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5Gが普及すると、何ができる? 何ができない?(5G準備委員会1/16 vol.2 「5G x メディア・コンテンツ」についてクロサカタツヤさんに聞く)

「メディア&コンテンツ業界のための『5G準備委員会』」というイベントは、『5Gでビジネスはどう変わるのか』の著者であるクロサカタツヤ氏をお招きして行われました。

vol.1では2020年1月に行われたCES 2020のお土産話を中心に、デジタルテクロノジーの世界における最新トレンドと「5G」について、お話いただきました。

vol.2となる本記事では、さらに一歩踏み込んで、日本における5Gの現状や、これから日本で起こることを中心に、LivePark代表取締役・安藤聖泰とエグゼクティブ・プロデューサー・清田いちるがお話を伺いました。


vol.1「トレンドはすでに5Gの「次」へ」はこちら
vol.3「過去の失敗も、5Gの時代なら成功するかもしれない」はこちら


●日本の5Gは使い勝手が悪い?

安藤聖泰(以下、安藤)

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 まずひとつめ、世間では「5G」の「G」は「ジェネレーション」、つまり「第5世代」の移動通信システムとなります。これまでも2G、3G、4Gがありました。

現在、日本で広く使われている4Gの次となる5Gは非常に大きく進化したものだと言われていますが、どういうことなのでしょうか?

クロサカタツヤ(以下、クロサカ)

企_クロサカ_正面150

 なかなか理解しづらいところだと思うのですが、1、2、3、4ときて5なので、多くの方は連続したものだと考えていると思います。

標準化を担う3GPP(Third Generation Partnership Project)が定めた5Gの標準規格は、かなりの部分で4Gをベースにしています。しかも、2020年から日本で始まる、あるいは2019年からアメリカ、韓国で始まった5Gも、4Gネットワークを使いながら、5Gの基地局で電波を吹いていると構成になっているため、4Gと5Gであまり違いはないじゃないか、という話も間違えとは言えません。

安藤

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 そうですね、4Gを引き続き利用しながら、5Gを増やしていくという意味では。

クロサカ

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 ところが、やっぱり大きく別モノなんですね、4Gと5Gは。

いろいろな見方があるのですが、まず決定的に違うのは、使用する周波数帯です。我々はスマホなどで4GネットワークというのはGHzよりも下、800MHzあたり、一時期、「プラチナバンド」なんて呼ばれていましたが、そこを利用しています。

2020年の春から本格的に始まる日本の5Gは、ひとまず3.7/4.5GHz帯と28GHz帯が割り当てられます。800MHzは「0.8GHz」のことなので、電波としては低い周波数帯です。物理の話になりますが、電波と光は、もともとほとんど同じようなものなのですが、電波は周波数が高くなればなるほど、その性質は光に似てきます。

日中、外からの光がまぶしいとカーテンを閉めますが、あれは光を遮っているということです。何、当たり前のことを言っているんだ?となるかもしれません。

これは比喩ではなく、5Gで利用する高い周波数帯の電波は、光と同じく窓ガラスやカーテンで遮られるし、反射しちゃうんですね。晴れた日など、部屋の外にいる時と中にいる時では窓ガラスなどのために、明るさに違いがあるのがわかると思います。この違いは光が入ってきていないということ。

つまり屋内にいると5Gの電波が入ってこないんですね。今、私たちは窓から数メートルのところにいますが、4Gの基地局が近くにありその電波はここまで入ってきていますが、5Gになると入ってきません。

安藤

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 そういうお話を聞くと、5Gはダメなもののように感じますよね。

クロサカ

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 NTTドコモが旭硝子と提携して5Gの電波を通すガラスを開発していたりもするのですが、5Gはかなり使い勝手が悪いものだと考えられています。

安藤

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 心配になってきました。

クロサカ

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 実際のところ、5Gの使い勝手はあまり良いものではありません。しかし、良くなくても5Gに歩みを進めていかなければ、例えば、すごいブロードバンドや低遅延のサービスを実現できません。そこで、どのように5Gをデプロイメント(展開)していくか、これまでとはまったく違う発想が必要となってくるのです。

先ほど外からの電波が届かないとお話しましたが、例えば、室内に基地局を設置するのはどうだろう、といったアイデアも実際に検討されています。

もちろん、外から電波をガンガン吹かせるだったり、ビームを鋭くして目的の場所に当てるといった技術も考えられていますが、スペースに合わせて室内に基地局を設置してより多くの端末をカバーしたほうがいいよね、と言うように考えられています。感覚としては、Wi-Fiの基地局に近いものになるのではないでしょうか。


●高速大容量の時代は8Kの時代


安藤

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 それでは次に、5Gの特徴としてよく言われている、「高速大容量」「低遅延」「多接続」という3つのポイントについて、それぞれ深堀りしてお話いただけますか?

