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098. 吾輩はお子である第二十話 「生まれる」


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むすめのお産は、夢と現実の行き来をしながら進んでいましたが、あるところまで行くと「ここから先は自力を捨てて、ひたすら待つだけだな」という境地にさしかかりました。

お産の直前まで激しい胎動を繰り返す我が子は、とても勇気のある人なんだなと思っていましたが、ここで彼女は自分の力で外に出てくる子なんだと確信した。

夢の中に出てきた、波打ち際にある二つの大きな岩の前で深呼吸をしながら待っていると、現実の世界で助産師さんに、「もう肩が出ているから息んでいいよ!」と言われた。

それまで「息んではだめ。呼吸しながら逃して」と言われ続けていたので、ここぞとばかりに大きく息んだ。そうしたら、待ってましたとばかりにスポッと出てきたむすめの産声が分娩室中に鳴り響いた。

その真っ直ぐでどこまでも通る強い声を聴き、はじめて顔を合わせたとき、なんだかすごい子どもが出てきたなぁ、と衝撃を受けたのでした。

次回はいよいよ最終話です。

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