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ウリボウを解体した。

LivingAnywhere Week ONLINE in 館山の企画で唯一未実施だったのが「館山のハンター沖さんが教えるウリボウのプチ解体体験」。
どんな内容かは過去のnoteに詳しく書いてあるので一読いただきたい。

この企画、沖さんの考え、そして何より沖さんの愛に溢れた想いが詰まっているのです。いわゆるジビエだったり希少な食べ物だったりとは話が違います。


============注意============
この記事には、動物の解体の画像が出てきます。
どうしても気になる方はお気をつけください。
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さて、今回このワークショップのために用意されたウリボウは5体(沖さんがレクチャーに使う1体含む)。zoomで館山の沖さんと繋ぎ、画面越しに解体作業をレクチャーしてもらう。

ウリボウは止め刺し(このウリボウはワナ猟で捕獲されたもので、その段階では生きています。それをナイフで〆めます)後、すぐに内臓処理と皮剥、それを冷凍してもらったものを事前にクール便で手元に届けてもらった。参加者は事前にYouTubeで捕獲から止め刺し、そして解体の動画を視聴。ウリボウがどうやって手元に届いたのかを学ぶ。*この動画は非公開(参加者のみの公開)。

いざ解体ワークショップ。
今回は都内の制作会社のスタッフも参加、ちょうど同社にインターンとして参加していた相模女子大学のゼミ学生もこのワークショップに出席してくれた。普段見ないような映像を見た後、見たこともやったこともない体験が目の前に。もちろん、ほぼ全員、絶句しながら、おそるおそる、ウリボウの解体をはじめた。

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まず、袋からウリボウを出す。ずしっとした重さ、約5kgほど。

この場では2体の解体で、残り2体はそれぞれがオンラインで実施。
まずは首回りに刃を入れるところから始め、頭と胴体を切り離す作業。

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まだまだまだこの段階ではおっかなびっくり。いろいろな思いがよぎり、なかなか手もうまく動かない...。

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頭と胴体を切り分けてからは肩の部分の肉を切り出す。いわゆる肩ロースの部分。まさに手で触っている感触から、骨の動きや筋の様子がはっきりわかる。見ているのと実際に触って手で感じてやるのとは全く違うと痛感。
特に精密模型のような背骨やアバラの感触などがリアル。

ウリボウは脂身がほとんどなく、取れる肉が多いわけではないけれど、解体を学ぶにはちょうどいいサイズとは沖さん。

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中央の赤い細長い部分、これがいわゆるヒレ肉。
取り出すとこんな感じ。

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ウリボウなのでものすごく小さい。ただ、成獣になったとしても他の部位よりは小さいことが容易に想像ができる。トンカツなどで値段が違うのはこういうことなんだと改めて実感できる。教科書や動画なんかより、このリアルな体験で、どこがヒレかなんて2度と忘れない。

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こんな具合でzoomの画面を通じて、沖さんと解体。
家庭でもそんなに大きいテーブルがなくても充分に学べるし、事前に血抜きなどは完璧にされた状態で届く。なので、周りが汚れてしまうことなども特になく、室内でもできるのがとても良い。

沖さんに聞いてみたところ、成獣になるとウリボウ1体が成獣の脚1本くらいの大きさになるとのこと。こうなるとそもそもの解体も大変なことになるし、それこそ解体場所を確保するのが家庭だと厳しくなってくることがよくわかった。

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そして脚の解体に。
このあたりからもう、恐怖心や戸惑いもなく、どんどん手が動くようになってくる。不思議な感じ。改めて関節の様子をじっくりと観察できたり、骨と肉のつき方、筋膜を剥がしていく作業など、ところどころ会話をする余裕もどんどん生まれてきて、黙々と作業するというよりも、新しい気づきなどを共有しながらの作業。

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だいたい、部位ごとに分かれてきて、この後は骨を取り除く作業だったりを進めていく。

筋膜をスッスと切っていくと、きれいに剥がれていく部分がある。ほんとに、スーッときれいにほぐれていく。あれ?と思って「沖さん、もしかして整体師さんなんかは解体上手ですか?」って聞いてみたところ、やはりその通りで、きれいに解体していくそう。体などをマッサージすると、指の入る部分があるが、まさにあの部分。脚の部分なんかは自分の腕や脹脛の感じと似ていて、自分の足を触りながら、ああ、このあたりはきっときれいに剥がれていくんだろうなとか、メディアでも取り上げられている「筋膜リリース」と言ったマッサージの類も、ああ、この辺りをこうするのか、なんてわかったりする。

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だいぶ手が慣れて余裕が出てきたところで、沖さんから解体につかう刃物の話や、解体にまつわる話なども伺うことができた。
(画像がわかりづらく恐縮ですが、刃物を説明する沖さん)

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解体の刃物には皮を剥ぐのに都合の良い刃先、止め刺しに都合の良い刃先、いろいろな種類があることがわかった。ちなみに今時はオンラインでも購入可能とのこと。

最初に外した頭部はそのまま頰肉などを取り、煮込もう、ということで鍋に。煮てから取り出したのはとてもキレイな頭骨。
これはさらに煮出して漂白、標本にしたいと思う。

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ウリボウは都合1.5時間ほどでキレイに解体された。
やはり自分の手で包丁を持ち、部位それぞれをみながら刃を入れていく作業を実体験することで、手からの情報含めて、ものすごく新鮮な経験ができた。解体前に沖さんから聞いた館山市の害獣問題、そして沖さんの思いを理解すること。そして今回、僕らの貴重な学びの体験に使わせていただいたウリボウに何よりの感謝。

*本来、このWSでは館山市の害獣問題と地域の問題、そして解体を学ぶということが主眼にありますが、解体後の肉は各自が自己責任で頂きました。
味としてはいわゆる臭みなども全くなく、煮込んで取ったスープなどもとても濃厚でコクのある味わいでした。ウリボウは脂分がとても少ないので、ヘルシーだと思われます。また、沖さんが別に同梱してくれた成獣には脂がたっぷりのっていて、それこそ焼くと炎が上がるほど。

参加者の中からはこれからもこういった体験をしていきたいと思ったという意見もあった。また何より、沖さんのいる館山に行き、実際に山を歩いてみたい、成獣の解体の様子などもみてみたい、などという声がいくつも上がったのが、大きな成果の一つだった。

このような問題を抱える自治体は館山市の他にももちろん日本中あるわけで、地域と地域をつないでいくきっかけの一つにもなるような展開ができればと、また新しい企画を考えたいと思う。

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