クロサカ

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 まず「高速大容量」に関して、すでに韓国では、2019年の春にサービスが始まっています。

2019年秋に韓国・ソウルで試したところ、1Gbpsほど出るようになっていました。この1Gbpsは、たいへんな数字で、実測値として、おそらく多くのご家庭のブロードバンドよりも、はるかに速い。この通信が家に入ってくると、そりゃ8Kの映像を見るよな、となるわけです。

2020年のCESでも、サムスンやLGがディスプレイやパネルを展示していましたが、もう4Kテレビは1台もないですよ。

安藤

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 えっ。昔は4Kばかり並んでいたのに。

クロサカ

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 すでに、8Kなんですよ。高品質の高精細な8Kのディスプレイも一般的になっていて、「価格もこれなら買えるかな」というところまで下がってきている。そして、当然のようにコンテンツプロバイダーもセットなっています。

安藤

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 なるほど。

クロサカ

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 これは、アメリカ、韓国、中国のメーカーだろうと同様で、当然のようにNetflixやHuluに観られるようになっています。

ただし、そこはRF(放送波)ではなくIPなんですね。マンションだと、光回線でみんなが一斉にNetflixをみたら通信速度は遅くなりますが、5Gなら1Gbpsくらいのすごい数値が出る。8Kに最適なんです。

安藤

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 光回線が最上だと思っていましたが、無線のほうが高速大容量なんですね。

クロサカ

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 ただし、電波が吹いているのは、本当に短い範囲ですが、おおもとのネットワークは光ファイバーです。多重化できるし、回線を増やせばパイプが大きくなって、ネットワークを作れるのですが、このネットワークはほとんど「光ファイバーネットワーク」といってもいいものなんですね。

日本は、光ファイバーが普及しているほうなので、うまくやれば5G体験をより高いレベルで、より早い段階で提供できるのではないかと思います。逆にいえば、早く提供できるということは、早くビジネスをしかけなければならないということでもあるんですが。


●低遅延の完全な実現は次の6Gで


安藤

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 なるほど。次に「低遅延」についてはどうでしょうか?

クロサカ

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 「高速大容量」「低遅延」「多接続」というポイントは、3GPPという標準化団体で、これらの要件を満たさないと5Gと呼ばないようにしようと定めているものなのです。その中でも注目されているのがこの「低遅延」です。

高速大容量な5Gとはいえ、電気通信ネットワークである以上、必ずどこかで遅延が発生してしまいます。どうやっても、光の速さは超えられません。この遅延をいかに小さくするのかは、ネットワークにおける課題でした。

ネットワークにおける圧縮の効率性を向上させる、ネットワークをよりもシンプルかつ大規模に作るといった工夫を行った結果、5Gは無線区間の通信が1ms(ミリ秒)までのディレイを実現しようとしています。

ただし、これは、今年から日本で始まる5Gにおいて、いますぐ実現できるものではないんですよ。

安藤

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 なんと、そうなんですね。

クロサカ

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 さきほど、5Gネットワークって4Gネットワークの上に被せるところから始まるという話をさせていただきましたが、これは「ノンスタンドアローン(NSA)」という方式になります。この方式だと4Gネットワークの能力の限界を超えることはできません。

安藤

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 基地局から最後の電波は、5Gなんだけど、おおもとが4Gのままだから、その能力を超えられないということですね。

クロサカ

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 そうです。これを「スタンドアローン(SA)」方式、5Gだけで完結するネットワークができてからが、5Gの本番なんです。

KDDIは、2022年3月期中にSA方式のサービスを提供し始めるとアナウンスしています。他のキャリアも同じような時期から始まるのではないでしょうか。特に、5Gの「低遅延」は、そうなって初めて現実的なものになります。

安藤

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 なるほど。

クロサカ

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 さらに、細かい話をすれば、SA方式にするだけでは「低遅延」は実現しません。マルチアクセスエッジコンピューティング(Multi-access Edge Computing、以下:MEC)という技術が必要です。これは、“ユーザーに近いところに高い処理能力を持ったコンピュータをネットワークアーキテクチャの中に埋め込んでいこう”というものになります。

例えば、ここでゲームしているのに、なぜ遠くカリフォルニアまでデータを送らなければならないのか。物理的に近いところに高性能なコンピュータへのアクセスなら、高速処理を行うことができます。このMECが加わることで、本当の「低遅延」が実現されると考えられています。

安藤

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 クラウドが一般的になり、もうサーバーの場所を気にしなくていいという話がありましたが、スピードを求めて遅延をなくそうとすると、近所にアクセスするほうが、そりゃ速いですよね。

クロサカ

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 最も低遅延を求めているのは、ゲームユーザーだと言われています。確かに、対戦ゲームの場合、攻撃が当たっているはずなのに、ディレイ(遅延)が発生してしまうと、相手がやられていないこともありますよね。そして、その後「低遅延」の本番は、6Gの話にもなってきます。

安藤

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 5Gもまだなのに、もう6Gですか?

