〜第5章〜 アルバム全曲解説 (4) A面-4 Cockoo Cocoon
【テキスト】【歌詞】とその内容
前の曲、Broadway Melody of 1974の最後で、ブラックアウトしたレエルが意識を取り戻します。
すると、何か繭のようなものに周囲を覆われていて、聞こえる音は水滴の音だけなのです。前の曲で最後にドラッグの使用がほのめかされていたのは、次に、主人公レエルが、非常に気持ちの良い状態で目覚めるということにつながる伏線らしいのですね。
また、この「水滴の音」は、レエルは洞窟の中にいることを示唆しているわけです。
そしてレエルは、自分が置かれた状況をあれこれ想像するわけですが、【テキスト】で説明されるように、子宮から産み落とされる前、まさに母親の胎内にいるようなイメージが表現されているのだと思います。ちなみにこの【テキスト】部分は、日本語にするとあまりイメージが伝わらないのですが、tomb(墓)、catacomb(地下墓所)、womb(子宮)と、韻を踏んだ言葉が列挙されているわけで、【歌詞】でもない【テキスト】においても、ひたすら韻を踏んでいるピーター・ガブリエルなのです(笑) ちなみに、曲名の Cockooとは、カッコーの鳴き声のことで、これも韻の関係から選ばれた言葉だと思いますが、カッコーが1日中単調な声で鳴き続けることから「頭がおかしい」「正気ではない」というような意味があるそうで、ここでもそういう意味で使われているのだと思います。
一方聖書からの引用も登場します。
ヨナという人物が3日間クジラの腹の中に閉じ込められるというのは、旧約聖書のエピソードだそうです。ここは明らかにキリスト教の聖書の引用ですが、ここは単に洞窟に閉じ込められたレエルの状態を聖書のエピソードになぞらえただけで、それほど深い意味は無いのだと思います。これは、肉体から分かれた精神が旅をはじめる最初の地点なのです。つまり、新しい旅のスタート地点として、生命のスタート地点である子宮内の状況を重ね合わせているのは明らかだと思います。
そして、こう歌われます。
「ここに来るのは早すぎたのだろうか?」と問うているのは、レエル本人ではない第三者的な視線を感じるわけなのですが、ここはまあ歌詞として作られたフレーズなのでしょう。
こうしてレエルは再び眠りに落ちるのです。
そしてこれが、これからの過酷な旅の直前のわずかな安らぎとなるわけです。
【音楽解説】
ウェールズの Glaspant Manor でのレコーディングセッションの初日である1974年8月2日にタイトルトラックと併せてレコーディングされた曲です。スティーブ・ハケットのギターの指弾きアルペジオで始まる、この2分ちょっとしかない牧歌的な短い曲は、主にハケットの作とされています。ところが、ここのイントロで使われた2つのコードは、ハケットの弟のフルート奏者、ジョン・ハケットが以前考案したものだったのだそうです。曲中ではピーター・ガブリエルのフルートも登場し、全体的にゆったりした、安全で心地よいシーンが音として表現されています。水中で響いているようなギターの特徴的な音は、低速に設定されたレスリースピーカーで処理された音だそうです。
この牧歌的なイメージは、以前からのジェネシスが得意とした雰囲気に沿っていると思います。アルバム冒頭から続くこれまでとはちょっと異なったヘビーなサウンドに続いて、ここでジェネシスらしいちょっとした間奏を入れたようなイメージでしょうか。そしてこの曲は、次に急展開となる、In The Cageへの前奏曲的な位置づけとなっているのです。
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