなくなった、国際的なビジネスの競争力を削ぐといった反対もある。

insight|知見

  • リアルなオフィスで働くワーカーを呼び込むために、都市の公共空間の質を高めアメニティを高めようという考え方は、シティだけでなく、ニューヨークなどでも取り入れられているように思います。

  • 再開発が進む天神や博多の公共空間とシティの公共空間の比較などもしてみたいですね。休憩できるオープンスペースの数などまだまだ課題が多いように思います。また働く人のための公共空間やアメニティのような視点は見落とされがちな気がします。