クロサカ

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 ゲーム以外の用途で、社会全体/産業全体で低遅延を求めているのはクルマです。コネクテッドカーや自動運転には、低遅延の実現が必要です。

例えば、前を走っているクルマが急ブレーキを踏んだとします。追従走行している後を走っているクルマが“前が止まったから、自分も止まらなきゃいけない”と判断する場合、“なぜ遠くのサーバーにアクセスしなきゃいけないんだ”ということです。

安藤

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 変な話ですよね。

クロサカ

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 そんなことをしていたら、事故が起こります。ここは、MECの出番です。クルマ業界は、“低遅延が実現しなければ、何も作れませんよ”と言い始めているんですよ。“レベル4”と呼ばれている“人が何もしなくても目的地に連れていってくれる自動運転”は、2030年台にならないと登場しません。

移動通信システムのジェネレーションは、10年単位です。2020年から5Gが始まるので、次の6Gは、2030年からになるはずです。今後、さらに要件が高まっていくなか、私たちは使い勝手が悪いとはいえ、5Gでちゃんと新しいシステムを作り上げて、6Gにつなげていかないと先がないというのは、これが理由です。

この点が、最も4Gとは異なるところですね。


●日本は5G対応iPhoneが出た時からが本番!?


安藤

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 2030年と話は、ずいぶん先のお話に進みましたが、クロサカさんの本「5Gでビジネスはどう変わるか」の出版は、昨年(2019年)なのですね。

クロサカ

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 もともと出版するのは、2020年の春くらいの予定でした。しかし、日本で5Gサービスが始まる2020年4月に何が起こるのか?を書いてある本は、その前に出してなきゃいけないと、ということで2019年の出版になりました。

アメリカと韓国では、2019年春に5Gサービスがスタートしているのですが、書籍では、ここで起こったことが日本も絶対に同じことが起こると私は書いています。それは何かというと「つながらない」ということです。

理由のひとつが、先にも触れたように、日本の5Gは、そもそも扱いが難しい周波数帯を使うということです。

これまでもそうだったのですが、ジェネレーションの最初期は、繋がりづらい状態なんですよ。私は今40代半ばで、2Gから3Gへの移行期のことも覚えているのですが、あの頃も繋がりづらかった。「かっこいい」と、新しい端末に飛びついたのですが、これが使いものにならない……。お金がある人には、先祖返りをして2Gに戻る人もいました。このような動きが、今回も起こります。

これは、しかたがないことです。

また、5Gの基地局を簡単に展開できないということもあります。これまで、日本では、4つのキャリアが自腹で基地局を展開してきました。しかし5Gの場合、費用的にもキャリアだけに任せておくのは難しい。建物ではなく、各フロアや部屋ごとに、基地局を作らなきゃいけない状態になってくる。山ほどビルがあるし、それぞれにいくつものフロアがあるわけですから。

安藤

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 5G対応のスマホを買ったけど、一瞬しか5Gと表示されないなんて状態になるんですね。

クロサカ

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 アメリカでも韓国でも、サービス開始直後は、それですごいブーイングが起きました。春先(2019年)に韓国に行った時はPokemon GO状態でした。

安藤

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 5Gって出たぞ、とみんな集まっちゃう(笑)。

クロサカ

企_クロサカ_正面150

 みんなウロウロする。やっていることは同じなので、私みたいなおじさんが集まってくる(笑)。それが幻滅期です。

日本は、iPhoneのシェアが非常に高い。iPhoneが5Gに対応した時から、ある意味始まるわけですが、それがおそらく2020年の秋ですよね。端末は、結構な価格になると思われます。

しかし「みんな電波がつながらないと言っているのに、5G対応の高価なiPhoneの購入をどうしよう」という状況が、今年の秋から2021年の春くらいまで続くんだろうな、と思います。

私は、その時に「必要なので、未来のために私がやります」という人が出てくるのではないか、と考えています。この幻滅期をうまく乗り越えることができれば、この間に、ちゃんとインフラやサービスを作った人達が一気に花咲くと考えています。

SAネットワークが本格化する2023年以降には、「4Gってあったよね」という世界が、少しずつやってくるんだろうなと思います。

vol.1「トレンドはすでに5Gの「次」へ」はこちら
vol.3「過去の失敗も、5Gの時代なら成功するかもしれない」はこちら


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