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プラスになる人脈。ロスが多い人脈。賢い人は「つきあい上手」―『論語』

語り合うに足りない人物と語り合うのは、言葉の浪費

「タイムパフォーマンス」重視。
会議や打ち合わせを効率的にやろう。こうして、タイムパフォーマンスを追求することが、日本の長年の課題であったサービスや知的作業の生産性を向上させるのでしょうか。

 それならいいのですが、「タイムパフォーマンス」を言い訳に、割に合わない仕事や効率の悪い仕事は引き受けたくない。一見、個人の仕事の効率は上がったようにみえるけれど、自分の「タイムパフォーマンス」だけを追求する「タイムパフォーマー」集団になってしまったら、やりたがながらない仕事は、誰が引き受けるのでしょうか。急な用事や病気で休む人の仕事を、だれが引き受けるのでしょうか。

 さほど大きくない外資系の日本支社に勤めている人から、それによってどういう状況になるのかを、聞かせてもらったことがありました。
 ジョブディスクリプションに書かれていないことは、それは自分の仕事ではないからと、いっさいやらない。目の前に落ちているゴミを拾うことも、不在の人宛に届いた配送品を受け取ることもしない。 

 一人ひとりのタスク処理の効率は高いのかもしれないけれど、チーム全体でみたときに、そのやり方で生産性が上がっているのか、見極めてみたい。

 あるタスクを1時間で処理するよりは、50分で済ませるほうが「タイムパフォーマンス」がいい。ルーティンワークでは、それを追及していく。
 しかし、目の前にある課題すべてが、やり方や結論がわかっているものばかりではありません。

「タイムパフォーマンス」を追求するものと、時間や効率では測れないものと、それぞれのモノサシを用意して、対処していくのも一つの知恵かもしれません。
 
 ここまでしてきた話とは趣旨がちょっと違うかもしれませんが、いまから遡ること2500年以上も前に、人づきあいにおけるロスや無駄について、孔子が語っています。それをみてみましょう。

 語り合うに足る人物と出会いながら語り合わないのは、友を失うことである。
  語り合うに足りない人物と語り合うのは、言葉の浪費である。
  友を失うこともしないし、言葉の浪費もしない。そういうつきあい方をするのが理想である。
  
*守屋洋著『論語の人間学』に準じて、一部意訳をしています。

友を失うこともしないし、言葉の浪費もしない

  語り合うに足る人物とは。
  語り合うに足りない人物とは。
 孔子は、具体的にどんな人物とはいっていないので、現代に置き換えて、考えてみたいと思います。

 語り合うに足る人物は、知識、見識が豊富な人、仕事や人生において多くのヒントを与えてくれる人、立場をこえて理解を示してくれる人……。

 一方、語り合うに足りない人物とは、属する会社や自分の利益を優先した交渉をしてくる人、自己中心的で他の価値観を認めようとしない人、過去の成功体験や自慢話に終始し、未来に向けた話が出てこない人……。

 日常において、仕事やコミュニティーでの人づきあいは、相手を選べないことがほとんどです。そういう状況のなかで、表面的なやりとりに終始するのか、仕事を超えた関係性をつくって、その人からより多くのものを吸収しようとするのか。互いに目の前のことで忙しいなかで、どう関係性をつくっていくのか。

 一方で、SNS上のネットワークなど、自分から求めていけば、人とつながる機会をつくりやすいインフラが整っています。コロナ感染が沈静化し、対面で交流することも支障がなくなりました。

「友を失うこともしないし、言葉の浪費もしない」。
 置かれている状況、与えられた条件をもとに、孔子が掲げる理想の関係性を目指したいですね。

最後に読み下し文を。

与(とも)に言うべくして、これと言わざれば、人を失う。
与に言うべからずして、これと言えば、言を失う。
知者は人を失わず、また言を失わず。 

『論語』衛霊公篇


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